「子供」を描いた漫画も多くあり、日本ほど「子供の物語」が溢れている国は他にないとも言えます。 今回はその中からリアリティーがあり、なるべく暴力性の無い作品を紹介させて貰います。
まずは世界的に人気を集めた「ヒカルの碁」からとし、これは「ジャンプ」に連載された作品の中では群を抜いて「大人向け」です。
ここでは子供の「強く成りたい」という欲求が「非暴力」で描かれており、世界観もリアルで「大人と子供の関係」がしっかりと描かれています。
漫画なので当然ファンタジーの要素もあり、それは日本が特に平和で雅な文化を誇っていた、平安時代の幽霊が主人公の少年に取り憑くというモノです。 その幽霊(藤原左為)は囲碁を極める為に生き続け、このボードゲームに人生を賭ける少年少女達を導きます。
次に古典的な野球漫画「キャプテン」を挙げます。 これは私の親の世代に流行った漫画で、斜里の家の民宿にソロってたので読めました。
スポーツが素晴らしいのは、子供の「強く成りたい」という欲求を暴力以外に転化できる点で、この「スポ魂漫画」は実にリアルにそれを描いています。
我々の世代では「スラムダンク」が「スポ魂」の代表ですが、これは些か暴力的でミーハー的要素(恋愛やギャグ)もあり、それに比べ「キャプテン」はとても真摯な「向上心の物語」と言えます。
現代にもこうしたガチな「スポ魂漫画」はあり、中でも「ピンポン」は優れています。
卓球という個人競技ならではの「意地とプライド」が見事に描かれており、中国人留学生が卓球で日本を制覇する為にやって来るストーリーもリアリティーがあります。
それほど中国では「ピンポン」が盛んで、これに人生を賭ける人も多く居ります。 このスポーツは時に残酷なまでに選手の心を折りますが、絶望から這い上がろうとする努力は応援したくなります。
逆に軟派を極めたスポーツ漫画(?)として、「行け!南国アイスホッケー部」も紹介します。 これは「スポ魂」に対するアンチテーゼ(対立命題)作品で、ひたすら遊びとギャグ(下ネタがメイン)に走ります。
現実的にはこうした「強く成りたい」という欲求を追及しない子供たちも多く、むしろそれを諧謔的に眺める向きがクールとされる時代になって来ました。 この漫画はそうした醒めた子供たちの支持を受け、続編の「かってに改造」や「さよなら絶望先生」も合わせて、現代の子供の心を一番捉えた作品と言えるかも知れません。
最後に少年誌の連載ではありませんが、一貫して高校生を描いている森田まさのり氏の「べしゃり暮らし」を紹介します。
私が少年誌を読んでいた頃は「ろくでなしブルース」が連載されていて、その頃から森田漫画のファンになり、次の「ルーキーズ」も素晴しかったですが、森田氏は更なる発展を遂げました。
高校生は子供が大人に変わって行く年頃で、そこには当然様々なバリエーションがあります。 森田氏はそれを愛情を持って描き、「べしゃり暮らし」では「お笑いの世界」で頂点を目指す高校生を描いています。
これも一種の「スポ魂モノ」と取れますが、ユーモアと創造性に溢れていて正に「平和な日本」を象徴する作品だと思います。