のり巻き のりのり

飾り巻き寿司や料理、己書、読書など日々のあれこれを書いています



錦木

2019年10月08日 | うちご飯外ご飯
大根の抜き菜、栄養たっぷりだと知りました。
この抜き菜を使って「錦木(にしきぎ)」という優美な名がついている料理があることを知りました。

さっそく作ってみました。

抜き菜はさっとゆでて、細かく刻んでおきます。
他には、名残りの青じそと実、名残の茗荷、どちらも庭にありますがもうおしまいです。
 


どれもみじん切りにしたら、カツオ節、刻みのり、わさび、しょうゆ、大根おろしを加えて混ぜます。
今回は大根おろしはまだ入っていません。乾燥ゆずも入れました。





全部家にあるものだし、切って混ぜるだけです。
この「錦木」は、ちゃんと魯山人の書に出てくる風雅な一品なんですよ。

以下抜粋を読んでみましょう。



「夏日小味」より  北大路魯山人

 
 錦木にしきぎ――京の木屋あたりで流連りゅうれんでもしたご経験のある方なら、先刻ご存じのもの。
  宵の遊び疲れで、夜の明けたのも知らず、昼近くなって、やっと重い頭を持ち上げ、

  蒲団着て寝たる姿や東山

 目前に加茂川の清い流れのせせらぎを耳にしつつ、どうやら眼の覚めて、用意の控えの座敷に直ったとき、にこにこ、ぞろぞろ這入ってきた紅裙こ うくんさんたちの年頭としがしらが言う、

 「お早うさん……」  の次は、直ちに、
今朝、なんでまま(御飯)おあがりやす。今日は、あっさりと、錦木でままおあがりやすな」とくる。

  この錦木でまま食べて、はじめて、ために心気爽然となるちょう代物なのである。
 上等のかつおぶしを、せいぜい薄く削り、わさびのよいのをネトネトになるよう細かく密におろし、思いのほか、たくさんに添えて出す。

  で、これが食い方は、両方適宜に自分の皿に取り、ざんぐりと箸の先で混ぜて醤油を適量にかけ、それを炊きたての御飯の上に載せて、口に放り込  めばよいのである。

  同時にアッと口も鼻も手で押えて、しばし口もきけないようなのが錦木の美味さである。
  この場合、浅草のりなぞを混ぜてもよいが、むしろそれは野暮であろう。

  最高の錦木とは、上等のかつおぶしの中心である赤身ばかりを薄く削ること、太いよいわさびを細かいおろし金で密におろすこと。
御飯をこわくなく、やわらかくなく、上手に炊くこと。そして炊きたてであること。

食器は平らな皿に入れないで、やや深目の向付に盛ることである。
 錦木と称するのは、削ったかつおぶしの片々を、木の錦木のへらへらになぞらえたものにほかならないと思う。





どうやらわさびの効いた鰹節たっぷりのお菜のようです。
それをあつあつのご飯にのせて食べたみたいです。

器にもこだわった魯山人らしい一品です。
私もご飯にかけて食べましたよ。まだあるのでおにぎりにします。