2019年5月16日、NHKスペシャルで 寝たきりからの復活~密着!驚異の「再生医療」~ が放送されました。NHKスペシャルは私が見るテレビ番組の中で
最も大切なものです。その時の社会の問題点や話題を深く掘り下げて報道してくれます。民間放送よりも切り込んだ内容はいつも痛快に思っています。
さて、この日の放送も、今年5月から脊髄損傷の再生医療が条件付きで健康保険適用になるというタイムリーなものでした。
再生医療と言えば、ips細胞による再生医療を思いますが、もう一つ、幹細胞による再生医療に効果があることを知りました。札幌医科大学本望修教授は1989年札幌医科大学医学部を卒業して脳神経外科医となり、米ニューヨーク大学、イエール大学と神経再生の研究に従事し帰国している。昔、神経細胞が再生するなんて言ったら、お前はバカか?と言われるような時代からこの方の地道な長い研究が続き、今回の成果につながっています。
我々は簡単に言ってもらわないと分からないので、簡単に考えると、患者自身の骨髄液を数十ミリ㍑採取して、その中から間葉系幹細胞(MSC)を取り出し、1万倍に培養する。この細胞製剤を40cc静脈点滴するだけ。
番組では、実際の患者二人を追跡。点滴してからの回復の様子をずっと映像で追っている。説得力のある映像です。ずっと患者を取材することは大変だっただろうと想像されます。
幹細胞って何?
死んでしまった細胞を補うために、新たな細胞を作る「自己複製能」を持っている。もう一つは、様々な細胞に分化する能力「多分化能」を持つ特殊な細胞。
たとえば、 皮膚の幹細胞は皮膚幹細胞を複製し常に新しい幹細胞を作るし、さらにメラニンという皮膚色素をつくる分化した皮膚細胞をつくることもできる。
つまり、皮膚の幹細胞は、皮膚を形作り維持しその役割を果たすための分化した細胞をも自ら作り出すことができるということですね。 だから皮膚の幹となる細胞で幹細胞と呼ばれる。
多様な細胞に分化する能力をもった体性幹細胞には、 (骨髄)造血幹細胞、神経幹細胞、筋肉幹細胞、肝臓幹細胞がある。
受精卵が数回分裂した段階で得られる胚性幹細胞(ES細胞=embryonic stem cells)では、すべての臓器の細胞が作られる。これが発見されてから、多くの疾病が再生医療で治せる可能性が大きく広がっています。そう!ips細胞へとつながっていくのです。
間葉系幹細胞とは何?
骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞など、間葉系に属する細胞への分化能をもつとされる細胞で、骨や血管、心筋、さらに、胚葉の差をこえて神経細胞や肝細胞にも分化し、その再構築などの再生医療への応用が期待されています。
さらなる期待が・・・
この治療は人間が本来持っている自然治癒力を生かした医療だということに特徴があります。脊髄損傷の今回の回復状況から体の中で何が起こっていたのか?
1段階・・・弱った神経細胞が活性化している。
2段階・・・壊れた神経細胞が修復されている。
3段階・・・新しい神経細胞へ変身している。
脊髄損傷だけでなく、脳梗塞、脳損傷はもちろん、ALS(筋萎縮性側索硬化症)等の神経難病、さらにアルツハイマー病などに可能性が大きく広がっています。