わたしたちは銀のフォークと薬を手にして /  島本理生

2018年10月03日 | さ行の作家


読んでいる途中、本を閉じて別なことをすると、主人公の知世さんと椎名さんが気になって気になって。
こんなに気になる物語って珍しいと思いました。
幸せになってほしい二人だな、と思いながら読んで行きました。

ふたりが良いことにも悪いことにも寄り添って生活を共にしていく、そういう終わり方で良かったです。

島本理生さんの物語は、ここ数年、手にすることはあっても読み切ることがなかなかできなかったので、最後まで読めてよかったです。

重いテーマなのに重くならず、みんなどこかに光を見いだせて安定感のある物語でした。


表紙は、押し花の花びらで作られた唇です。

食べることも、語ることも、くちびる。
攻撃も、告白も、謝罪も、防御も、癒しも、言ってみればくちびるです。
それから、男女の関係でもくちびるは大事な器官。

石垣島でのことを椎名さんは、もっと彼女の話を聞くべきだったと語りますが、くちびるも相手がいるからこそのくちびるなんですね。

フォークも薬もくちびるへ。

どれだけ寄り添えるか…くちびるの力が試されているのかも。



本文より

たくさんのよけいなことを考えて、いくつもの現実をこなさなければならない。私たちは、そういう生き物だ。

健康だから。
病気じゃないから。
それだけで人は人の体をびっくりするほど粗雑に扱う。





コメント