すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー攻守4局面】いまや「0局」の時代に突入している?

2023-07-02 07:00:27 | サッカー戦術論
現代サッカーは保持・非保持に関係なく常にボールに関わる

 例によってサッカー・サイトを散歩していたら、すごい珍説にめぐり合った。

 ケルン体育大学サッカー専門科を経てアナリストの庄司悟氏による言説だ。それは以下の通りである。

『現代サッカーは、ボール保持・ネガティブトランジション・ボール非保持・ポジティブトランジションという「4局」の循環ではなく、ボール保持・非保持にかかわらず常にボールに対して能動的かつ組織的に動く「0局」の時代に入り始めている(図2)。

「ハードワーク」「切り替えの速さ」「ハイテンポ・ハイライン・ハイプレス」という現象を、単なる汗かき仕事のように分類し、とらえる時代はもはや過ぎ去っているのだ』(『マリノスとFC東京に共通する「0局」の概念。4局面では説明できない現象とは【Jの十字架】』フットボールチャンネル)より

 サッカーを「0局」なるユニークな視点で論説しておられる。

 まず庄司氏のおっしゃる「ボール保持・非保持にかかわらず常にボールに対して能動的かつ組織的に動く」のは、いうまでもなく現代サッカーでは常識だ。

 それを言葉で言い表せば「ハードワーク」「切り替えの速さ」「ハイテンポ・ハイライン・ハイプレス」などとなる。そしてこれらの行為を「単なる汗かき仕事のように分類」し、とらえている人は今でもけっこういる。

 しかし逆に「汗かき仕事だ」と思ってない、「それが普通だ」という人だって多い。単に「汗かき仕事だ」と思っている人がいるからといって、現状を「0局」と言ってしまうのは違う気がする。

 あえて4局面に引き付けていえば、確かに60年代とか大昔のサッカーは、攻撃の選手がボールに関わるのは「ポジティブトランジションとボール保持の間だけ」だった。それ以外の時間はウインガーとかCFは、ピッチをのんびり歩いてボールのゆくえをただ眺めていた。

 だが、いまは4局面すべてでプレイヤ―がボールに関わるのは常識だ。「ネガティブトランジション」時にボールを取り戻そうとしたり、カバーシャドウで敵のパスコースになりうるルートを切るのは当たり前だ。また「ボール非保持」時にボールに対しプレスしないなんてありえない。

 そんなことは4局面があろうとなかろうと関係ない。

 いまや4局面の有無にかかわらず、現代のセントラルMFはボックス・トゥ・ボックスで活動するし、それ以外の選手もボールに対してハードワークする。ただそれだけのことだ。

 そもそも4局面というのは、あくまでサッカーの試合におけるプレーの変遷・移行を言葉で示しただけのものだ。特に「ボールとの関係」をどうこう言ってるわけじゃない。

 それなのに「今のサッカーは常にボールに関わるのだから『0局』だ」などと言い始めるから、おかしくなるのだ。

 おそらくだが、4局面を庄司氏は「ボールとの相関関係」か何かだと誤解されているのだと思う。

 いや、「ボール非保持のときもやるのが当たり前だからハードワークじゃない」といえば、それはその通りなのだが。

 しかしそのことと4局面なる表現の「存在価値」とは関係ないし、「0局」などと言ってしまうとプレーの遷移が言い表せなくなる。単に不便だろう。

 だって「素早いポジティブトランジションからのショートカウンター」という表現って、「切り替えが速かったんだなぁ」ってアリアリと目に見えるようじゃありませんか?

 アナリストにとっては「0局」でも、言葉をあやつる表現者にとってこういう表現をできなくなるのは致命的なのだ。

【補稿】

 例えば「素速いポジティブ・トランジションからのショートカウンター」という言葉がある。

 これは、ボールを奪ってからダラダラとバックパスしたり、ボールを受けられる位置に素早く移動せずのんびり歩いていたりするのでなく、「切り替え速くカウンターを打った」ということを「ひとこと」であらわしている。

 それを上記のように長くだらだら説明するのでなく、「たったひとこと」で言いあらわすには「素速いポジティブ・トランジションからのショートカウンター」という表現以外にないのだ。

 ゆえに表現者にとって、4局面の遷移をあらわす言葉は必要なのである。

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