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先祖を探して

Vol.150 上国地獄(2)


前回は1691年に制度化された薩摩藩による奄美群島への与人上国制度について書きましたが、次は15年後の1607年に変更になったご祝儀上国制度についてです。

御祝儀上国制度

この制度名は、なかなかダイレクトで大胆ですね。御祝儀を持って上国しろっていう薩摩の意向がダイレクトに分かります。御祝儀というのは、贈る側の気持ちでもってやるのが日本人の美学だと思っておりましたが、当時は強制だったようです。
与人の上国制度、これはまぁお仕事ととらえれば長期出張のようなもの。現地では会長や社長との会合と会食といった感じだったのでしょう。しかし豪華手土産付きの、交通費自己負担、命がけの旅路。
あまり嬉しくない出張ですよね。当時の与人達は、殿様への謁見付きの上国をどのように捕えていたのでしょうか。優越感満載だったのかな。きっとそうとも限らないですよね。

さてこの御祝儀上国制度というのは、年貢の上納や労役奉仕の他にある特別付加税です。お祝い事なのですが、強制事なのでもう農民の悩みの種でしかありませんよね。お祝い事なんて、そうそう何度も、、、なんていうのは甘いです。何かと慶事と称して、御祝儀配達人の与人の上国を命じていたのです。有名な慶事としては、徳川家定の正室となった篤姫の婚礼です。もちろん、沖永良部からも与人が上国しています。
当家からは、代官所の記録に1765(明和)年に上国した者がいます。

大守様(23第島津家当主:島津宗信)従四位上中将、御官位御累進御祝儀のために、沖永良部与人平安統(惟貞)上国する。

この平安統惟貞は、あの東郷実勝が沖永良部島に島流しできた時に、示現流の指導を受けた人です。もしかしたら上国の際に東郷実勝と再会できたのではと思いましたが、実勝は残念ながら1756年に他界しておりました。お墓参りには出向いたかもしれませんね。

この頃の藩主や家族への献上品としては沖永良部からは、白地芭蕉(生芭蕉)布、堅縞芭蕉布弐拾半、泡盛四斗。
御家老以下の役員等への進覧品としては、芭蕉布、焼酎、莚などだったようです。1年に数回の御掲示が重なると、献上物だけを増して、進覧物は増さなかったようですが、これらは全て島負担。相当な金額になったようです。

実は1754年に当家のご先祖様である池悦と具志川という与人が、上国についての願い出をしています。それまで、沖永良部の代官所管轄であった与論島の与人も、上国の際には出向いていたそうです。しかし与論島も小さな島ですし、負担もかなり大きい。そこで、沖永良部と与論島の与人が繰り回りで差し上るように願い出たようです。
その願いは受け入れてもらえたようで、その後は繰り回りで上国がなされたようです。
池悦も記録が無いので時期が分からないのですが、当家の記録としては与人として上国しています。自分が上国して、あまりの負担の大きさに驚き、今後の子孫のために願い出てくれたのかもしれませんね。


知名町史

当家の平安統惟貞は、その与論島との繰回しのルールで順番が回ってきたのでしょうね。いったいどのくらいの負担があったのか、知りたいところですが、資料もなくそこは分かりません。
当時は帆船航海で、船便の都合が良かったとしても2.3ケ月を要しており、それでも早旅といって喜んでいたそうです。そのため、与人1人の1回に要する上国費は莫大で、3回上国すれば三代まで遺るとまで言われてたほどの莫大な費用だったようです。ご先祖様、よくもまあ7代も続けて与人をできたなと、当時の財政力の大きさに驚かされます。
そして、そんなことを堂々と制度として行い、絞れるものは全部絞り取ろうとする体制には本当に驚きしかありません。
財政難だった薩摩藩が、琉球や奄美が欲しくてたまらなかった背景が、思い切り見てとれますね。財政についての話は別でもありますので、また書きたいと思います。


おまけ

1828年に与論島と沖永良部島に異国船が漂来して上陸したようです。この時に、沖永良部島では唐芋を与えると大変喜んだそうで、返礼として鉄の延板7つ、う突を1つ置いていったようです。これを田地横目の宮川という人が報告のため鹿児島に上国をしています。
この報告だけで、わざわざ何日もかけて船旅で鹿児島まで行かなければならないなんて、無駄が多いように感じますね。島に在中の代官への報告だけでは無理だったのでしょうかね。
この上国については、献上品や進覧品はどうだったのでしょうか、気になるところです。まさかそれ目当ての上国命令で、オプションで殿様への謁見付きの強制ツアーだったとか?



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