アブリル - どこにでもあり、どこにもない

岡崎平野を中心とする 植物 と カメラの対話

ノアザミ - 筒状花の頭花

2024-05-18 15:00:00 | みんなの花図鑑


どこにでもあるノアザミです。ノアザミはキク科の花です。
キク科の花には特徴があって(サクラやウメは周囲が花弁、中心にシベがありますが) 頭花がたくさんの小花の集合で出来ています。サクラやウメでは、つぼみのとき花弁や蕊の赤ちゃんを覆っている器官を萼といいますが、キク科の花ではたくさんの小花の赤ちゃんをまとめて(じて)んでいる器官を総苞 と呼んでいます。
ただキク科といっても3つのタイプ(亜科)があって、ノアザミはアザミ亜科の花なのですが・・・


アザミ亜科の特徴を説明する前に、一番種類が多いキク亜科から説明しますと・・・

キク科の3つの亜科のうち、いちばん多いのはこのキク亜科の花です。
上にいくつかキク亜科の花を示しました。キク亜科の頭花の特徴は中心に筒状花といってシベの目立つ小花の集合があり、周囲に花弁の目立つ舌状花という小花の集合で出来ているということです。




それに対し、アザミ亜科の花は頭花のすべてが筒状花だけで構成されているという特徴があります。


ですから、アザミの花には周囲の花弁のようなひらひらした部分がないので、このような花瓶のような恰好をしています。




第3のタイプ:タンポポ亜科
頭花のすべてが筒状花だけでできている花があるなら、頭花のすべてが舌状花で出来た花もありそうと想像ができます。

タンポポ亜科の花は頭花のすべてが舌状花で出来ています。舌状花は花弁の1枚が肥大化した花です。これが周囲だけでなく中央付近からも花弁が伸びているのです。






たくさんある小花はひとつひとつが独立した花冠をもっています。花冠の先は星形に裂けて開いています。





そして花冠の中から黒っぽいマッチ棒のような器官が伸びています。これが雄しべが合着して出来た雄しべ筒で、中には花粉が入っています。






花冠の中から雄しべ筒が伸びているところを拡大してみています。雄しべ筒の先端に白い部分がありますがこれが花粉です。この花粉を雄しべ筒の中に入っているめしべ棒が上へ伸びるときに外へ押し出すのです。



花粉を押し上げた めしべ棒(雌しべの花柱)はやがて成熟して先端を2つに割り柱頭(受粉器官)を開きます。






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ジャーマンアイリス - ブラシがポイント

2024-05-17 15:00:00 | みんなの花図鑑

この花はアヤメ属のジャーマンアイリスです。



なぜかというと外花被片の弁元にブラシのような白い毛が付いているからです。




ちょっと紛らわしいのはブラシ状の毛の周囲にアヤメの花に付いている網目文様(いわゆる文目紋)があります。でも「アヤメ紋があるからアヤメではないか」と心配する必要はありません。
アヤメにアヤメ紋はありますが、ブラシのような毛は付いていないからです。




結論:ブラシのような毛が付いているのはジャーマンアイリスだけです。
 アヤメ紋があろうとなかろうとブラシが付いていればジャーマンアイリスと覚えましょう!(^^)!
 いっそ「ブラシアイリス」と呼んでやりましょうか (^_-)-☆



〔参考〕ナンキンアヤメ(小さなジャーマンアイリス)
北アメリカ原産で、日本に大正時代に入ってきて野生化したナンキンコアヤメ(またはナンキンアヤメ)というアヤメ属にも、同じようなブラシ状の毛が付いています。そのことからナンキンコアヤメはジャーマンアイリスの仲間で、アヤメの仲間ではないと思われます。(「ナンキン」は小さいものに付けられた昔の日本風の言い方です。昔はハツカネズミのことを南京鼠と表現したりもしたそうです。南京から来たという意味ではないのです)

ドワーフ・アイリス Iris pumila (アヤメ科アヤメ属)






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センダン - もう季節なのですね

2024-05-16 15:00:00 | みんなの花図鑑



ブログで皆さんがセンダンの花をアップされるので、もうそんな季節なんだ!と、5月12日(日曜日)風の強い曇り空の中、在りかを知ってる近くのセンダンの木を巡ってきました。







センダンの木はみな背が高く、単焦点レンズでは届きません。コンデジの望遠側で撮ってますが、風が強くブレまくり(ToT)





以下は 過年度5月14日 快晴の日に同じカメラで撮ったもの




「花弁は(中略)表が白色、裏が薄紫色で、10個ある雄しべは濃紫色をしている。花は美しさが感じられ、アゲハチョウ類がよく訪れる。なお、南方熊楠が死の直前に「紫の花が見える」と言ったのはセンダンのことだったと言われている。」(wiki 「センダン」)




秋にはこんな実をつけます。
(愛知県祖父江町 2021-11-28)


〔追記〕センダンの原産地はヒマラヤ山麓のようですが、Wikipediaによりますと分布は「中国・台湾・朝鮮半島南部および日本などの乾燥した熱帯から温帯域」となっています。
Reikoさんから「ポルトガルの南で見て」とのコメントいただき、思い出しました。
私は シリアのアレッポ城で この木に実がなっているのを見たことがあります。


アレッポ城はシリア内戦で政府軍によって破壊されましたので、このセンダンの木も今はもうないかもしれません。

三河の植物観察さんによるとセンダン属は
「世界に3種があり、熱帯のアフリカ南部、熱帯から温帯アジアに分布する。
【センダン属の種】
 Melia azedarach L. センダン
 Melia dubia Cav. アジア南部
 Melia volkensii Gürke アフリカ東部


」とのことです。





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ユキノシタ - ユキノシタ科

2024-05-15 15:00:00 | みんなの花図鑑
(▲ 見出し画像は 下に出て来る画像のホソヒラタアブの部分だけトリミングしたもの)

ユキノシタといえばユキノシタ科の植物ですが、逆にユキノシタ科の植物はというと従来の体系(新エングラー体系)ではアジサイ、ウツギ、ウメバチソウなどもユキノシタ科に含まれていて、たとえばユキノシタとアジサイとどのような共通性があるのかよく分からないものになっていました。
遺伝子解析の手法を取り入れた新しい植物分類体系(APG体系)ではアジサイ、ウツギ、ウメバチソウといった植物が全く別の植物の科であるアジサイ科やニシキギ科に分類されるなど、大幅な科の再定義がありました。



ユキノシタの花は5枚の花弁を持っていますが、そのうちの上方に位置する3枚の花弁は有色で、下方の2枚は白く長くなっています。


萼片は5個で長さは2~5㍉、花茎や萼片には腺毛が密生します。








黄色の花盤の表面に蜜腺があり、そこから蜜が分泌されます。




黄色いリング状の花盤の外側からおしべが10本のびています。
おしべのさきに葯(花粉を入れた袋)があります。
こちらのおしべの葯はこれから花粉を出すところのようです。



いっぽう、こちらの花では 花盤の中から出ている雌しべが2つに分かれ、先端の柱頭(花粉受粉部)を膨らませています。
ユキノシタは雄しべが先行して活動し、雄しべの花粉放出が終わるころ雌しべが熟す「雌性先熟型」の花のようです。






めしべは2本ですが、その2本に10本あるおしべが交代で近づき、虫が蜜を吸おうと未成熟の雌しべに止まると近くに来ていたおしべの花粉が虫の体に付くという仕掛けになっているようです。(そよ風の中で Part2「ユキノシタの花」)






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バラ科~アカネ科~ガマズミ科

2024-05-14 15:00:00 | みんなの花図鑑
今日は白い花弁の花を集めてみました。
すべて安城デンパークで最近(この2週間のうちに)撮ったものばかりです。


オステオメレス




こちらは安城デンパーク・彩の花木園のオステオメレスです。
(このあと、もうひとつのオステオメレスをアップします)
樹名板があるのですが、それには 「オステオメレス」としか書いてありません。
オステオメレス(Osteomeles)は属名で そのあとの sp. は 「species」の略で、全体で「Osteomeles属の一種」という意味になります。
属名は、ギリシャ語のosteon(=骨)とmelon(=リンゴ)の合成語で、骨質の果実の状態から。(GKZ植物事典より)







次に出て来る もうひとつのオステオメレスに比べて背が高く、花付きが非常に良いです。





オステオメレス・シュウェリナエ


もう一つのオステオメレスは種小名があります。
種小名は schwerinae で(シュウェリナエ)とか(シュウリナエ)と読んでいるようです。





和名は「シセンテンノウメ(四川天の梅)」というらしく、ネット上の記事はこちらのほうが多くあります。
「名前の由来は 小さなウメの花が満天の星みたいであることから来ています。
ウメの花に似た小さな可愛い花が 鳥の羽のような葉をつけて天高く舞い上がるがごとくです。」(living for today...on the earth ! 「満天の星のようなウメ シセンテンノウメ!」)




アメリカテマリシモツケ



アメリカテマリシモツケは、バラ科テマリシモツケ属の落葉低木で、晩春にテマリのような小さな密集した花を咲かせます。





樹名板が見当たらなかったのですが、品種は「サマー・ワイン」かな?




いや、「ディアボロ(Diabolo)」かな??
どちらにしても紅色の葯が可愛いです。






オオミサンザシ




バラ科サンザシ属の落葉低木。
サンザシより実が大きいことから「オオミサンザシ(大実山査子)」。






「原植物のうち,サンザシ(中国名:野山査)は高さ2メートルほどの落葉低木で,オオミサンザシ(中国名:山査)は高さ8メートルほどになる落葉高木です。(中略)サンザシの実が食されるようになった背景には,油を多量に食用する中国の食生活が影響していたのかも知れません。」(ウチダ和漢薬「生薬の玉手箱 No.125」)








ハクチョウゲ



アカネ科のハクチョウゲ(白丁花)の桃花種です。
和名は「その花が丁字型の白い花を付けるところから」(wiki「ハクチョウゲ」)






ハクチョウゲは雌雄異株で、上は雄しべばかりが伸びている花ですので雄株のようです。


参考までに 雌花です ▼









ゴマギ




ゴマギは学名を Viburnum sieboldii といい、ガマズミ属(ビブルヌム)の落葉高木です。(ガマズミは落葉低木)
種小名の「 sieboldii」は江戸時代に長崎出島のオランダ商館に滞在し植物標本を多数海外に掃海したドイツの医師・博物学者シーボルト氏(Philipp Franz Balthasar von Siebold)に由来します。(かぎけん花図鑑より)











ヤブデマリ



ヤブデマリもガマズミ属の落葉低木です。
さっきから 「ガマズミ属」とだけ言って科名を言ってませんが、ガマズミ属はいろいろな科に分類された経緯があるのです。(★)
(★) 最新のAPG体系ではガマズミ科 (Viburnaceae) に分類される。ガマズミ科が2017年に採択される以前の古いAPG体系ではレンプクソウ科 (Adoxaceae) 、クロンキスト体系や新エングラー体系ではスイカズラ科 (Caprifoliaceae) に分類されることもある。(wiki 「ガマズミ」の注)





「水平に伸びた枝に上向きに花序を並べて白い花をつける。花序は1対の葉の間から出た散房花序で、やや黄色を帯びた小さな両性花が集まる花序のまわりに、白色の大きな5枚の花弁の広がった装飾花が縁どる。装飾花は(中略)無性花で花弁だけが広がったものだが、その5枚のうち1枚が極端に小さくユニークな形であり、他の似た種との区別がしやすい。」(wiki「ヤブデマリ」)





ガクウツギ




上のヤブデマリとよく似ている花序だと思いませんか?!
なのに、名前も属もヤブデマリとは関連のないものになっています。
まぁ、葉っぱをみればガマズミ属でないことは明らかで、確かにウツギの葉に似ていますけど(^^)/
ガクウツギはアジサイ科(★)アジサイ属の落葉低木。
(★)最新の植物分類体系であるAPG体系や、それ以前のクロンキスト体系ではアジサイ科(Hydrangeaceae)であるが、古い新エングラー体系ではユキノシタ科(Saxifragaceae)に分類されている。






「アジサイのように萼片が大きくなるが3つの萼片の大きさが異なるのが特徴。」(wiki 「ガクウツギ」)







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