そんなオーウェルの小説「空気を求めて」は、わたし的には最高にクールでイカした題名に思え、これは「自由を求めて」の詩的表現とも取れますが、より切実で生理的な葛藤を描いています。
これは第一次世界大戦に従軍した元兵士を主人公とした、第二次世界大戦の開始間際に於けるイギリス社会での様々な葛藤を描いた物語で、彼は「大切なテーマは戦争ではなく、戦後だ」とレフト-ブック-クラブ(左翼文芸サークル)で語るような中年男でした。
わたしはこの物語を「オーウェルと旅」という素晴らしい文芸評論書でカジッただけなので概略的にしか紹介できませんが、彼(ジョージ)は永く帰れていなかった故郷へ「空気を求めて」旅に出ますが、そこに抱いていた希望は幻滅に終わります。
それは故郷が産業革命によって昔と全く異なってしまったからで、この物語ではそうした過去の栄光に「空気を求めて」いるインテリゲンチャも多く登場します。
しかし、そうした懐古主義はほぼ意味を成さないのが現実とされ、旧約聖書の「求めよ、さすれば与えられん」にも言及していますが、オーウェルは「アンチ-クライスト」なので福音的なストーリーは描かれていません。
一方で、わたしは割と神話的な福音を求めるタチなので、近未来の中国革命で「空気を求めて」闘う人々には幸福なストーリーを与えたいと思います。
そこでまず筆頭に上がるのは、「長征」で最大多数を占める「闇っ子女子」達で、彼女等が如何に「空気を求めて」葛藤したかを描こうと思います。
これらの女子達は厳しい中国社会の中で奴隷の様に搾取されており、これには漫画「闇っ子」で描かれている様な性的搾取も含まれます。
奴隷労働の実態については岩波新書の「奴隷とは」に詳しく、そこでは家畜の様に扱われた黒人奴隷達が如何に「空気を求めて」葛藤したかが綴られています。
こうした「闇っ子女子」達にとって、ルーガの存在は何よりも大くの「空気」を与えてくれ、この「勝利の女神」と讃えられる世界一のロック-スターのタメになら、命を投げ出してもイイと考える100万人もの女子達によって、長征は誰にも止められない勢いを得ます。