八咫烏シリーズ第2部 第4巻
成長した新たな金烏、凪彦の妃を選ぶ「登殿の儀」を舞台に物語は進みます。
この八咫烏シリーズの第一作「烏に単衣は似合わない」の舞台も「登殿の儀」。
本来なら「登殿の儀」は日嗣の皇子の妃選び。ですが凪彦はすでに即位して「金烏」になっています。凪彦は日嗣の皇子の経験もなく金烏になってしまったのですね。
それから「烏に単衣は似合わない」との違いは、東西南北の四家の姫たちの他にもう一人の美しい女性(女性でありながら女性を返上して男として生きる=楽女)が登場すること。
この美しい楽女が本作の主人公です。
肝心の妃の方はすでに決まっていて、どうやら凪彦本人もそのレールに乗ることに異議はないようです。
お妃選びにワクワクしていた私はちょっと肩透かしを食らいました。
もうちょっと誰になるのかな?ってドキドキしたかったかも?
それとも後に波乱があったりして?
それにしても、楽女をはじめとして女性たちの自由さには驚かされます。
権力や地位に弱い男性にはない軽やかな思考の自由。
「家」や「権力」の道具にされながらひらりとかわす…。
百官の長、黄烏となった博陸侯雪斎(雪哉)はまだ気づいてはいないようですが、ほころびていく山内を変えていく、平和に導いていくのは女性たちの思考力、地頭力なのかも。
否、男女が力を合わせた時、男女関係なく地位も関係なく同志が結集した時、山内を守れるのかも。
次の物語は山内を守る鍵、外界のようです。
<本文より>
*「政をおこなう者が、理不尽を知って知らぬふりをする。その怠慢こそが、政をおこなう者のーーー貴族の罪なのではありませんか?」
*「私も、家の道具として一生を終えるのはまっぴらごめんでございますしーーーそのように、他の者達を扱いたくもございません」
「だから、出来る範囲で、それを強いて来るもの達に抗ってやろうと思ったのです」