「覚悟していろ」
自分の意志ではなかった。叶方の体を借りて、別の誰かが口にした言葉だった。
「――ごめん京卦、大丈夫だ。絶対に助けるから」
あわてて言い直した叶方だったが、言葉に出そうとした叶方の口は、しかし思ったとおりには動かなかった。抱きかかえられていた京卦の体が、不安にギュッと強ばるのがわかった。
階段を下りると、叶方は京卦を硬いアスファルトの上に置き、ゆっくりと後ろに下がった。
それまで現れなかった青い鎧が、みるみるうちに叶方の全身を覆っていった。
「なにする気だよ、ちょっと待てよ」
叶方は青騎士を止めようと必死で抵抗したが、青騎士は剣を手に取り、京卦を一刀に切り伏せようと、大きく振りかぶった。
「死の砂漠に落ちるがいい」と、青騎士が言った。
言葉にならない叫び声を上げた叶方は、見開いた目で小さな猫の姿を捉えた。青騎士が振りおろした剣は火花を散らせて弾かれ、京卦を切ることなく、宙を泳いで止まった。
叶方の目の前に現れたのは、手足に靴下を履いたような灰色がかった猫だった。何度か見かけたことがある猫だったが、そのいずれとも違っていたのは、しっかりと二本足で立っていたことと、その手に長い鉄の棒を持っていたことだった。
「危なかった」
と、猫がつぶやいたとたんだった。叶方がまばたきをするまもなく、素早く動いた猫が、青騎士の頭上に鉄の棒を振りおろした。
叶方の意識が、プッツリと途切れた。
自分の意志ではなかった。叶方の体を借りて、別の誰かが口にした言葉だった。
「――ごめん京卦、大丈夫だ。絶対に助けるから」
あわてて言い直した叶方だったが、言葉に出そうとした叶方の口は、しかし思ったとおりには動かなかった。抱きかかえられていた京卦の体が、不安にギュッと強ばるのがわかった。
階段を下りると、叶方は京卦を硬いアスファルトの上に置き、ゆっくりと後ろに下がった。
それまで現れなかった青い鎧が、みるみるうちに叶方の全身を覆っていった。
「なにする気だよ、ちょっと待てよ」
叶方は青騎士を止めようと必死で抵抗したが、青騎士は剣を手に取り、京卦を一刀に切り伏せようと、大きく振りかぶった。
「死の砂漠に落ちるがいい」と、青騎士が言った。
言葉にならない叫び声を上げた叶方は、見開いた目で小さな猫の姿を捉えた。青騎士が振りおろした剣は火花を散らせて弾かれ、京卦を切ることなく、宙を泳いで止まった。
叶方の目の前に現れたのは、手足に靴下を履いたような灰色がかった猫だった。何度か見かけたことがある猫だったが、そのいずれとも違っていたのは、しっかりと二本足で立っていたことと、その手に長い鉄の棒を持っていたことだった。
「危なかった」
と、猫がつぶやいたとたんだった。叶方がまばたきをするまもなく、素早く動いた猫が、青騎士の頭上に鉄の棒を振りおろした。
叶方の意識が、プッツリと途切れた。