隠喩の悲劇
文章修行をしていた頃、偶々ある名の知れた作家に、隠喩がうまいとべた褒めされたことがあった。
有頂天にならないわけがない。
隠喩を多用した短編小説を書きまくった。
ところが、隠喩を毛嫌いする編集者に当たった。彼はものすごい剣幕で、浮かれ気分で書いた隠喩を、片っ端から削っていった。
彼曰く、隠喩はよそからの借り物であって、文章の勢いを殺ぐ、と。
ぼくは、にわかには理解し難く、大作家に褒められた援護もあって、強い憤りさえ覚えた。
しかし、体の一部を失った思いで文書を書くうち、その意味が身に染みてきた。
借り物に頼らず、自分の感覚を筆先の一点に集中させて書く不安定感のスリリングなこと。
このストイシズムは癖になる。
文章修行をしていた頃、偶々ある名の知れた作家に、隠喩がうまいとべた褒めされたことがあった。
有頂天にならないわけがない。
隠喩を多用した短編小説を書きまくった。
ところが、隠喩を毛嫌いする編集者に当たった。彼はものすごい剣幕で、浮かれ気分で書いた隠喩を、片っ端から削っていった。
彼曰く、隠喩はよそからの借り物であって、文章の勢いを殺ぐ、と。
ぼくは、にわかには理解し難く、大作家に褒められた援護もあって、強い憤りさえ覚えた。
しかし、体の一部を失った思いで文書を書くうち、その意味が身に染みてきた。
借り物に頼らず、自分の感覚を筆先の一点に集中させて書く不安定感のスリリングなこと。
このストイシズムは癖になる。