報道番組の視聴中、天気予報のコーナーを担当する小野裕子気象予報士の発言に新鮮な印象を受けた。
「水がかちこちに凍っていました」という言い方に個人の言語感覚の違いをハッキリと確かめることのできた瞬間だった。
一般的な言い方である「かちかちに凍る」と言われた場合と比べてみれば、その新鮮さは納得できると思われる。なにが新鮮か、「かちこち」といえば凍った氷の状態は薄氷ではなく、厚氷である印象がより際立つことになる。
ちなみに国語辞書の見出し語には「かちこち」は収録されておらず、小野裕子気象予報士の個人語彙であることはあきらか。
個人的な語彙は日常生活の中で極めて自然に習得されていく。「極めて自然に」とは言語的抵抗感がなく身についていく、ということであり、たとえば宮沢賢治のオノマトペ由来の多様な副詞の使い方はその典型と言える。
ある状態を印象鮮明に言い表すことの困難を思えば、特異な語彙使用は創意や工夫の結果でなく、個人の言語感覚の獲得の過程で身につくものと捉えるべきだろう。その個人的な語彙感覚の特異さが新鮮な印象を人びとに与えることになる。
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