妄想ジャンキー。202x

人生はネタだらけ、と書き続けてはや20年以上が経ちました。

〈07夏、四万温泉バースデイ〉~旅~

2007-09-05 23:39:19 | ○07夏、四万温泉バースデイ
9月5日
7:00

気が付いたら寝ていた。
昨日は私一人でチャンネルを独占できるぞと張り切って、19時からひたすらにバラエティ番組をはしごした。
バカデミー賞、ロンドンハーツ、リンカーン、ぷっすま。
いつもならお父さんお母さんと一緒に笑うのだけれど、今日は私1人。
少し寂しくなるけれど、またバカ笑いをして吹き飛ばしていた。

昨夜激しく降った雨。
日向見温泉街は水の匂いが漂っていた。
朝食まではまだ時間があるので、風呂を浴びて散歩に出ることにする。
昨夜は暗闇でさらに「ヒル注意」の看板にびびった川の露天風呂へ行こうと思ったけれど、増水のため危険ということで宿併設の露天風呂へ。

それから摩耶の滝へ行くことにした。
『摩耶の滝1.5km』、少し早足なら朝食までに帰ってこれるだろう――と思ったが誤算だった。
15分くらい歩いて見つけた看板は『摩耶の滝1.3km』。
別にたらたら歩いていたわけでも寄り道をしていたわけでも、ましてや寝惚けていたわけでもない。
狭角のヘアピンカーブだったことからすれば、あれは直線距離で1.5kmだったのかもしれない。
見上げても緑の山肌にヘアピンカーブが続いている。
おまけにまたあるあの看板、『熊出没!気を付けて』。
朝だから熊も腹を空かしてるかもしれないチキンはもちろん引き返す。

県道と四万バイパスの交差点を渡った。
バイパスといっても中之条と奥四万湖をつなぐ道なので、車は殆んど通らない。
朝霧に霞む摩耶大橋から、奥四万トンネルを臨む。
行楽シーズンや連休ともなれば混み合って写真を撮る間もない場所だろうが、平日を狙って来てよかった。


8:00

いつものようにめざましテレビやとくだねを見ながらの部屋にて朝食。
散歩で腹が減った上に、採り立ての山菜おこわが美味しくてつい食べ過ぎてしまった。
まるで家にいるようである。
違うのは涼しくて雲が近いこと、清流の音、それから食事の準備も片付けをしなくてもいいという3点。
どこでもくつろぐというのは私の悪い癖の1つで、四万温泉でも然り、朝食を片付けにきた女将さんが部屋を出たとたん座布団を丸めて横になってしまった。
小倉アナや笠井アナの声が少しずつ遠ざかった。


10:00

チェックアウトは10時、二度寝から起きたのも10時。
つけっぱなしにしていたテレビは川合さんと戸部洋子。
「こたちょ……?」
慌てた。
寛ぎ過ぎた。
急いで準備をして、といっても一泊なので大して散らかってはいないが、フロントへ向かった。
「今は晴れてますが午後から大雨のようです。吾妻線は雨に弱いので、くれぐれも注意してくださいね」
女将さんとご主人の暖かい心遣い。
空は朝よりほんの少しだけ白を増していたが、太陽の日差しが新緑を透かしていた。

 

宿を出てまた歩きつつ、途中の奥四万ダム湖へ向かった。
ダムからの水鉄砲はチョロチョロとしているくせに、流れは激しかった。
昨日の雨はかなり激しく降っていたらしい、夜のうちに止んでくれて助かった。
しかし真下からダムを見上げると、なかなか圧巻の景色。
「今鉄砲きたら間違いなく流れる」
山の中に灰色が妙にマッチしている。
自然もすごいけど、人間もなかなかすごい。


11:00

また歩き出して新湯温泉街へ戻る。
途中すれちがった夫婦やカップルに写真を頼まれた。
人気の少ない道で誰かと話をすると、なんだか安心する。

温泉街は昨日と一緒だった。
レトロな街並みは、いとをかし。
きっとずいぶん昔からそこにあって、ずいぶん先も同じようにあるんだろう。
ピンボールも蕎麦屋も民芸品屋も積善館も。
歴史というのはこういうことなのかもしれない。



1人旅のコツは『約束は1本見送ってみる』。
というわけで中之条駅行きのバスを1本見送って、1時間の空き時間が出来た。
気ままにフララと。
この時間が大切なのだ。

旅の終わりはいつも喫茶店。
照明は暗めで、ドアベルが風情ある店がいい。
ケーキセットがあって、本棚がある。
あわよくばイケメン店員がいるといいが、今回の四万温泉中央通りに面する喫茶店は満点をつけたいくらいの店だった。
「ベイクドチーズケーキとアイスコーヒーのセットください」
四万川のせせらぎと店員さんと常連客のおしゃべりがメインのBGM。
オルゴールの音楽がゆったり流れる。
22年前の今日、この世に生んでくれた両親に深く感謝をしながら、チーズケーキをぱくり。
椎名桔平似マスターの私物なのか、色合い、厚みなど心地好く並んだ本の中からとりだしたのは『生協の白石さん』。
まだ時間はたっぷりある。
時計を外した。
和みの瞬間に時を忘れる。


12:00

宿の女将さんとご主人の優しさをムゲにしてはいけない、午後から豪雨だったと思い出し、外に出ると小雨が舞っていた。
空は実に律儀で、正午をまわったとたんに降り出したらしい。
といっても雨が降り出すとテンションがあがる低気圧女なので、逆に嬉しかった。
「自分ぬれてもカメラぬらすな」
お気に入りのスカイアンブレラを開けば、私の上にだけ青空が展がった。
雨の音に青い空、ここはどこだ?


月見橋は紅い。
紅と緑というのはどうしてこうまでもハマるのだろう。
温泉入り口はもう少し歩いた先だが、土産屋や宿が立ち並ぶ本格的な温泉街はこの月見橋から始まる。
いらっしゃいませ、どうぞお気をつけて、またお越しください。
威厳の紅とせせらぎの声が聴こえた気がしてボンヤリしていると、バスがすぐにきた。



14:00

山はどこも似ているようで違う。
季節、時間、東西、南北。
生命の息吹は必ずあるし、人の歴史も必ずある。
大学に入り飛び出したまさに大海の日本や中国で見た山を思い出した。
富士山、日本アルプス、霧島連峰、谷川岳、阿武隈高地、コンロン山脈。
いろんなとこでいろんな景色をみた。
いろんな人に出会って、いろんなことを考えた。
海山川の大自然だけではなく、普段の学生生活や地元の景色、全ての1つ1つが今を作っているのだと考えさせる。
きっと今の旅もその1つになるのだろうし、明日明後日来週来月の全ても、やがて今になる未来を作っていくのだと思う。
今を真剣に生きる――。
毎度忘れることをまた思い出す。


15:30

バスが中之条駅に着いた。
雨は勢いを増している。
途中の車窓に昨日行った四万歐穴があったが、昨日座っていた河原は水の底になっていた。

吾妻線に乗る。
単線なのでこの駅ですれちがう下り・長野原草津口行きを見送ってからの発車となった。
雨は激しく降ったり急にやんだりを繰り返していて、窓に斜線のトーンを描いている。
今昔の思い出がたっぷり詰まった上州も、これで暫しの別れ。

どこに何日間誰と行ったとかそんなことよりも、そこでどんなことを感じたかのほうが重要に感じる。
旅に出る前は何線に乗るとか、秘境とか、名湯とか、とかく名前に優先されがちだ。
実際飛び出してみればそううまくいくはずもない。
面白そうな連中を見つけてついていったこともあった。
立ち寄り湯にあった漫画に読みいりすぎたこともあった。
目的地にたどり着けなかったり、交通費が予定外に膨らむことだってある。
――でも反省はしない。
寄り道の中で大事なことを考えている。
それは楽しく、嬉しいことだった。
1人なら、急遽の変更が効いて特に誰かに気を使うこともないせいか、予定の目的地には結局行かなかったりルートを大きく外すということが出来る。
もしかしたらもっとたくさんの楽しさ嬉しさと出会えるかもしれない。
これだから1人旅はやめられない。

気ままに、フララと。
風にまかせて。
大事なことは終着駅の先にあって、そこで考える何か。
旅とはそういうものだ。
地元の散歩やバイト、残りわずかの学校生活も旅。
人生は旅。
「…往く川の流れは絶えずして、往き交ふ年もまた旅人なり…」
喉の奥のさらに奥、小さく呟いたときちょうど吾妻線は高崎駅に着いていた。

あとは高崎線に乗るだけ。
家に帰ろう。



――ひとには教えたくない温泉があります。
――大切な人に教えたい、私だけの四万。




☆Thanks!BGM☆

・Mr.Children『終わりなき旅』、『箒星』
・ケツメイシ『手紙~現在・過去・未来~』
・JUDY AND MARY『風に吹かれて』、『小さな頃から』
・YUKI『Walking on the skyline』
・PUFFY『Mother』
・19『果てのない道』、『大自然』
・四万川のせせらぎ

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