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第3435号 津本 陽『無量の光 親鸞聖人の生涯』(上下、文芸春秋)

2009-12-28 16:37:46 | 映画・読書
津本 陽『無量の光 親鸞聖人の生涯』(上下、文芸春秋。写真)を読みました。

私は、この年まで宗教的な問題にはあまり関心もなく、仏教に関しても初歩的な知識しかありません。
介護問題の実相や政治の変動を見聞した今年は、年末になって、
社会の大きな流れと個々の人間の一生をつなぐものという意味合いで宗教への関心が沸いていました。
『無量の光』(上・下)は、上下646ページの長い本ですが、期待にたがわず、読みやすく、それでいて胸を打つシーンも多いです。
*以下、「上」は上巻の、「下」は下巻の、それぞれのページ数を示します。

【その思想】
いわゆる「他力本願」であり、「悪人正機説」です。
上236 荷物を牛に負わせれば自分は軽くなる・・とのたとえ
上286 説教はうまかったようだ。(聴衆が親鸞の話を聞いてすすり泣く場面)
上233 学問はいらない。むしろ信心には害のようだ。
上194 順源 上254 奥太夫 下138 弁円 などの出会いの場面
下56 大変な勉強家であり、読書も好きだった。

【重なる現代】
親鸞がいきていた時代は、庶民・農民は苦しい生活を強いられていた。
現代の経済的な難局にいきる人々と中世とが二重写しになっています。
鎌倉時代の政治の動向も、平成の現代と変わることはないですね。
上218, 219,222

【歴史の証明】
親鸞の師である法然、親鸞を再発見した蓮如が物語の要所に登場します。
優れた思想がその時代には排斥されても、後世、その価値が改めて見つけられる・・といった大きな歴史の流れを基調に書いています。
上274, 282 流派を組むことを避けている。(集団内の争いを避けようとする姿勢)
下305 妻の恵信尼だけは親鸞が後世見出されることを確信していた。

【人間親鸞】
偉大な宗教家ではあるが、自分の欲望と戦い、一派をなすことを戒めて一生を生きた親鸞ですが、妻である恵信尼との信頼に満ちた生活、
晩年における善鸞(長男)との葛藤など、人間としての素顔をも描いています。
最終章「魚に与うべし」は死体を川へ投げ捨てよとの親鸞の意志をあらわしています。
下71 人を助けようとすることをも「欲」と自覚した。
下301 残された家族の生活面での心配を信徒に託している

【懐かしい場所】
親鸞が動いた場所は、北陸であり、関東ですが、輪島・七尾・岩瀬(上p.207)や下巻の利根川あたりの場面では、
私が幼い頃、そして働き盛りに過ごした地域でもあり、懐かしかった。


津本 陽『無量の光』 文芸春秋
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