見上げた空は澄んでいて、白い雲が気持ち良さそうに流れていく。
時おり吹く風は心地よく、少し長めの前髪を揺らした。
汗ばみ始める季節に、シンはいつもの非常階段で、空を見上げていた。
傍らには、この世で唯一親しい女性、ミン・ヒョリン。
シンにすれば、さして気を使わず、同じ感性で、何を言わずとも察してくれるヒョリンは、一緒にいて楽しかった。
だから今日とて、無言でここにいるのだ。
「なぁ、ヒョリン?」
「…なぁに?」
空を見上げたままのシンが、続けた。
「永遠て、信じるか?」
「え?」
思わずシンを見上げたヒョリンに気付かぬまま、さらにこう言った。
「永遠何てものを人が望むのは、どんな時なんだろうな?」
ヒョリンは、思わず唇を食んだのだった。
韓国芸術高校。
国内の優秀な芸術家の卵が集まるこの学校に、三年前、稀有な存在が入学した。
それは、皇太子の肩書きを持つ少年イ・シン。
何のいたずらか、彼はこの学校で3人の悪友と少しだけ特別な存在の少女を得たのだった。