夕方に降り始めた雨は、何時の間にやら音をたてていた。
「花冷え」の言葉の通り、吐く息が白く染まる。桜の開花宣言が行われた翌日、東宮ではチェギョンが窓の外を眺めていた。
「ハァ~」
執務から戻ったシンは、足音もたてずに近付くと、背後から声をかけた。
「ため息なんて、どうした?」
「キャッ」
チェギョンの小さな悲鳴に、シンは軽く眉根を寄せた。
「叱られるような事でもしたのか?」
そう言いながらチェギョンの隣に座ると、窓の外を伺った。
「結構、降っているな…」
チェギョンは小さくため息をつくと、呟くように話し出した。
「明日、楽しみにしてたのに…」
明日は、久しぶりの夫婦揃っての公務だ。
場所は、桜が見事に咲き誇る園庭が有名な幼稚園。この時期だけは土日に限り、一般に開放しているのだ。
園はおろか、地域住民に是非にと請われたのだった。
「桜の下で小さい子たちと遊びたかったなぁ」
チェギョンは実につまらなそうに、そう言った。。
「おい、ちゃんと公務をしてくれよ、妃宮」
呆れたように言ったシンの口元には、微かな笑みがあった。
「でもさぁ、折角なら楽しいほうが良いでしょう?」
そう言って首を傾げたチェギョンの鼻は、微かに赤くなっていた。
「…一体いつから、ここにいた?」
シンは、その長い腕でチェギョンの肩を引き寄せた。
「ん~、どの位かな」
素直にチェギョンがシンに頬を寄せた。
「まぁ、いい」
シンはチェギョンの髪に優しく口付けると、すっかりその体を胸の中に閉じ込めたのだった。
静かな東宮には、雨音だけが響いていたのだった。
「花冷え」の言葉の通り、吐く息が白く染まる。桜の開花宣言が行われた翌日、東宮ではチェギョンが窓の外を眺めていた。
「ハァ~」
執務から戻ったシンは、足音もたてずに近付くと、背後から声をかけた。
「ため息なんて、どうした?」
「キャッ」
チェギョンの小さな悲鳴に、シンは軽く眉根を寄せた。
「叱られるような事でもしたのか?」
そう言いながらチェギョンの隣に座ると、窓の外を伺った。
「結構、降っているな…」
チェギョンは小さくため息をつくと、呟くように話し出した。
「明日、楽しみにしてたのに…」
明日は、久しぶりの夫婦揃っての公務だ。
場所は、桜が見事に咲き誇る園庭が有名な幼稚園。この時期だけは土日に限り、一般に開放しているのだ。
園はおろか、地域住民に是非にと請われたのだった。
「桜の下で小さい子たちと遊びたかったなぁ」
チェギョンは実につまらなそうに、そう言った。。
「おい、ちゃんと公務をしてくれよ、妃宮」
呆れたように言ったシンの口元には、微かな笑みがあった。
「でもさぁ、折角なら楽しいほうが良いでしょう?」
そう言って首を傾げたチェギョンの鼻は、微かに赤くなっていた。
「…一体いつから、ここにいた?」
シンは、その長い腕でチェギョンの肩を引き寄せた。
「ん~、どの位かな」
素直にチェギョンがシンに頬を寄せた。
「まぁ、いい」
シンはチェギョンの髪に優しく口付けると、すっかりその体を胸の中に閉じ込めたのだった。
静かな東宮には、雨音だけが響いていたのだった。