「すみませーん。誰かいませんかー。誰かいないのーッ!」
サトルが大声で叫ぶと、そばの柱の陰から、小さな子供が飛び出してきました。
「――あっ、ちょっと待って、聞きたいことがあるんだ」
けれどもサトルの声が聞こえないのか、子供は廊下をいっさんに走っていってしまいました。ようやく見つけた人ですから、サトルはなんとか追いついて話を聞こうと、走り去っていく小さな背中を、大急ぎで追いかけていきました。
「ねぇ、待ってーッ。待ってったらー」
と、後ろを振り返った子供の顔には、明らかなおびえの色が浮かんでいました。
不思議な子供は廊下を折れ、階段を跳ねるように上り始めました。後についていくサトルには、とても追いつけない早さでした。
それでも、ようやくのことでついていくと、不思議な子供は、また廊下に飛び出して行ってしまいました。
サトルが子供の飛び出して行った廊下にたどり着くと、同時にバタン! とドアの閉まる音がしました。
そこは、廊下の左右にたくさんの部屋がある廊下でした。不思議な子供が、無数にあるどの部屋に隠れたのか、まるで見当もつきませんでした。
サトルは、かすかな記憶を頼りにして、おそらくこの部屋に入ったんだろう、と思った部屋のドアを、軽くトントン、とノックしました。
しかし、中からは、なんの反応もありません。
(――この部屋じゃないのかな。じゃあ、きっとこっちだ)と、サトルは、ノックをした部屋の向かい側にある部屋に移りました。そして、軽くノックをしようとしました。けれど、サトルがノックをしようとするより先に、ドアが開き始めました。
それが、あまりに自然でしたから、サトルはびっくりして、ノックをしようとした手を、さっと引っこめました。
開いたドアの奥には、公園の外に広がっていたような、田舎の景色がありました。でもちょっと変なのは、景色が天地逆さまになっているのでした。
サトルは、またあのひげの生えた子供が、どこかで走っていないか、ドアの向こうをのぞいてみました。
天地が逆さまで見づらいからでしょうか、人らしい姿は、どこにもありませんでした。
結局サトルは、この部屋もあきらめて、次の部屋を調べてみることにしました。
そっと、ドアを閉めて振り返ると、さっきノックした部屋から、ひげの生えた不思議な子供が、飛び出してきました。
不思議な子供は、そのまま足を止めることなく、頭からサトルに体当たりを食らわせました。
不意を突かれたサトルは、バランスを崩し、逆さまになったドアの向こうの世界へ、背中から墜落していきました。
サトルが大声で叫ぶと、そばの柱の陰から、小さな子供が飛び出してきました。
「――あっ、ちょっと待って、聞きたいことがあるんだ」
けれどもサトルの声が聞こえないのか、子供は廊下をいっさんに走っていってしまいました。ようやく見つけた人ですから、サトルはなんとか追いついて話を聞こうと、走り去っていく小さな背中を、大急ぎで追いかけていきました。
「ねぇ、待ってーッ。待ってったらー」
と、後ろを振り返った子供の顔には、明らかなおびえの色が浮かんでいました。
不思議な子供は廊下を折れ、階段を跳ねるように上り始めました。後についていくサトルには、とても追いつけない早さでした。
それでも、ようやくのことでついていくと、不思議な子供は、また廊下に飛び出して行ってしまいました。
サトルが子供の飛び出して行った廊下にたどり着くと、同時にバタン! とドアの閉まる音がしました。
そこは、廊下の左右にたくさんの部屋がある廊下でした。不思議な子供が、無数にあるどの部屋に隠れたのか、まるで見当もつきませんでした。
サトルは、かすかな記憶を頼りにして、おそらくこの部屋に入ったんだろう、と思った部屋のドアを、軽くトントン、とノックしました。
しかし、中からは、なんの反応もありません。
(――この部屋じゃないのかな。じゃあ、きっとこっちだ)と、サトルは、ノックをした部屋の向かい側にある部屋に移りました。そして、軽くノックをしようとしました。けれど、サトルがノックをしようとするより先に、ドアが開き始めました。
それが、あまりに自然でしたから、サトルはびっくりして、ノックをしようとした手を、さっと引っこめました。
開いたドアの奥には、公園の外に広がっていたような、田舎の景色がありました。でもちょっと変なのは、景色が天地逆さまになっているのでした。
サトルは、またあのひげの生えた子供が、どこかで走っていないか、ドアの向こうをのぞいてみました。
天地が逆さまで見づらいからでしょうか、人らしい姿は、どこにもありませんでした。
結局サトルは、この部屋もあきらめて、次の部屋を調べてみることにしました。
そっと、ドアを閉めて振り返ると、さっきノックした部屋から、ひげの生えた不思議な子供が、飛び出してきました。
不思議な子供は、そのまま足を止めることなく、頭からサトルに体当たりを食らわせました。
不意を突かれたサトルは、バランスを崩し、逆さまになったドアの向こうの世界へ、背中から墜落していきました。