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コサック

2012年 光文社 著者 トルストイ 訳者 乗松亨平(ノリマツキョウヘイ)

副題<1852年のコーカサス物語> 初出 1863年

国語教科書にあった肖像画からトルストイは「長いひげのお説教好きな老人」と感じ、ともすると敬遠しがちだった。しかし彼にも傷つきやすい子供時代や恋に悩む青年時代があったことを知り、「コサック」は「幼年時代」に次いで二番目に好きな作品になりそうだ。

トルストイが士官補の24歳の時、長兄についてコーカサス地方に行き、数年間滞在した折の体験を小説化している。何よりもこちらをぐいぐい引き込む文のうまさが魅力的だ。とりわけショーロホフの「静かなるドン」を難渋しながら読んだ後では。ツルゲーネフもそうだが、貴族として生まれ育った特権が、結果としてこの巧みさをもたらしたと思えば皮肉ではある。

コサックとは何か?ということが、当時の常識や偏見をも含めて、わかりやすく表現されている。その中で、コサックの女性が、一見男性に家庭に閉じ込められて酷使されているようでいて、意外にも実力をつけていることが、わが日本の伝統的男女の力関係と共通していて、興味深かった。

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