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チェギョンはそんなシンを見ると、一瞬きょとんとしてから優しい笑みを浮かべた。
「あの夏は特にそう感じたのよ」
フフフとチェギョンの忍び笑いが風に乗ってシンの耳に届いた。
「実は悪阻が一番、酷かったの」
「そうなのか?」
「そうなのよ」
チェギョンが杯を空にすると、今度はシンがそれを満たした。
「僕にはオンの時が一番酷そうに見えたが」
シンはその時のことを思い出した。
あの時のチェギョンは初めての妊娠で、悪阻だってもちろん初めてだ。
いつ、何が原因で吐き気が襲ってくるのか分からない。
風邪とは違う吐き気に、チェギョンはかなり戸惑っていたのだ。
「だってシン君、オンを身籠って、困っているみたいだった」
シンは驚いてチェギョンに向かって身を乗り出した。
「違う!本当に嬉しかった…」
チェギョンはシンと視線を合わせると、しっかりと頷いた。
「分かってる。初めてで、二人とも戸惑っていたのよ」
チェギョンが空になった杯を差し出した。シンがそれに視線を落としてから、再びチェギョンを見た。
「…早くは、ないか…?」
呆れ気味に響く声音に、チェギョンは瓶を取り上げた。
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