とこのへや

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草いきれ道中 番外編。ウトウという鳥

2024-09-30 19:56:48 | 旅行
2024年7月。北海道の羽幌町天売島。

ウトウという海鳥の観察ツアーがあるということで、
羽幌から高速船で約40分ほど、天売島(てうりとう)へ行った。

天売島は、世界でも珍しい海鳥8種100万羽の繁殖地だそうな。

海鳥というと、波間に浮かんで時折潜って魚を捕る、
海に浮かんでいる鳥、というイメージがあった。
海鳥の繁殖といえば、ウミネコの繁殖地を訪れたことがあり、
けたたましく、厚かましく、大きな群れで暮らすため
カラスよりも性質(たち)が悪いのでは?と。


ウトウツアーは、天売島ネイチャーライブ社が企画・運営している。
宿泊の宿の前まで車でお迎えに来てくれ、
添乗スタッフが概要をレクチャーしてくれる。

ツアー参加に先立って、特段予備知識なく、現地へ行ってから、
ウトウの子育ての時期が間もなく終わりそうだ、と聞き及び、
雨でも絶対参加しないと!と意気込んだ。

小雨だったが、日が落ちるころ、歩いても行ける距離ながら、
巣穴の広がる崖上赤岩展望台付近へとツアーの車で向かう。
(巣が存在する地域が近づくと車はかなりスピードを落とした。)

夏は大虎杖(おおいたどり)という背丈ほどもある一年草が
天売島のほとんどを覆う。

大虎杖(おおいたどり)の生い茂った中を
アスファルトの道路が伸びており、白いライトハウスが
ぼんやりと前方に見える。
海から帰ってくるウトウは、
大虎杖(おおいたどり)の中にダイブして巣に戻る。

ツアーで訪れた赤岩展望台付近の空は
「帰巣(きそう)」するウトウでいっぱい。
(6月のほうがもっとすごいと聞いた)
高く飛んでいる分にはさほど分からないが、
低く飛んでくるものは「バタバタッ」と羽音が聞こえる。
頭上を飛び交っているウトウのシルエットは、
胴がややずんぐりとして、羽は小さめ。

説明を受けたツアー客は、
大虎杖(おおいたどり)の根本のあたりに目を凝らし、
アスファルトの道路のすぐ脇にも、そこかしこに
地面に穴が開いているので、もしかしたら雛が出てくるかも、と見ている。

数人、濡れた路上に「あ、雛ですね、、車ですかねぇ」と
何かを囲んでいるスタッフとツアー客。

雛?と近寄ってみると、
まん丸いグレーのふわふわの羽毛に覆われた小さな体。
全く動かないが、ウトウの雛だ。
雛はそろそろ巣立ちの時を迎えていて、
海を目指す途中、ここで車などに轢かれたようだ、とのこと。
「夕方以降は車の立ち入りは控えてくださいと
 アナウンスしてるんですがねぇ」
雛は巣穴を離れるが、親鳥はしばらく帰巣を続けるそう。

(ここから10/3追記)
帰巣した親鳥がまた海へ帰ると、雛は1羽のみで巣穴で過ごす。
ツアー客の女性たちから、可哀そうというニュアンスのため息。
大きくなった雛は6月後半から7月のある日に
海を目指して巣穴を出るとのこと。
見かけた雛の死骸は、大人の両手の中にすっぽりと
納まるほどの大きさだった。
海まで行こうとしてここで車に轢かれてしまったとしても、、
ちょっと幼すぎる印象だ。
このふわふわの羽毛は夏でも冷たい海水に耐えられるのか?
しばらくして、死骸と同じあたり、
生きている雛が大虎杖(おおいたどり)の藪から
出てきて道路を渡ろうとした。
ツアースタッフと客の数名が、声をあげたその足元に
グレーのふわふわが、実に不器用な足取りで
じぐざぐに走ってUターンして藪に戻った。
必死に生きる雛の様子を垣間見た。
全ての脅威・リスクを排除する生き方、
伝えられたわけでもなかろうに、雛の覚悟が見えた。
絶対に生きるんだ、と。
※ネット上でウトウの雛が1羽だけで海面に浮かぶ動画を見た。
 大きさもふわふわの羽毛も必死に藪に走り戻った雛と同じくらい。
  :天売島周辺の海鳥撮影ツアーの動画
(追記ここまで)

スタッフの説明ではウトウは臆病な鳥だという。

巣穴は水が入り込まないように一旦深くなった後に
少し上へと上がった先に雛が居る巣があるとのこと。
入口から1メートルくらいは掘ってあるのだそうだ。
巣穴が大虎杖(おおいたどり)にすっかりと覆われ、
他の海鳥たちにはわかりにくいことを利用していると。
(ケイマフリ・ウミガラスなどほかの海鳥は断崖絶壁で営巣している)

鳥のなかでは飛ぶのが下手なほうらしい。
おそらく海中ではほかの鳥より上手く魚を捕るのだろう。
ウトウにとっては体の大きな、雑食性で気性の荒い
オオセグロカモメやウミネコは脅威。

おそらく、海の中では彼らはハンターとなり機敏に動き回るのだろう。
しかし海を離れると、滑空しにくい翼で、
バタバタと羽ばたきの回数が多く、空中戦は苦手そうだ。
他の鳥が居ない時間帯に活動している、と言っていい。
巣に居る雛に餌を食べさせて、夜中3時くらいには
また巣穴を出発し、海へ戻るという。
(雛は1つの巣に1匹だけ)
飛ぶことは苦手だが、夜目が利く分、活動時間をずらして
リスクを減らしているということだ。

後で検索してみて思ったが、
ウトウに関する情報や画像・動画はほとんどない。

宿に飾ってあった写真も、2枚だけだった。
餌を嘴いっぱいに咥えた親鳥。
黒い羽根に覆われていて、繁殖期中は、
オレンジのくちばしの上に白い突起(アイヌ語でウトウという)が
出るという。

子育ての時期に、この天売島へやってくるとのことだが、
一つの巣を生涯使い続けること、
番(つがい)も生涯同じということ。
(死別すれば新たなペアになるのかもしれないが)
かしこさ、律儀さを感じる。

悪意はなかっただろうけれども、
おそらく人の「しわざ」で、雛が死んでいる、というのが
なんとも、申し訳ない。

まだ遠くまで飛べないのだろうが、
大セグロカモメやウミネコの雛たちが、ほぼ親鳥と同じ体格で
羽ばたいているのを見ると、ちょっと小憎らしいとさえ思うのにね。

少し余裕ができたら、また行ってみたいかも。



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