とこのへや

とこの雑貨と、とこのお洒落着。とこは樺太に住んでいたことがあります。とこの嫁の体験談、日記、備忘など。

タクシーと人生の分岐点

2019-09-08 21:18:31 | 日記
駅の近くにいるとしたら、あなたはタクシーを利用するとき、
まずどうするだろうか。
駅と言っても様々だ。無人駅から池袋や新宿のようなスーパーメガな複合施設と化
した駅。無人駅ならタクシー乗り場が存在しても、タクシーは待っていないかもしれ
ない。
しかし、中堅程度の大きさの駅なら、駅の入り口前にロータリーがあり、
バスやタクシーの乗り場があるはずだ。
私の勤務先は学生が多くて有名な駅だ。
早稲田大学の受験の際はめちゃ混みになる高田馬場。
大きさは中堅だけれども利用人数は山手線内でも多いほうだろうというのは容易に想像でき、ロータリーは駅の大きさに比べ広い。足の悪い人にはただ遠いだけなのだろうけど。
駅前のロータリーの一角、私が気に入っているパン屋さんがあり、
お昼をずらして取った休憩時間に、そこのパンを買いたくて横断歩道を渡ろうとしたとき、誰かに呼びかけるおばあさんの声を聴いた。

そのおばあさん、腰かけられるカートを押して、こちらへ向かってやってくる。
顔は私のいる方向とは少しずれているのがすぐわかった。
私やおばあさんが渡ろうとしている横断歩道は、駅に向かっている大通りで、
片側二車線。タクシーは駅の方へ向かっており、私から見て左側。
右折待ちをしているので、中央分離帯側の車線先頭へ止っていた。
おばあさんはそのタクシーへ乗せてくれと歩道から呼びかけて、
ずんずんとそちらへ向かっていた。

最初、横断歩道を渡って行こうとしている私は、
自分が行こうとしている方向から「ちょっと!ちょっと!」と
大声を張り上げているおばあさんは、一体誰に向かって手を伸ばしているのか
と思ったのだ。
あ、あの右折しようとしてるタクシーか。
…いやいや、おばあさん、良く見て、あのタクシー、もう人乗せてるし。
そこから大声で呼びかけても聞こえないし。

おばあさんはカートにすがるような腰の角度で懸命にカートのバーを押して
車道の半分くらいまで出てきていた。
すると、私より数メートル後ろにいた親切な女性が
「もうそのタクシーは乗せてくれませんよ」という内容を伝えた。

私はほっとして、その先のパン屋へ向かうことができた。
後ろでかすかに「なんで乗せてくれないのか」と聞き返すおばあさんの声を聴きながら。女性は「だってもう他の人が乗っていますよ…」と説明をしているようだった。

たぶん、駅の近くならすぐ先のロータリーにタクシー乗り場があることを分かってい
るはず、認知力が低下していなければ。
パン屋さんで買い物を済ませた後、再び横断歩道を戻ったが、その時にはおばあさんも女性も見当たらなかった。

おばあさんはカートを押してまたタクシーを探しに行ったのだろうか。
特に不潔な服装でも、白昼寝間着を着て外にいるというような違和感もなかったし、達者に話しているようすでもあったので、そんなに重篤ではなかろうと想像する。
自分がどこを歩いているか分からないから、タクシーに乗れば自宅に帰れると
思ったのか、とても疲れてしまって刹那的にみかけたタクシーに
乗せて欲しいと思ったのか。

どちらにせよ、一人で外出してはいけない状態になってきたところだと思う。

そういう判断をせざるを得ないタイミングが、いつか何か症状として現れる。

その時に、これがそうなんだな、と気が付くかどうか。

自分がおばあさんの立場だったら、息子にそう言えるだろうか。
もう私、一人で外出したらまずいと思うのよ、って。

姑 とこ の時には、うすうす、そうかなと思ったのに、カバーしきれなかった。
いまさらだけれども。
もっと、おかあさんが穏やかにいられるようにやれることがあったのにな。
近々、このパン屋さんのパンを買って、またお見舞いに行こうと思う。

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