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朝倉喬司氏のこと

朝倉喬司氏は12月9日に亡くなったノンフィクション作家で享年67(1943~2010)

これまで2回の接触しかないけれど強烈な印象がある。最初は1988年映画「ハーヴェイミルク」のパンフレットで、文章も鮮やかな切り口だったが「犯罪ライター」という肩書きとペンネームが記憶に残った。2度目は2005年、茨木市の図書館から借りた「自殺の思想」と言う本だ。そして松岡正剛氏のブログ「千夜千冊」で、さっき見たのが3度目。早稲田での仲間だったが、卒業後一度も会っていなかったらしい。国定忠治、ロビンフッドなどに共鳴していたようだ。

家族もあったが、独りきりの死は彼の日頃の思想に相応しいのではないだろうか。死後何日か気付かれなかったが、それが本人にとってどうだというのだ。発見する側にとっては処理がちと面倒だという問題ではあろうが。

犯罪ライターとして同性愛の映画パンフに名を連ね、自殺の思想を説いた同世代の人が、70歳を待たずに逝ってしまったことに、私の青春が過ぎ去ったような感じがした。写真を見ると、自分もこれと同じような年齢なのだなあと思う。

後日、改めて彼の著書を探してみた。
「老人の美しい死について」(2009年作品社)は老人の自死を扱ったもの。「誰が私を殺したの」(2001年恒文社)は東電OLなど、エリート女性の殺人事件。「バナちゃんの唄」(1983年センチュリープレス)はバナナの叩き売りの取材。この最後の本の袖に、若かりしころの彼の長髪の写真と紹介文があった。

ーーーーーー溶け込む、この言葉がサイコーに似合う人だ。酒でも、歌でも、ヒトにでも、周りのすべてのジャンルに、その華奢な体が透明感でとける。長年、週刊誌記者として、事件と犯罪者を追い求めて、闇から闇へと駆け回る中で、人を安心させる不思議な術(魅力)を身につけたのだろう。いつか「自らが光ることはできないが、おのれを鏡に他人を輝かせることはできるよ」といったことがある。ちょうど夜半の子犬の背から群雲までを照らし出す月光のように。光には青白く冴えた、ひときわに、やさしい愛しさがあるーーーー

書いた人の思い入れが強い紹介だが、40歳前の彼の持っていた魅力をしのばせる。
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