雲上楼閣 砂造宮殿

気ままに自分勝手なブログ。徒然に書いたり、暇潰してみたり、創作してみたり・・・

暇潰し090823_2

2009-08-23 18:49:40 | 夏空(完)
東京テレポート駅着、10時45分。ホームには溢れんばかりの人がいた。
「凄い人だね」
アヤははぐれないように哲の腕にしがみつきながらそう言った。
「夏休みも残りわずかだからなぁ」
そう言いながら哲は迷わず、エレベーターの右列に並んだ。
アヤの腕をほどいて、軽くステップを踏み、上へ上へと行ってしまう。
遠くなる哲の背中を見ながら、追うのはそろそろ無理かも知れないと、アヤは思った。


改札を出て、人の流れに沿って歩いていく。
交差点を渡って、工事現場らしい白い塀の影をわざと歩いた。
久しぶりのデートだからと頑張った、真っ白なマキシ丈のワンピ-スの裾が足に絡み付く。8月の太陽は容赦無くアヤの肩を焼いた。
何より、アスファルトの照り返しのせいで、サンダルの素足が痛かった。
けれど、哲はずっとガンダムがいかに大きいか、凄いかを話している。
興奮した子どものように、大きな身振り手振りで、休み無く話し続ける。
アヤは哲の話に曖昧に頷くのが精一杯で、人の群れとなって歩いて行くことにしか、注意がいかなかった。
だから、哲がいつもより喋ることに気付いていなかった。
ガンダムは海岸沿いの公園の中の広場にあった。かなりの大きさなのに会場近くまで来ないと見えないのは、木々の中にあるからなのか、アヤに興味が無いからなのかは分からなかった。
公園の突き当たり、海はすぐそこと言う場所で、沢山の人たちがカメラを構えていた。
「後ろだけど、記念に撮ろうアヤ、笑って!」
そう言われ、アヤは笑った。
「可愛く撮ってね」
とか言って笑った。

暇潰し090823_1

2009-08-23 17:21:19 | 夏空(完)
1ヶ月振りのデートなのに、アヤの心は沈んでいた。
「お台場にガンダムを見に行こう」
そう言われ、いつもなら喜んで哲の趣味に付き合うけれど、今回は違った。
付き合って3年。
そろそろ30に手が届きそうな年だ。
結婚の話が出てもおかしくない。第一、会わないこの1ヶ月に色々あった。
メールや電話で話せないことがあったのだ。
だが、楽しそうにガンダムの話をする哲を見ていたら、なんだか、気が引けた。
だから、現実を話すことに気が引けた。
だから、アヤはさっきから流れる窓の外ばかりを眺めていた。