雲上楼閣 砂造宮殿

気ままに自分勝手なブログ。徒然に書いたり、暇潰してみたり、創作してみたり・・・

暇潰し090823_5

2011-01-23 21:55:12 | 夏空(完)
哲はガンダムを見上げながらチラリとアヤを盗み見る。
少し前から、アヤが自分といても余り笑わない事に気付いていた。
だから、哲は今日に賭けていた。
バッグの中には、ワイン色のビロードの箱がある。
中はもちろん、ペアリングだ。
それも、アヤが欲しがったブランドを、思いきって買った。
たった一言「結婚してください」と言うために。
だから、哲は敢えて、猛暑に込み合う等身大ガンダムの展示会場を選んだのだ。

自分を奮い立たせるために。
「ねぇ…」
「…何?」
哲がアヤを見ても、アヤは携帯電話のディスプレイから目を離さずに答えた。
「暑いね…」
アヤは訳が分からず、思わず哲を見上げた。
「…うん…」
アヤは、静かに携帯電話を閉じると、哲を見たまま、バッグに仕舞った。
「並び終えたら、アヤはどこに行きたい?」
アヤは目を瞬かせると、少し考える素振りを見せた。
「…ご飯…かな…」
哲は満面の笑みを浮かべた。
「うん。何が食べたい?」
普通の会話に普通のデートをして、プロポーズをするのが、哲の計画だった。

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