金曜日の冒険

いや、なに、冒険といっても、大したことないのだけれど。


ここのところ、ちょっと残業続きだったが、３連休前の金曜日の今日、早く上がれて、
狙いどおり、通勤定期の途中駅で下車して駅ビルのショップ巡り。

たまには、息抜きしないとね。
通勤定期は年末までの今だけ、混雑の少ないルートに変更している。
まもなく通常のルートに変更する予定なのだ。今までバスでしか行ったことのない駅に、定期を使って途中下車して立ち寄る。
ちょっとした冒険、なのだ。

駅から直結のそのビル、地下から入ってすぐに広がる、お弁当やお惣菜の売り場に圧倒され、垂涎、またお腹が鳴りそうになる。
とにかく隅々まで見たいとフロアごと回って行くつもりであったが、奥のスーパーらしき店舗の向かい側に存在する、
小さなタイ焼き屋さんに惹かれた。もうその売り場のカウンターでほんのりイチゴの香りがするのだ。
普通のあんこ入りのタイ焼きも、もちろんあるのだが、178円でイチゴのタイ焼きがある。

目が釘付け、とはこのことだ。
逃げるようにその場を離れ、私はバッグを見に来たのだ、服を見に来たのだと自分に言い聞かせる。
５階がレストラン街、その下の４階までぎっしりショップ。ぐるぐるとセーターだのコートだの、バッグ、靴、あれこれ見て回る。
下の階から順にフロア探索して、このビルのターゲットは、結構ハイクラスな年齢層ではないかと感じ取った。
バッグは、合皮のもので色遣いがちょっと目を惹くものがあったが、4000円台と、とっても安い値段に「ここで買うべきか？」と
心が動くけれども、要所の金具のメッキがキンピカ過ぎて、なんだか１か月しないうちにぼろぼろになってしまうのではと不安がよぎってしまう。まぁ、１年もてばよしと割り切っての購入もありかもしれない。ひとまず、再考。

あれこれ、ああ、この色と質感は仕事着にもいいかも、なんて、見れば考える。
こういうことも脳の活性化につながるものかもしれない。
つまり、とても目まぐるしく、あれこれ見たので、結構疲れたのだ。屋上のグリーンテラスなるところにクリスマスツリーを飾ってライトアップしたというので最後にそれも見に行ったのだが、お腹も空いて、ふらつくまでになった。

そして帰宅しようと、来た道のとおり地下へ下りると、そこに見えるのがあのタイ焼屋である、
あのイチゴタイ焼きである。

目はぐるぐる回ってる、お腹はぐぅっと鳴っている、
買う、べきでは？　今１個食べる？
しかし夫からは「今日焼きイモ買っちゃった」と連絡が来ている。焼き芋、美味しいんだよねぇ。

でも私は今お腹が空いている、一個だけ買おうか？？

いや、買うなら…
私はとても愛想のいい若い女性の店員、奇しくも、私と同じ苗字のネームプレートを付けた彼女に言ったのだった。。

「いちごのタイ焼き、」

彼女はとてもいい感じの笑顔で私を受けた。
私ったら、何を思ったか、
「４個お願いします」

って、言っちゃったよ～
買っちゃったよ～　　普通、あんこのやつとか、クリームのやつとか、種類違いで買わねぇの？

迷ったけれど、勢いそのまま４個一つの包みにしてもらった。

駅のホームで乱暴に包みを開け、一つを取り出し、頬張った。
向かい側のホームに停車中の電車の中から見えるだろうなぁと思いながら、
鳴る腹には逆らえずかぶりつく。

旨い。
これ以上なく、旨いじゃないか。結構、厚みがあってもったりとしているのだが、私はいつになくペロリとたいらげた。

腹が満たされ、冷静になると、腹が減ってるから何を食べても旨いと思うのじゃないか？

帰宅して、夫に「買っちゃったんだ～」と差し出す。「普通のあんこじゃないのよ。」
「もう、お腹すきすぎて、思わず、珍しいイチゴのやつをなんでか、４個買っちゃった、しかも一個食べた。後悔した…」と先に言い訳。
夕食後、夫が包みから取り出してみて、「おぉ～、（イチゴクリームが）はみ出てるねぇ」なんて相好を崩す。
食べてみて、「美味しいよ？、あいつ（息子のこと）なんか、ペロッと食べちゃうよ」なんてフォローしてくれる。

姑 とこ のことに触れ、こんな、些細なことだけれど、あれこれお店巡りをして、「（あの商品は）あれに使えそうね」なんて
見るだけでも、いろいろと考えをめぐらすものだから、ウインドショッピングを楽しむということは、大事なことなんだろうね、と
夫と話し合う。付き添ってあげれば、良かっただろうねぇ、と。
でも、歩くことに難儀していて、食事もそんなに量が食べられないとなると、出かけても食べられないのにお金を払うことになり、
それも外出を控える理由になってしまうのだろうと想像する。
お友達と外出しても、同行されたお友達は普通に完食できる定食なども、自分は食べきることもできず、注文するにも困る、なんて、
食べられないことで「食べられないのにお金ばかり払う」などと余計にお金のことを考えてしまって、
とりわけ食事のシーンで困ってしまうのだろうな。

すまないなぁ、と思う。

冒険は、私を刺激する。
冒険は、私にイチゴタイ焼を買わせる。うん。