(くりでん:くりはら田園鉄道)
ラジオを聴きながら車を運転しているときに、流れてきた静かな歌があった。なんとも懐かしく、侘しい気持ちがこみ上げてきた。そして、疲れた体を畳に投げ出し寝ていたわが兄の姿が浮かんできた。
兄は中学卒業後すぐに集団就職列車で埼玉に行ったが、会社が倒産し、郷里に一時帰って来たのだった。当時、東北新幹線などがあるはずも無い。上野から東北本線で石越駅まではいわゆる鈍行の旅、さらに栗原電鉄(今年3月末に廃止された“くりはら田園鉄道”の前身)とバスを乗り継ぎ約2時間。まったくもって丸 一日を要する帰郷であったはず。
田舎暮らしで都会など知らない、そんな少年が郷里を遠く離れ、鋳物工場で黙々と働く。帰る部屋は数人同居。心休まる日は一日としてなかったに違いない。
やっとたどり着いた故郷の家も、古びた畳それだからこそ安らげる場となったのであっただろう。一方、自分たちも苦労続きであった父母のわが子の寝姿を見る 気持ちは、いかばかりものであったろうか。郷里から100キロにも満たない仙台で日を送っていた私が帰ったときでさえ、すまなさそうにしていた両親なのだ から。
「旅の終わりに聞く歌は」・・・、田端義男さんの歌。
この歌を聞き、とてもまっすぐ帰宅する気にはなれず、そのままTレンタルショップへ。探して探して見つからず。それでも諦めることができずに、コーナーを回ること四度。そして、一番端しに隠れるようにあったCDをやっと見つけた。
11月には高校の同窓会が東京の上野公園の近くで開かれる。その際には、今は東京足立区に暮らすわが兄に、この歌を届けに行こう。
旅の終わりに聞く歌は
作詞・作曲:比嘉栄昇 編曲:若草恵
夕焼け空に聞く歌は
水筒抱えて待つ母の歌
あぁ幼い稼ぎじゃ暮らし変わらぬのに
涙ぐんで何度もご苦労様と
一番風呂の熱さ嬉しさ
船の汽笛に聞く歌は
無邪気に手を振る妹の歌
あぁ遠ざかる故郷やがて星にとけて
初めて空に瞬く父に甘えた
小さなカバンに顔を埋めて
錆びたギターに聞く歌は
友の笑顔と愛し君の歌
あぁ賑わう工場が青春の学び舎
語り明かした夢は叶っただろうか
妻と訪ねた工場の跡地
旅の終わりに聞く歌を
人は探して人を愛して
あぁ命あればこそ変わり行く故郷も
歌が伝えるだろう誠の幸せ
空は夕焼け旅は終わらず
空は夕焼け旅は終わらず
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