(くりはら田園鉄道が廃線になる直前に開催された朗読公演会のポスター)
昨日の午後、ノンビリとテレビを見ていたら「6月4日、林隆三さんが亡くなった」との報道。
「何、それ?!」
「そんなことはある筈がない! あんなに元気だったのに・・・。」
まったくもって認めがたい報道に、自分としては今も気持ちの整理がつかないでいる。
林さんとは『みやぎ夢大使』の会議が仙台で開催されたとき、東京に戻られるというので、JR仙台駅2階の居酒屋で席を隣にした。
宮澤賢治作品の朗読公演を行っているという林さんの話を受けて、賢治ファンとして『高原』という短詩を私がそらんじてからとても親しくお付き合いをさせていただくようになった。
以来、宮城県に来られた際にはお会いし、また『くりはら田園鉄道』(通称”くりでん”)が廃止される直前や、東日本大震災で甚大な被害を受けた東松島市民への応援朗読公演などに多大な協力をしていただいてきた。
そして公演後は、同席した他の方々とも飲食を共にしながらのなごやかな懇談となるのが常だった。
特に”くりでん”の時は、行政の支援を受けることなく個人が集合し実行委員会を組織したこともあいまって、それを意気に感じた林さんの公演は圧巻だった。
その時も同行された林隆三総合企画『カロゼロ』の浜田さんは、朗読公演・レポートで次のように記している。
以下は、カロゼロの公式サイトから転載させていただく。
*
宮城県栗原市公演:2007年3月25日(日)
宮城県の名山で知られる「栗駒山」の麓に拡がる田園都市・栗原市が今回の公演地だ。
以前、ブナの原生林の撮影で訪れたときの新緑の若葉の強烈な印象が鮮明に蘇る。
東北新幹線の「くりこま高原駅」で降りて、出迎えていただいた車でおよそ20分、春の気配が何処にも感じられない田園地帯を走って、公演会場に到着。地元の豊富な木材で建てられた「みちのく伝創館」の想像以上に大きな建物に圧倒されながら中に入る。
ジワジワと豊かな感情が全身に拡がってゆく。ちょうど、あの新緑のブナの森で体感した幸せな感覚に似ている。高い天井のゆったりとした広い空間に抱かた心地よさとでも言うのだろうか。
「伝創館」とつけたネーミングの由来を聞き忘れたが、地元の文化を尊重し育んで行こうとする強い意志を感じ、心地よい共感に興奮していたのかも知れない。
賢治の朗読公演の演目「虔十公園林」「鹿踊りのはじまり」にふさわしく、よく似合う会場に、心が踊る。
賢治先生のように、「ほほーっ」と叫びながら宙に舞いたい気分だ。
―地域住民の足として、また精神文化の象徴としても大きな役割をはたしてきた“くりはら田園鉄道(くりでん)“が、今年3月末をもって、開業以来86年の歴史に幕を下ろします。
“くりでん”の新たな旅立ちと地域の未来に思いを馳せながら、「人と自然の共生」、「科学と芸術」の融合を目指した宮澤賢治の童話の世界を、皆さんとともに楽しみたい と思います 。―
この朗読公演の発起人であり実行委員会の中心的メンバーの一人・高橋幸夫氏は、主催者の心情をこのように書いてくれました。
―たとえ廃止になったとしても「銀河鉄道」ではありませんが、「くりでん」を地域の人々の心に長く留めおきたいとの思いを強くし、またその象徴として、並木街道を作り上げていこうと提案もしているところです。
このことから、“虔十”の心に共感していただける人を一人でも多く増やし、なんとか実現することができたらどんなに嬉しいことだろうと日々思っております。―
こうした高橋氏の想いが通じたのでしょう、演者と満席の聴衆が一体となって感動的な公演をつくりあげることが出来ました。
私たちは、いつも視聴者に育てていただいている―という自覚と感謝の気持ちを忘れないでいます。
この公演で改めて、その想いを強く体感することができました。 この公演の様子が、 5月13日(日)18:30~18:56テレビ朝日系列「おかえり」 で紹介される!
実は、以前から続いていた「グレートマザー物語」というテレビ番組が、今年の4月から改変され、「おかえり」という新番組でスタートしました。そこに林隆三が出演し、少年期から思春期に最も強い影響を受け、今も強く印象に残っている亡き母を語る、という構成になっています。
林は、朗読公演の「トーク」のところで、お母さんの印象深いエピソードを紹介し、みなさんに好評をいただいています。
とてもユニークで愉快なお母さんです。そうした公演の様子が同時に収録されました。番組の中で紹介されますので、ぜひご覧ください。
このようにテレビ番組の収録も加わった慌ただしい時間の中で、実行委員会の方々をはじめ、皆さんの用意周到な準備と見事なチームワークで、無事に終えることが出来ました。
やはり、「くりでん」への想いをそれぞれに抱きながら、ひとつの夢の実現に向かって自分のできることで参加して行く。
「くりでん」を映像に記録し続けているカメラマンの太田信明さん。「くりでん」への想いを~Windy train~という唄にして楽しんでいるアーティストの樋口了一さん。そんなユニークで面白い人たちが、共感のメッセージを送っている。
―私たちはこれから「未来永劫・持続可能な栗原市創り」のために「NPO法人・夢くりはら21」としての活動を開始いたします。―
後日届いたNPO法人代表理事・菅原敏元さんからの礼状には、力強くこう書かれていた。
*
林隆三さんとの思い出は数々ある。
お元気な顔に接することはもはやかなわなくなり残念至極だが、これまで親しくさせていただいたことに深く感謝している。
高原
宮澤賢治
海だべがど おら おもたれば
やつぱり光る山だたぢやい
ホウ
髪毛(かみけ) 風吹けば
鹿(しし)踊りだぢやい
▲『イーハトーブ花巻』ポスター(花巻市産業観光課)を撮影したもの
※林隆三さんとの思い出(このブログ内での関係部分)
●林隆三と楽しむ賢治童話の世界(2012.07.08 東松島市) ⇒ こちら
●林隆三さんと宮澤賢治童話の世界、そして『グスコーブドリの伝記』⇒ こちら
●貞山運河と海岸防潮林、そして北上川河畔の植立山 ⇒ こちら
●野蒜築港跡を回ってきた ⇒ こちら
●林隆三さんの舞台あいさつ~映画『エクレール-お菓子放浪記』⇒こちら
●林隆三・仙台フィルのコンサートに ⇒ こちら
●林隆三主演映画『竹山ひとり旅』を鑑賞する ⇒ こちら
●仙台ニュージーランド協会のビアパーティで林隆三さんに会う ⇒ こちら
●感動!!林隆三さん、宮澤賢治生誕110年祭で朗読 ⇒ こちら
●大好評だった『林隆三と楽しむ宮澤賢治童話の世界』(2007.03.25 栗原市栗駒でくりでん廃線直前に開催)⇒ こちら
●能島和明画伯の作品と林隆三さん&仙フィルコンサート~感動の一日を過ごす ⇒ こちら
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