【 声だけの魂の世界は、果たしてあるのか?】
「声」 小山右人(新潮新人賞 / Yujin Koyama)の小説
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次々に発表して来た作品(「マンモスの牙」、「珠」等)で、精神の限界、ひいては彼岸の存在に挑戦してきた作家、小山右人が、「声」を通じて魂の存在を問う。
人は、死やうつの状態に自ら直面すると世界観が変わると言われるが、著者は自らの切迫した体験も交えつつ、この大きな問題に正面から筆を進めていく。
その際、たった一度の愛の告白を恋人に拒絶され、話すことを頑なに拒否している青年との出会いを通じて、異界にまで突き抜ける視野が開かれる限界まで筆は進んでいく。
そして、「声」だけの神秘の世界に虜になっていたもう一人の青年との偶然の出会いは、この追求をリアルに描写する格好の場面を矢継ぎ早に提供する。