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先祖を探して

Vol.356 永良部ユリ

美しいユリの花が玄関先で満開になりました。先週5月29日の雨上がりの朝から待ちに待った最初の蕾が開花し、一週間の間に次々と開花。現在はほぼ満開になり、素敵な香りと共に玄関先を美しく華やかにしてくれています。





この美しいユリ、実は沖永良部島のユリなんです。昨年の秋に島の知り合いの方が球根を分けてくださり、地植えしてみました。
お正月明けから芽が出てきて、グングン大きくなってきました。
4月頃から蕾がでてきて、4月後半から蕾も大きくなってきたので、まだかまだかと待ち続けました。ご近所の方も開花を楽しみにされていたので、今は満開のユリを一緒に楽しまれています。

沖永良部島には山野にユリが自生しており、このユリを栽培するようになった歴史があるんですよ。
私が島に行った3月後半には、一足早くユリが咲き始めており、道端などにも確かに咲いておりました。


ユリの歴史
日本のユリが初めて海外の目に触れるようになったのは、正徳年間(1711-1715)だったそうです。それは学者によってユリの花が欧米に紹介されたのが始まりだそうです。
それから明治22年(1889)頃までは、居留外国人によってユリ根が貿易商品として輸出され、明治23年頃からは日本人の手によって輸出が始まったそうです。輸出額も増大していったそうですが、大正初期からは外国人経営の貿易商社が減少し、かわって日本人貿易業者が盛大に貿易を行ったようです。

欧米諸国のキリスト教徒にとっては、12月のクリスマスや4月のイースター(復活祭)にユリは欠かせない花で、白ユリを飾るといいます。また今では四季を通じて一般的に愛用されています。このように昔から欧米諸国ではニーズの高かった白ユリなのですが、永良部のユリの歩みは以下のようになります。

明治30年(1897)
奄美大島の名瀬村でユリの取引が始まる。
山野に自生していたユリを日本の数社とポーマ商会などが名瀬村の池畑回漕店に依頼して、山野に自生しているユリを採取させて買入する。その後、高価で売られるようになった。

明治32~33年(1899-1900)
鹿児島生まれの商売人であった市来崎艦兵衛氏が、晩年に沖永良部島に移住して雑貨店を始めた。そこで名瀬村で自生しているユリが高価で売られているのを聞いて、自分で栽培開始。
商店に奉公していた人や、その人から話を聞いた別の人たちが畑で栽培するようになり、和・喜美留・玉城地区で盛んになり、その後に全島に波及したようです。

明治35年(1902)
横浜の百番館の英国人であるアイザック・バンテング氏が仕入れ主任の伊沢九三吉氏と一緒に沖永良部島に来島し、伊地崎官兵衛氏にユリを買い集めさせ35年から取引を開始し。これが沖永良部島のユリ取引の始まりであった。

大里宮元氏が、ユリ根を始めてお金にかえたのだといいます。芋堀ざる一杯で四十銭。当時は卵が一個五浬厘もしない時代だったので、四十銭はかなりの大金であったようです。この話はすぐに島内に広がり、山野の自生ユリの採集が盛んになったようです。それくらいに自生ユリがたくさん咲いていたということですね。

明治37年(1904)
アイザック・バンテング氏が伊沢氏を同伴して再度来島し、市来崎氏にユリの収集・出荷と荷造りの指導をしたそうです。バンテング氏は熱心なユリの研究家で、輸送中に腐敗や荷痛みがないように荷造りや輸送方法については非常に工夫を凝らしていたそうです。その後も取引に度々島に来られたとのこと。

和泊町誌歴史編から得られたユリの歴史を簡単にまとめてみました。
明治期にシーボルトによって欧米にもたらされたユリの殆どは、この沖永良部のユリだったそうです。
その後も様々な経緯を経て、現在の永良部ユリの栽培や出荷が続いています。
明治時代に自生していたユリの花。世之主が生きた1400年代にはどうだったのでしょうね。既にユリが自生し、城の付近に見事な花を咲かせていたのか。
しかしバンテング氏は、島に自生しているユリを見て驚いたでしょうね。当時の島民はそれが大金に変わるとは知らずに美しい花を眺めているだけだった。
このアイザック氏の熱心な指導もあって、永良部ユリは島のシンボルであり経済を支える女王様となった。
本当に清らかで美しい花です。花言葉は「純潔」「威厳」。



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