雲上楼閣 砂造宮殿

気ままに自分勝手なブログ。徒然に書いたり、暇潰してみたり、創作してみたり・・・

七夕の夜に Colling

2013-07-07 23:25:32 | 宮LiP

「7月7日、本日も快晴です」
爽やかな笑顔とともに伝えられる朝の天気。
けれど、それを眺めるチェギョンの顔は少しだけ曇っていた。
いつもと同じ時間、いつものように自転車にまたがり、博物館に向かう。
いつもと違うのは、ついつい空を見上げてしまうこと。
よく晴れている。
ニュース通りの青空だ。
けれど、雨が降らないかな、と願ってしまう。
それは、今日が七夕だから。
そんなふうにして、チェギョンはその日を過ごしたのだった。

夜10時。
シンへの定期報告の時間だ。
自室のベッドに座ったチェギョンは、いつものように履歴登場最多の番号を呼び出した。
「もしもし、チェギョン」
「はい!元気だった、シン君?」
呼び出し5回で出たシンに、チェギョンはほっとしていた。
「今日、ソウルは雨が降った?」
「いいや、天気を気にするなんて珍しいな」
「だって今日は七夕だし」
「は?七夕は来月だろう?」
「そうだけど…」
太陰暦の7月7日は、太陽暦で見れば8月になる。シンの指摘は真っ当なものだった。
「でも、7月7日だし…」
シンは小さくため息をついていた。
「なぁ、チェギョン、韓国の伝説だと、雨が降らなければ織姫と彦星は会えないと言われている。だが、違う伝説が伝えられてる国があるんだよ」
「本当!?」
途端、ぱぁっと明るくなった声に、シンの脳裏には満面の笑みのチェギョンが写し出されていた。
「あぁ、だから二人はどこかの国の空で会えてるのさ」
「そっか」
そう言って二人が見上げた空には、天の川が輝いていた。


カウントダウン2

2012-12-30 17:21:55 | 宮LiP
(連絡が…来ない……)
韓国から旅立って、移動の慌ただしさや、マカオに馴染もうと無意識に努力する時期も過ぎたころ、チェギョンは
一度も夫から連絡が来ないことが気になり始めたのだった。
いや、正確には、韓国を離れる前から気になっていたのだ。
ただ、忙しさを理由に誤魔化すのが限界に来ただけのこと。
それはチェギョン自身がよく分かっていた。
(せめてメールとかさぁ~)
思っても、誰にも言えない。
(こうゆうのは男性から動くものでしょう!!)
相手が口下手で、こと対人スキルに関してはいまいちだと分かっているくせに、チェギョンはそれをすっかりと棚上げしていた。
同行したチェ尚宮にはさすがに言えない。
いや、多分理解はしているのだ。
だから、チェ尚宮もなにも言わないのだ、きっと。
無事に着いたという連絡は、すでに上殿に入れている。
ならば、シンが動かないということだ。
だから、チェギョンは不安になる。
「シン君、やっぱり…」
その先はどうしても口にできなかった。

Christmas2

2012-12-26 00:30:34 | 宮LiP
チェギョンが初めてマカオで過ごすクリスマスは、家族と一緒に過ごせない初めてのクリスマスでもあった。
ソウルほどは寒くないものの、やはり冬は寒い。
それなのに、薄着のままチェギョンは、バルコニーから空を睨み付けていた。
ソウルには雪の予報が出ている。
例え一緒にいられなくても、今年最初の雪を同じ日に感じられたら。
それを願って見上げた空は、綺麗な月を浮かべていた。
(月は天の邪鬼だったっけ?)
完璧な満月に、完璧と自負する夫が見えた気がした。
時差1時間は、近くて遠いと、改めて感じていた。
その時、ふいに冷たい風がチェギョンを撫でさすらった。
「妃宮様、風邪を召されます」
夕食の準備をするチェ尚宮のもとまで風が届いたらしかった。
「えぇ…ねぇ、チェ尚宮お姉さん?」
「はい、妃宮様」
いつもと変わらぬチェ尚宮の態度に、チェギョンは、自分だけに聞こえたのだと確信した。
「…きっとソウルは、雪が降っているわね」
風が運んだ愛しい人の呟きを、自分だけのものにするために、チェギョンは今、閉じたばかりの窓越しに空を見上げて呟いた。
「シン君、メリークリスマス♪」
それは、チェギョンにだけ聞こえたクリスマスを祝うシンからのメッセージへの答えだった。
「チェギョン、メリークリスマス」
風が運んだのは、そんな短い言葉だった。

来年こそは、シン君と一緒にいられますように。
チェギョンは胸のなかで呟いた。

Christmas1

2012-12-25 23:59:57 | 宮LiP
息も凍るソウルの冬はとかく寒い。
シンは、鉛色の空を見詰めながら、遠い空の下、頑張るチェギョンを思い出していた。
チェギョンと一緒にクリスマスを祝うことはついに叶わず、テラスで一人見上げた空は、今にも雪が降って来そうだった。
「シン君、メリークリスマス♪」
聞こえりるはずのない声が耳をなぜた。
「チェギョン、メリークリスマス」

来年こそは、彼女と一緒に過ごすとかく誓って呟いた。

カウントダウン1

2012-12-03 06:52:12 | 宮LiP
「元気か?」
そう書いて、少しの間携帯電話のディスプレイを眺めたシンは、おもむろにソファーの上にそれを放り投げた。
「そんな目で見るなよ」
そう言って伏せたのは満面の笑みのチェギョンの写真。
写真のチェギョンが表情を変えるはずもないのに、どうやらシンには、それが非難めいて見えたらしかった。
季節は12月。
息の白くなる季節は、それだけで愛し合うものが寄り添う理由になる。
けれど、シンの最愛の人は、遠い空の下にいた。

【チェギョンからシンへ】0 未送信ボックスより

2012-09-28 21:41:30 | 宮LiP
シン君お元気ですか?
澳門はとっても素敵なところだよ。

海は綺麗だし、マカオタワーからの眺めは最高(*^.^*)
きっとシン君も気に入ると思うよ。

そうそう、早速名物のエッグタルトを食べたんだ。
頬っぺたが落ちそうなほどおいしいんだ(^q^)!!

シン君にも食べてほしいなぁ~。
でも、甘いものが苦手なシン君だから、シン君の分も私が食べてあげるね!!


じゃあ、また、いっぱいいっぱい元気でね(o⌒∇⌒o)



会いたいよ、シン君

花冷え

2012-04-25 22:44:47 | 宮LiP
夕方に降り始めた雨は、何時の間にやら音をたてていた。
「花冷え」の言葉の通り、吐く息が白く染まる。桜の開花宣言が行われた翌日、東宮ではチェギョンが窓の外を眺めていた。
「ハァ~」
執務から戻ったシンは、足音もたてずに近付くと、背後から声をかけた。
「ため息なんて、どうした?」
「キャッ」
チェギョンの小さな悲鳴に、シンは軽く眉根を寄せた。
「叱られるような事でもしたのか?」
そう言いながらチェギョンの隣に座ると、窓の外を伺った。
「結構、降っているな…」
チェギョンは小さくため息をつくと、呟くように話し出した。
「明日、楽しみにしてたのに…」
明日は、久しぶりの夫婦揃っての公務だ。
場所は、桜が見事に咲き誇る園庭が有名な幼稚園。この時期だけは土日に限り、一般に開放しているのだ。
園はおろか、地域住民に是非にと請われたのだった。
「桜の下で小さい子たちと遊びたかったなぁ」
チェギョンは実につまらなそうに、そう言った。。
「おい、ちゃんと公務をしてくれよ、妃宮」
呆れたように言ったシンの口元には、微かな笑みがあった。
「でもさぁ、折角なら楽しいほうが良いでしょう?」
そう言って首を傾げたチェギョンの鼻は、微かに赤くなっていた。
「…一体いつから、ここにいた?」
シンは、その長い腕でチェギョンの肩を引き寄せた。
「ん~、どの位かな」
素直にチェギョンがシンに頬を寄せた。
「まぁ、いい」
シンはチェギョンの髪に優しく口付けると、すっかりその体を胸の中に閉じ込めたのだった。
静かな東宮には、雨音だけが響いていたのだった。

庭の枯葉で何をする?1

2011-12-21 22:22:09 | 宮LiP
「ねぇ、シン君、焼きいも食べたくない?」
「は?」
秋の東宮殿。
庭の木々は色付き、ハラハラと枯れ葉が舞う午後に、今日もシンの愛しの宇宙人は予想しなかった台詞をはいた。
「やっぱり秋は焼きいもだよね~?」
チェギョンはそう言いながら満面の笑みで、両手を胸元で合わせると、軽やかにターンを決めた。
シンはその姿を眺めながら、少し首を傾げた。
「やきいもって、何だ?」
「…えぇ~!?」
シンの言葉に、チェギョンが大声で反応した。
「シン君、焼きいも知らないのぉ~?!」
シンは顔をしかめながら頷いたのだった。
「そ、そっか~、焼きいもなんて、THE☆庶民の食べ物、シン君は知らないよね」
段々と、顔を下に向けながら呟くチェギョン。シンはその横顔を、眉根を寄せつつ眺めていた。
「なぜ、うつむく?」
不機嫌な響きを滲ませたシンの声が聞こえた。
「だぁって~」
チェギョンは口元を尖らせてシンを見上げた。
「焼きいもが食べたかったんだもん」
「水刺間に作らせるか?」
シンの提案に、チェギョンはすぐに首を横に振った。
「違うの!庭の枯葉で自分で焼くから美味しいのよ」
チェギョンの力説にシンが驚いてのけ反った。
「…焼く、のか…?庭園で」
シンが戸惑いながら発した言葉に、チェギョンが満面の笑みで答えた。
「焼いて良いの?!」
「あ…」
自分で言いながら、シンは思わず視線を宙にさ迷わせた。
「コン内官に、確認してみる」
シンはそう言うと、コン内官を呼び寄せたのだった。

「庭で焼きいも、でございますか?」
シンに告げられた言葉に、コン内官は目を白黒させている。
何しろ重要文化財で焼きいもをしようと言うのだから、当たり前だ。
「あぁ、チェギョンに教えられ、僕も興味がわいた。可能なら、やってみたいのだが」
コン内官は戸惑った表情のシンと、笑顔のチェギョンを見比べた。
「はぁ…失礼ながら両殿下、東宮殿の庭園では難しいと存じます」
途端、やはりと納得顔のシンとがっかりした顔のチェギョンが並んだ。
「残念だな、チェギョン、諦めろ」
そう諭すシンに、チェギョンはすがりついた。
「難しいって事は、絶対に無理って事じゃないでしょ?」
「ちゃんと言葉の裏を読め。いくら無理でも内官が、はっきり言えるわけ無いだろう。可能ならそう言う」チェギョンはアヒル口でシンを見上げた。
「う~、なら、庭園が無理って事でしょ?ほかの場所なら平気なんでしょ、コン内官おじさん」
コン内官に向けたその顔は、まるで駄々をこねた子どものようだった。
「左様でございますね。文化財になっておりません所有の邸宅であれば可能かと…」
コン内官もさすがに言葉を濁した。
「チェギョン、諦めろ」
途端、聞こえた声に、チェギョンは頬を膨らませた。
「条件を満たす邸宅は、車で5時間かかる。だから諦めろ」
シンはその後、仕事を思い出したと言って、コン内官とともに上殿へ向かった。
東宮殿には、不機嫌な妃宮が1人、残されたのだった。
「あぁあ~、ほっこりほくほくまったり~な、お芋が食べたかったのにな~」
パビリオンのソファーに腰を落ち着けたチェギョンは、寝室から持って来た豆腐人形をギュウッと抱き締めたのだった。

その頃、シンは上殿で今をときめく皇帝陛下と対面していた。

神無月 秋の路

2011-10-31 23:59:15 | 宮LiP
「やらなかった後悔より、やってしまった後悔の多い人生であれ」

果たして、自分はその言葉のように生きているのか?

果てしなく先を歩く君に、そう問い掛けて笑われた。気がした。
「それは、貴方の人生だから」と。

「貴方は、誰にも憚ることなく、『持っている』と言えるものがあるわ」
微笑む君に、憮然とした僕が並んで歩く10月最初の土曜日の昼下がり。
銀杏にはまだ早くて、でも秋風はすでに冷気を孕んでいる。
「それはね、自分の人生よ」
笑って言う君に、顔をしかめる僕。
「あ~、何言ってるんだ!?って顔、してる~」
抗議の声もどこ吹く風で、厚く雲の垂れ込めた空を見上げた。
雲の切れ間から差し込む光は僕に宗教絵画を思い起こさせた。
「はぁ~、綺麗だねぇ」
そう言う君の横顔を盗み見る。
「天使の階段だね」
得意気な笑顔に見惚れながらも聞き返す。
「天使の、階段…?」
「そう、天使の階段」
君は雲の切れ間を指差し、見ながら言う。
「あぁいう、雲の切れ間から光が差し込んでるのを天使の階段て言うんだよ♪」
楽し気に笑う君に、さして興味の無さそうな僕。
「もう、シン君だってこんな綺麗な風景を見たら撮りたくなるんじゃないのぉ?」
少し頬を膨らませた君が、僕を見上げてそう言った。

でも、その時、僕の心を占めていたのは、君の綺麗な横顔だった。
君と歩けるだけで、僕の心は満たされるんだ。