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先祖を探して

Vol.141 琉球人の名前に暗号?


名前の歴史

昔々の琉球士族の人には苗字というものがなく、名前は童名(わらびなー)だけだったそうです。
国内だけでの生活であれば、この童名だけで問題なく過ごせたのですが、冊封や貿易などで国外の人や大和の人と接するようになると、この名乗り方では不便になったといいます。
それは、大和でも中国でも公的に接する人達の名前は、姓と字と名で構成されているのが普通で、童名で名前だけの琉球名ではちょっと不都合が多かったのでしょう。

公務に支障をきたすこととなったようで、16世紀の後半に入ると久米村人の影響を受けて、琉球人の士族は、唐名(からなー)という中国風の名前を持つようになり、中国との対応についてはその唐名を使うようになります。
また、1609年以後は、薩摩の侵略を受けて徳川幕府とも付き合いが出来たので、大和向けの名前も持つようになり、琉球士族は一人で名前を3つ持つようになります。
よく例に挙げられているのがこの方の名前ですね。
琉球最初の歴史書を編纂し、国の在り方を示した政治家であった羽地朝秀

大和名 朝秀(ちょうしゅう) 
唐名 向象賢 
童名 思亀(うみがみ)

ただし、生前は重家(しげいえ)という大和名で、唐名も呉象賢でした。
死後、変更されたそうですが、死後に名前が変わるというのも不思議ですね。戒名みたいなものなのでしょうかね?


童名のルール

このようにして3つの名前を持っていた琉球士族ですが、生まれて初めてつけてもらう名前である童名には、つけ方にもルールがあったようです。

童名は、男性なら思徳(うみとぅく)、小満金(しゅみーかに)など、女性ならウト、ウシなどと付けられますが、これは、親が決めるものではなく、先祖から一定の法則で、自動的に与えられるものなのだそうです。
祖父や祖母の童名からつけるというルールです。
生まれたのが男子なら、父方の祖父の名前をつけていき、女子が産まれると母方の祖母の童名をつけたようです。
子供が増えると、祖父・祖母の弟妹達の童名をつけていきこうして、童名の継承が行われていくのだそうです。

このルールが、必ずしも全てではないと思いますが、私の先祖調査にも少なからず役立っております。「血縁を示す童名の法則」とでも名付けましょうか。琉球時代の人々は、血縁を示す大変な暗号を名前に仕込んだのですね。


階級による美称

童名ですが、美称によって身分をも示してくれています。
身分によって接頭・接尾の美称が付きます。具体的には接頭語として「思(ウミ)」「真(マ)」、接尾語として「金(ガニ)」が付きます。
平民(百姓身分)には美称は付きませんが、士族であれば1字、王子・按司家になると2字の美称が付きます。

例えば鶴という名の場合
平民:鶴(チルー)
士族:真鶴(マヂル)
王子按司:真鶴金(マヂルガニ)
といった具合です。

これまた、名前を見れば身分が分かる。系図に童名しか無い場合は、美称のつき方で階級が分かるってことですね。
実はいま、解読を頑張っている系図の中の女性に、接頭語:思 接尾語:金がつく人がいるのですよね。これってやはり王族?

この「童名暗号ルール」をマスターして、系図を読み解いていきたいと思います。

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