真の動物福祉牧場を目指して

言論の自由と未来 (三)

  前回からの続きで、言論の精華である文芸作品について語ります。

  まずは香港空港の書店で売られていた余華(ユイホア、ノーベル賞作家)の作品から語りますと、その代表作は「兄弟(上下巻)」です。

  この上巻では「文化大革命」を子供の視点から自伝的に語っており、彼の父は国共内戦(死者数は1億人に達するともされる)で亡くなっており、母の再婚相手となった義父と、その連れ子との兄弟関係がとても諧謔的に物語られています。

  それは義父が地主階級の出身だったタメに、文革の混乱と狂気の中で嬲り殺しにされてしまい、彼を「男の中の男」と尊敬していた余華はとても大きなショックを受けたからです。 もちろん彼の母と兄弟の嘆きはそれ以上で、子供時代にこうした強いショックを受けると、その精神は道化的に成らざるを得ないようです。 

  余華の作品はその後もファルス(道化)精神が貫かれ、「活着(ホアジャ)」や「本当の中国の話をしよう」などが日本語訳されていますが、その語り口は"中島らも"や"いいだもも"のように諧謔的で面白く読めます。

  次に、やはりファルス精神に富んだ作家で、日本と香港でも海外作家の中ではトップレベルの人気を博しているジョージ・オーウェルの作品を紹介します。

  因みに"ジョージ"を名乗る英国の作家は多くがファルス精神に富んでおり、ジョージ・バーナード・ショーがその筆頭に挙げられますが、女性の覆面作家(当時)ジョージ・エリオットもかなりいい線を行っており、ビートルズのジョージ・ハリスンも諧謔精神ではジョンを超えていると評されます。

  話をオーウェルに戻しますと、彼は大英帝国時代のインドに生を受け、ケシ(阿片)プランテーションの監督官の息子として育って、イギリスの名門大学を卒業した後にビルマを統治する仕事に就きます。

  そこでのビルマ人を支配する過酷な日々は彼を作家の道へと導き、「ビルマの日々」を発表した後にオーウェルは職を辞してボヘミアン(放浪者)となります。  

  それから「パリ・ロンドン放浪記」、「ウィガン波止場への道」と、どん底生活を送って当時流行っていた共産革命に傾倒しますが、「カタロニア讃歌」でスペイン内戦に共産義勇軍として参戦して負傷し(喉を撃たれた)、そこでの権力争いに幻滅して革命からは離れます。

  その傷がもとで彼は早死にしますが、それまでに共産革命とその後の共産社会(ソビエト連邦)を痛烈に批判した「動物農場」、「1984年」を発表し、これは不朽の名作として劇化や映画化され続けています。

  また一方で、オーウェルの真価は「水晶の精神」や「鯨の腹のなかで」などの社会評論に在るともされ、その言論の力は民主主義を大いに鼓舞するモノと高く評価されています。

  最後にもう一人、独裁主義を痛烈に批判した作家として世界を代表する存在である、アレクサンダー・ソルジェニーツィンをもう一度取り挙げます。

  彼は「収容所群島」に於いて、5パーセントの囚人しか生き残れなかった地獄をとても文学的に描いており、その5パーセントになるタメに自分が犯した罪も告白しています...  それは仲間を売る行為に他なりませんでしたが、それでも生き残って独裁政権の罪を告発する使命を果たした彼は、文学史に残る「大悟」を未来へと遺しました。

  この功績はノーベル賞はもちろん、宗教界の最高栄誉賞であるテンプル賞も彼にもたらし、これは亡命者として老後の人生を送らざるを得なかった彼を大いに励まして、その光は孫娘のパールにも引き継がれると物語りました。

  これはわたしの「Sunの物語」の話で、孫娘のパール・ソルジェニーツィンの年齢を考えると母親は40歳過ぎで彼女を産んだとなりますが、この母子は年齢を超えた絶世の美女として描くので、その辺はご容赦頂きたく思います。

  ようやく話が物語につながりましたので、次回は久しぶりにパールのブログによる近未来の言論の自由を語ろうと思います。

   

    

  

  

  

  

  

  

  

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