「せっかくの魔法をこんなトリックに費やすなんて、あんたらはほんといい人達だね」と、カリンカがため息混じりに言った。
二人の顔色がみるみる変わりはじめた。歯を食いしばり、無表情なマスコットのカリンカを見ていた。
「どうしてなんだ」と、ビムルが言った。ぜえぜえと、苦しそうに肩で息をしていた。
「二人の魔力を合わせたのに、どうしておまえには通じないの」マムルも、苦しそうな息をしていた。
「魔法が思うように使えない世界だからって、使う方法がないわけじゃないって事ぐらい、知ってるだろうさ」
ひどい揺れがぴたりとおさまった。マムルが力なく崩れ落ちた。苦しそうに息をしているビムルが、倒れかけたマムルをしっかりと両手で受け止めた。
「おまえの言うとおりかもな」と、マムルを抱きかかえたまま、ビムルが言った。「私達は、優しすぎたのかもしれない。なまなかな脅しじゃなく、命がけでなくてはならなかったんだ」
片手でマムルを支えたまま、ビムルは振り向きざまに杖を取り出し、カリンカに向かって振りおろした。
ズドドン、と青白い火花が走った。
不意を突かれたカリンカは、爆発の圧力をマスコットの体に受け、軽々とはじき飛ばされた。
「油断したじゃないか」と、宙に浮いて止まったカリンカが、くるりと二人がいる方に向き直った。
「――やめておいた方がいい」と、カリンカが言った。
杖を頭上に構えたビムルが、二撃目を放とうとしていた。
「貴重な魔力をそれ以上無駄遣いしないでおくれよ。私の取り分が少なくなるじゃないか」
「それより、答えは出たのかい――」
カリンカの言葉に惑わされ、ビムルは二撃目を放つ機会を逃していた。しかしそれは、正しい選択だったのかもしれない。ゾオンの者なら誰もが知っているおとぎ話の魔物が、目の前に姿を現そうとしていた。
「――あなた」と、ビムルの腕に支えられていたマムルが、大きく目を見開いていた。
マムルが弱々しく指をさした先。意識を失った叶方があお向けになっている場所だった。しかし、叶方の姿はどこにもなかった。叶方とは違うなにかが、同じ場所に出現していた。
「青い、鎧……」
クツクツと、宙に浮いたまま笑っているカリンカを気にする余裕もなく、ビムルの目は、あお向けに横たわる鎧にくぎ付けになっていた。
「やっぱり知っているようだね」と、カリンカがビムルの横に来て言った。
「――おまえ、どうやってあれを呼んだんだ」ビムルは杖を振るった。しかし杖は、風を切っただけで、宙を飛ぶカリンカを捕らえられなかった。
「それは教えられないね」ひらり、と宙を舞うカリンカが言った。「けどひとつ言えることは、あの鎧がこんな姿になったのは、みんなあんた達が原因だってことだよ」
二人の顔色がみるみる変わりはじめた。歯を食いしばり、無表情なマスコットのカリンカを見ていた。
「どうしてなんだ」と、ビムルが言った。ぜえぜえと、苦しそうに肩で息をしていた。
「二人の魔力を合わせたのに、どうしておまえには通じないの」マムルも、苦しそうな息をしていた。
「魔法が思うように使えない世界だからって、使う方法がないわけじゃないって事ぐらい、知ってるだろうさ」
ひどい揺れがぴたりとおさまった。マムルが力なく崩れ落ちた。苦しそうに息をしているビムルが、倒れかけたマムルをしっかりと両手で受け止めた。
「おまえの言うとおりかもな」と、マムルを抱きかかえたまま、ビムルが言った。「私達は、優しすぎたのかもしれない。なまなかな脅しじゃなく、命がけでなくてはならなかったんだ」
片手でマムルを支えたまま、ビムルは振り向きざまに杖を取り出し、カリンカに向かって振りおろした。
ズドドン、と青白い火花が走った。
不意を突かれたカリンカは、爆発の圧力をマスコットの体に受け、軽々とはじき飛ばされた。
「油断したじゃないか」と、宙に浮いて止まったカリンカが、くるりと二人がいる方に向き直った。
「――やめておいた方がいい」と、カリンカが言った。
杖を頭上に構えたビムルが、二撃目を放とうとしていた。
「貴重な魔力をそれ以上無駄遣いしないでおくれよ。私の取り分が少なくなるじゃないか」
「それより、答えは出たのかい――」
カリンカの言葉に惑わされ、ビムルは二撃目を放つ機会を逃していた。しかしそれは、正しい選択だったのかもしれない。ゾオンの者なら誰もが知っているおとぎ話の魔物が、目の前に姿を現そうとしていた。
「――あなた」と、ビムルの腕に支えられていたマムルが、大きく目を見開いていた。
マムルが弱々しく指をさした先。意識を失った叶方があお向けになっている場所だった。しかし、叶方の姿はどこにもなかった。叶方とは違うなにかが、同じ場所に出現していた。
「青い、鎧……」
クツクツと、宙に浮いたまま笑っているカリンカを気にする余裕もなく、ビムルの目は、あお向けに横たわる鎧にくぎ付けになっていた。
「やっぱり知っているようだね」と、カリンカがビムルの横に来て言った。
「――おまえ、どうやってあれを呼んだんだ」ビムルは杖を振るった。しかし杖は、風を切っただけで、宙を飛ぶカリンカを捕らえられなかった。
「それは教えられないね」ひらり、と宙を舞うカリンカが言った。「けどひとつ言えることは、あの鎧がこんな姿になったのは、みんなあんた達が原因だってことだよ」