メカニック日記

メカニックです。仕事ネタから感じた事思った事など気まぐれに更新していきます…

リフトアクスルトレーラー…EBSコントローラー交換。

2016-09-30 23:29:41 | トレーラー
リフトアクスル機構付きのタンクトレーラー…



トレーラーのリフトアクスルはこのブログでも何度か記事にしてるので説明は省きますが…


通常、走行時にはリフトアクスルの制御は自動にしておくもので、自動にしておくと空荷の時はアクスルが自動でリフトアップされます…
タンクトレーラーで言えば荷は液体が多く、積込み時にタンクの中に液体が充填されていきます。

で、先ほどのリフトアクスル制御が自動であれば荷を積んでいき、一定の重量になると軸が自動で下がるんです。

今回のトレーラーは荷を積込んでいく段階で本来なら下がるはずの軸が下がらない…という症状。
リフト制御を下降にすれば軸は強制的に下がるので走行には支障もありません…


実は半年ほど前に修理の依頼があり、トラブルシュートまで終わって見積りを出していたんですが…
なかなか予定が合わず半年経ってようやく入庫です。


このリフトアクスル車両にはリフトアップしない…という症状も多いんですが、今回のようにリフトダウンしない…という症状もたまにあります。
まあ、意外と壊れるという事ですね…笑


リフトアクスルは仕様や年式にもよりますが、トレーラーのリフトアクスル制御をEBSコントローラーで行うタイプと、ECASというコンピュータで行うタイプがあります。

今回はEBSコントローラーで制御するタイプで…
軸を下げるかどうかの判断はEBSコントローラー内のコンピュータが判断してるんですが、先ほど重量で判断してる…と言いましたが、コンピュータは実際には重量をモニターしてる訳では無く、エアサスのベローズの圧力をモニターしており…

3軸中2軸がリフトされていて荷を積んでいくと設置してる軸のベローズに荷重がかかるので当然ベローズの圧力は高くなります…
ベローズの経年劣化を除けば、その圧力と荷重は比例するので間接的に重量を計ってる事にはなるんですが。

で、半年前のトラブルシュート時はベローズの実圧力とEBSコンピュータが示す圧力が異なっていたんです…つまり圧力センサーの不良。

ただ、問題なのはこの圧力センサーはEBSコントローラー内のコンピュータ基盤に直接組み込まれている為、単品での供給が無いんです。
なのでEBSコントローラーASSYでの交換になってしまいます。


EBSコントローラーと言っても実はABSの制御も行っていてモジュレータ類が一体式になっているのでコレがまたビックリするぐらい高額…

ただ、ASSYでの交換しか方法が無いのでお客様は泣く泣く交換を依頼されます…



EBSコントローラー交換の為取り外し。


取り外したEBSコントローラー


各部のコネクター類を付け替えて車両に組み付け。


取り付けた新品のコントローラーには各種パラメータの設定が必要なので専用PCを接続して設定していきます。




専用インターフェイスで接続。


各種パラメータの設定と動作テストなどを行い…






最終確認でベローズの圧力とコンピュータ上の数字が合っている事を確認して完了です。



で、その後取り外したEBSコントローラーからコンピュータ基盤を取り外し、基盤に取り付けられているベローズ圧力センサーを調べてみると…


2つ付いていて抵抗を調べてみると1つは問題無さそう…
他にもブレーキチャンバー用の圧力センサーなどもハンダ吸い取り機で上手くセンサーだけを取り外せば再利用も可能かも知れませんね…

取り外した正常なセンサーを在庫しておいて、今後センサー不良のコントローラーに移植出来るような修理方法も確立出来ないかな…と考えてるんですが、その為にはもちろん移植後のテストや互換性や耐久性のデータも取らないといけないので時間はかかりそうですが、とりあえず以前取り外したEBSコントローラーがもう1台あるので色々と試してみます…


こればっかは試してみないと分からない事も多いですからね…


コメント (2)

フォワード…噴射ポンプ交換。

2016-09-24 19:06:38 | いすゞ
KL-FSR33フォワード。

排ガス規制ギリギリの列型噴射ポンプのフォワードです…

走行中に突然エンジンが止まって再始動不可能に…その後何度かセルを回していると始動出来た…との事。

今現在はエンジンの始動も吹け上がりも全く問題無く、試運転しても不具合は出ません…
燃料のエア噛みも無さそうです。
噴射機構は機械式なので現在は全く問題無い事を考えるとメカニカルな不具合では無いかと…
ガバナーやタイマーは電子制御なのでその辺りの不具合の可能性が高そうです…

ただ、電子ガバナーやタイマーは単体での供給はありませんのでASSY交換となってしまいます。


お客様には現状の説明をして、このまま少し様子を見るか噴射ポンプを交換するか…の返事待ちだったんですが…



噴射ポンプを交換する事に。


エンジンは6HH1で6気筒…
この噴射ポンプがめちゃくちゃ高いんです。
新品だとポンプだけで100万するので…

車の年式から考えて新品はもったいないので、今回はリビルト噴射ポンプにて対応。

リビルトとはいえ、値段は60万〜となっています。
リビルト品は中古部品をオーバーホールして新品同様の性能まで復活させた物で、コア…と呼ばれる外した部品を返却する事で新品に比べコストを抑えているんですが、その返却したコアの状態にリビルト品として致命的なダメージがあると追加料金が発生する事もあるんです…
なので値段も60万〜となっています。


周辺部品を取り外して…




機械式なので噴射時期の合いマークを合わせて本体の取り外し。


コレも結構な重量物なので天井クレーンにて吊り上げ…




リビルト噴射ポンプ…


再度吊り上げて組み付け。




あとは外した部品を組み付けて燃料フィルターを交換して完了。




交換後のエンジンも特に不具合も無く…
というか交換前から不調は感じられなかったので修理した感はまるでありませんが…

納車して完了。



お次はレンジャー。

2年前に交換したEGRバルブがまたもやご臨終なので交換…




原因はカーボンの蓄積による固着…




新品のEGRバルブ。





このEGRバルブも形状が変更されてますね…









最後にEGRバルブが正常に始動するかの確認をして終了です。




更に今度はジムニーのリフレッシュ整備の見積り…

オーナーさんはここで奮起して長年乗ってきたジムニーのフルリフレッシュをするかどうか考えてるようで…


軽自動車なのに本格的なラダーフレーム構造はオフロードの走破性も高くいまだに根強い人気車種ですね…




走行9万キロで水漏れやオイル漏れも見受けられます…




トランスファーからもオイル漏れ。



オーナーさんは全塗装も視野に入れているそうで…鈑金塗装屋さんにも見積りを依頼。

リフレッシュはその車をもっと永く乗りたい…と思うオーナーさんの覚悟や愛があっての作業なんですよね…
理想が幾つかあっても実際には金額が予算オーバーだと泣く泣く手放すケースも多々あります。

なので個人的には先にオーナさんの予算を提示して貰うようにしてます。
その限られた予算の中でできる限りのリフレッシュを行うような見積りを出させてもらいます…

やっぱり"一車好き"としてはその車に永く乗りたいと思う気持ちを汲んで、なんとかしてあげたいと思うんですよね…





コメント

4JG2…O/H。その4

2016-09-17 00:00:26 | いすゞ
前回の続きですが…

他の仕事の段取りもあり、基本的にこの4JG2の作業はかかりっきりにはなれず、飛び飛びになるのでなかなか進みません…




まずはタフトライド処理されたクランクシャフトの被膜点検。
タフトライドとは表面硬化処理の一種で耐摩耗性などの向上やカジリ防止効果もあるそうで…
過去にレース用のエンジンにタフトライド加工してるケースは見た事ありますが…

金属の表面にタフトライド層という被膜を形成するんですがその被膜を点検しなさいよ…と整備書に記載されてます。
ちなみにタフトライド処理がされてる為、クランクシャフトのラッピングは不可となってます。

で、この被膜を点検する為に塩化銅アンモニウム溶水という化学薬品が必要なんですが…
この塩化銅アンモニウムは劇物に指定されている薬品なので簡単には買えませんし取り扱いにも注意が必要です。
ただ、点検する為の塩化銅アンモニウムは希釈水で5〜10%ほどに薄めて使用するんですが、自分では作れないのでコレも指定の濃度で製作してもらいます…

その塩化銅アンモニウム溶水をクランクシャフトに垂らして被膜を点検。




この状態で30秒程待って色が変化しなければクランクシャフトは再使用出来ます。

色も変色しないので…
クランクシャフトは各部の径も含め問題無く再使用出来そうです。

で、クランクメタルも再使用は可能でしたがこの際だから交換する事になり…
ブロックとクランクシャフトに打刻してあるグレードからメタルのサイズを選定します。

全部1なのでブロック側は誤差が無い…という事。

クランクシャフトにも…










No.5ジャーナルだけ3。
このブロックとクランクシャフトの打刻を見て5種類あるサイズからベストなものをチョイス。
先に頼んであったので部品はもう来てます。




組み付け準備に入ります。
まずは先にタペットとカムシャフトを取り付け。



整備書にはタペット下面は球面になってると書いてありましたが届いた新品は目視では分からない程でした。


それに変わり旧品は…

やっぱりタペットも減ってたんですね…
画像だと分かりづらいかも知れませんがW字に摩耗してます。


タペットを取り付けて…


カムシャフトを挿入。


カムシャフトが抜け落ちないように適当な対策をして…



腰下の組み付けに入ります。
新品メタルを指定の場所に…





クランクシャフトを組み込み…


オイルクリアランスの測定の為、
プラスチゲージを全ジャーナルに。




キャップを取り付けて規定トルクで締め付け…



オイルクリアランスの測定…




1番広い所で…つまりクリアランスが1番狭い所で測ります。


全て基準値内に収まり良好です。
ゲージをキレイに除去して本締め…






エンドプレーの測定も…
0.1mmで問題無し。





そしてエンジン屋さんから戻ってきたシリンダーヘッド…


歪みがかなり酷かったそうで…
基準値ギリギリまで削っても完全には歪みは取れなかったそうです…
結果的に0.25mm研磨しましたが…

過去にオーバーヒートした可能性が高いですね…
というより良くヘッドガスケット飛ばなかったなぁ…
いや飛んでたのかも…⁉︎


水圧検査の結果は合格だったんですが…
歪みが酷かった事もあり、念入りにヘッドを点検してたら…




げ…

1番と4番のバルブシート間にクラック入ってる…

マジか…

でもこれ…

今回の不調で入ったクラックじゃない可能性が高いんですよね…


ただ、このクラックを見ちゃうと交換した方がいい事は百も承知なんですが…
ヘッド交換となると金額が…

とりあえずお客様に現状の説明をする事にしますが…




エンジンの作業をしてるとこういう想定外の事はよくありますが、ここに来てのこのアクシデントは…


正直、胃が痛いっす…





コメント (2)

4JG2…O/H その3。

2016-09-15 01:18:06 | いすゞ
放ったらかしにされていたカンカンエルフの4JG2…

他の仕事がひと段落したので再開…


見積りはもう終わってある程度部品も揃っているので、作業を進めていきます。

と、言ってもまだバラし途中ですが。




クランクシャフトも取り外し。




メタルの当たり具合は良好ですね…
再利用も可能です。



まずはクランクシャフトの点検…
Vブロックにメタルとクランクシャフトを乗せて曲がりの点検。






結果、振れが0.02mmで問題無し…
ジャーナル径も全箇所基準値内で合格。

更にこのクランクシャフトはタフトライド処理がされてるらしく外したついでに被膜点検を行うんですが、点検用の薬品がまだ来てないのでそれは後日点検します。


で、前から気にしていたライナーの取り外し…
持っているシリンダーライナープーラーが使えなかったのでどうしようか色々と考えてたんですが…
純正SSTでアンクルだけ部品が出て在庫もあったので注文してたんです。
コレ…


ただ、これは専用のプーラーに取り付けて使うアンクルなので当工場が持ってる汎用のプーラーには使用出来ないので、アダプターを製作して対応する事に。
知り合いのいる金属加工会社に頼んで作ってもらったブロック…


フライス盤でものの10分で作ってくれました。
さすがプロは仕事が速いですねぇ…

そしてその横で旋盤を借りてライナーを圧入する時のプレス用治具を製作…
ついでにカムメタル用の治具も。




仕上げが荒いでしょ?
素人が削るとこんなもんですよ…笑
でもサイズはピッタリなので良しとします。
やっぱ旋盤はイイですねぇ…
SSTを製作するのには必需品です…

うちも旋盤欲しいなぁ…


で、会社に戻り先ほど削ってもらったブロックにナットを溶接して持ってるライナープーラーに取り付けれる様にします。


ナットを溶接。


こんな感じで汎用プーラーに取り付けて…


更にアンクルを取り付け。


コレでプーラーが使用出来ます…


さすがアンクルは純正なので食い付きもバッチリですね…笑
メチャクチャ固いですが順調に抜けてきます。





4本抜くだけなのに汗だくですよ…
ライナー抜くのも完全な重労働です。


特に固かった2番は見ただけで固かったのが分かるでしょ⁉︎ 笑



ライナーも抜けたのでとりあえずホッとしました。


次はカムメタルの打ち替え。
旋盤でカムメタル用の治具を作ったんですが実はコレも純正SSTの在庫があり、値段も7千円と安かったので頼んであったんです…



1度エンジンスタンドからエンジンを降ろしカムメタルの交換。


リヤ側のタイトプラグも外してカムメタルの取り外し。







取り外したカムメタル…


新品のカムメタル…


当たり面をキレイに掃除して打ち込み。
オイルポートがあるので打ち込む向きや位置が決まってます。




穴の位置が合ってるかミラーで確認。



前後共打ち込んで…


タイトプラグを付ける前にカムシャフトが無理なく回るかを確認します。
新品のカムシャフト…


挿入して…




抵抗無く回るかの確認。
当たり前の事ですがこの作業は絶対必要です…
この手のメタルは非常にデリケートなので打ち込む段階で変形しちゃうこともありますから。

スコッチブライトなどでメタル表面を軽く馴染ませておくといいですね…

カムシャフトが問題無く回ればタイトプラグの取り付け。



そして液体窒素が到着…

今回は15リッター頼んだのでマホー瓶もデカイ…笑

何に使うか?というとライナーの挿入。
整備書だとプレスで圧入となってるんですが…
このクソ重たいブロックをプレスで作業するのは危険なので冷却圧入する事にしたんです。

で、ひとつ懸念してたのがこの4JG2のシリンダーライナーは内側に特殊クロムメッキ加工がされてるらしく…液体窒素で冷やしても悪影響はないのか⁇…という事。

付き合いのあるメッキ屋さんに聞いても『特に問題は無いと思うよ〜』との事なので、それを信じて冷間圧入する事にしたんです…

ライナーも選定してありそれぞれサイズが違うので入れる場所を間違えないようにしておきます…


ブロック側もキレイにしておきます…



そして容器に液体窒素を入れてライナーをキンキンに冷やします…





こっからは写真撮ってる余裕はありませんので、いきなり挿入後の画像です…笑


製作した治具でキチンと入ってるかを確認…


俺のスナップオンが…笑



落ち着いてきたらライナーの突き出し量の確認。
基準は0.0〜0.1mmとなっており、結果は全気筒共0.0mmで合格。





更にシリンダーの内径を測定。
シリンダーゲージをセッティングする為にまずはマイクロゲージのセッティング。


マイクロゲージがセットできたらシリンダーゲージのセッティング…
この0点調整は非常に重要で、0.001mm単位での測定になるので基準となる0点のセッティングが合ってないと話になりませんから…
まあこのアナログ式のダイヤルゲージだと実際には目視で0.005mm位まで…頑張って0.0025mmまでが限界ですが。





ほとんどのエンジンで内径測定はシリンダー毎で3箇所2方向以上での測定が指定されてると思います…

指定の深さにマーキング。
見難いですがピンクの点がそうです。


測定…


基準は95.421mm〜95.460mmとなっており、測定の結果全ての測定ポイントで95.420〜95.435mmに収まっておりましたので…
お世辞にも精度の良いいとは言えない いすゞエンジンにしては上出来だと思います…笑


とりあえずクランクメタルの選定が遅れたせいで部品がまだ無いのでブロック側は一旦ストップして、ヘッドの作業をする事に…
ヘッドは水圧と研磨をエンジン屋さんにお願いするのでバルブ関係を取り外したところで本日は終了…





続きはまた明日です。









コメント

発電機…水漏れ修理。

2016-09-10 23:45:08 | 整備
Denyoのエンジン発電機。

使用中に突然エンジンが止まり中を見たら冷却水が入って無かった…という事で持ち込まれたんですが…

圧力テストの結果、ウォーターポンプから漏れがあり…


とりあえず、水漏れを修理してからじゃないとエンジンの吹き返しは判定出来ないので了解を得て先に水廻りの修理を行います。

本体の外装カバーを取り外し…


冷却水を抜くと…


茶色くなってかなり汚れております…

更に、アッパーホース、ロアホース、ファンやらラジエターも取り外し…



アッパーホースを外す時に見たくない光景が…


冷却系統で錆が発生しているようです。
これも冷却水を定期交換してないので錆が発生するんです…

エンジンに使われてる冷却水はクーラントとも言いますが、その名の通りエンジンを冷却する為のもので、寒冷地や一部メーカーを除き普通の水道水でクーラント原液を30%位の濃度に薄めて使用してるんです。

本来エンジンを冷却するだけなら水だけの方が冷却性能はいいんですが…
そこにクーラントを混ぜる理由はエンジン各部で使用されている金属部に錆を発生させない為や冬季の凍結を防ぐ為なんです。

で、このクーラントも当然、使用状態や経年変化で性能が落ちてくるので定期的な交換が必要なんです。
今ではLLC(Long Life Coolant)と言って交換サイクルが5年以上のタイプも珍しくありませんが、それでも車検毎には濃度計を使用してクーラントの濃度を調べるのが理想です。

当然ですが、冷却水が減るから…といって水だけを補充すればクーラント濃度はどんどん薄くなっていきます。
一時的には問題ありませんが錆びやすくなる事に変わりはありません。

鉄などの金属にとって1番の大敵が錆…なんです。

錆が進行すると表面から腐食が始まり、侵食され強度が落ちてやがて折れます…

今回の発電機のウォーターパイプもこんな事に…


取り外してキレイにしてよく調べてみると…


時すでに遅し…
穴が空いちゃってます。
こうなると再利用は不可能です。
急いで追加注文…


他にもサーモスタットやウォーターポンプも交換します。











お客様のご要望でこの機会に他の部分のメンテナンスもお願いします…との事だったのでオイル関係も交換です。






入庫した時点でラジエターキャップの開弁圧力が低いけどこんなもんかぁ⁉︎…と思ってたんですが。
これがもともと付いてたキャップで開弁圧力は50kPa…
(ちなみにラジエーターキャップの圧力標準単位はkgf/cm2です)


ところが届いた新品キャップは90kPa…


メーカーに問い合わせるとこのエンジンは90kPaが正規の圧力です…と

という事は…

どこかの誰かさんが『このキャップが使えるぜぇ…』ってな感じで取り付けたんでしょうか…

コレも今回の水漏れの原因の1つでしょうかね。

また難しい話になってしまいますが…
このラジエターキャップも付けばイイってもんでもないんですよ…

ラジエターキャップには必ず開弁圧力が設定されてます。
スプリングのレートが違うだけではありますが、その違いはエンジンの冷却性能を大きく左右するほどで…
通常は100kPa前後が多いんですが…

このエンジンの冷却系統は密閉加圧タイプと呼ばれるタイプで…
通常、水は100℃になると沸騰しますが、密閉された冷却水がエンジンの熱により圧力が高くなると沸点が上がり100℃を超えても沸騰しなくなります。
今回の90kPaのキャップの場合、冷却水の沸点は約120℃ぐらいまで上昇するんです。
その沸点上昇を利用して冷却効率を上げてるんですが…
その冷却系統の圧力をラジエターキャップにより調整してる訳です…

エンジンには想定された適正水温がありますのでサーモスタットやラジエターキャップ、更にはラジエターなども当然それに準じたものになります。
話が逸れますが…
過去にラジエターの開発テストの現場を見たことがありますが、シャシダイ上でエンジンやラジエター周辺に数十個の水温センサーやノイズセンサーなどが取り付けられているのを見た事があり、ラジエター1つとっても物凄いテストが繰り返されてるんだな…と実感した事があります。

話を戻して…
その圧力をコントロールしているラジエターキャップの開弁圧力が規定の90kPaではなく50kPaになると、当然圧力は上がらずリザーバ側にどんどん冷却水は流れてしまいます…
そうなると冷却効率も落ち水温が上がる…という悪循環に。

そのうえ、定期的に冷却水を交換してない…となるとやっぱり根本の原因はヒューマンエラーという事になります。
間違ったラジエターキャップを取り付けた人間しかり…
車に限らず機械はやっぱり定期的なメンテナンスが1番重要ですが、それを行うか行わないかは人間の判断ですからねぇ…


長くなりましたが…


後で追加注文したパイプ以外を組み付けてひとまず部品待ちです…










後は週明けに追加注文したウォーターパイプを取り付けて吹き返しの点検です。
コメント (1)

車検…車検…車検。

2016-09-08 23:31:08 | 整備
最近は車検の入庫台数が例年より多く…完全に工場の処理能力を超えてます。

毎日車検…車検…車検…って感じで…
先月も残業時間がとんでもない事に。

まあ残業代はちゃんと払ってもらえるので何も文句はありませんが…笑



まずはクオンの車検で…燃料フィルターを交換してエア抜きの段階でプライミングポンプが御臨終…
汲んでも汲んでもいっこうに燃料が来ない…


なので交換。
このクオンはプライミングポンプだけ出ませんのでハウジングごとになります…


新品のハウジング…
見た目は高そうですが値段は6千円と以外と良心的です…



取り付けてポンピング。


無事燃料も汲めるようになりました…



アドブルーフィルターも車検毎に必ず交換…


プレフィルターも忘れずに…




お次はトレーラー。
BPWの3軸車両…
ハブをバラすと…


残量も少ないしSカムもかなり立ち気味…




残量は…

3.7mm。

残量だけで見れば車検には受かりますがカムの立ち具合も含め判断すると要交換です。

BPWのブレーキシュー交換は非常にシンプルで簡単。








取り外したシュー。


新品のシュー。


取り付けて完了…
アンカーピンのCリングは基本的には同時交換品となってますが、当工場では悪く無ければ再利用してます…




他にも4軸プロフィアのスタビリンカーB/Cの交換など…




更に空いた時間に発電機の水漏れの点検…
冷却系統に規定圧力をかけて特定します。







結果はウォーターポンプからの漏れでした。
見積りと並行して部品の注文を…



おまけに以前の記事に書いたカンカンエルフの4JG2…見積りを出してたんですが…こちらもO.Kが出た為部品を発注…
結果的にフルオーバーホールする事に。

という事で…


SSTが必要なので…

作るか買うか…

まあ納期は決まってないのでコツコツ作業する事にします。
コメント

2年目…

2016-09-04 01:57:41 | 整備
早いものでこのブログも2年目に入りました…1年経つのは本当に早いですね…

先日、ブログを始めて1年が経ちました…という内容のメールが来たんですが…

基本的には愚痴と偏った整備内容で構成されている当ブログですが…
最近では見てくれている方も増え、いい加減な事は書けないなぁ…と改めて思っております…(今までいい加減に書いてた訳ではありません…笑)

まあこれからもこんな感じで整備ネタや愚痴をマイペースに続けていこうと思っております…

が、そんな話はどうでもいいとして…いつも通りの整備ネタを。




車はスバルのヴィヴィオ…

タイミングベルトの交換で入庫です。


走行距離は98000km

タイミングベルトはエンジンのピストンの動きに対してバルブの開閉タイミングを決める部品なんですが、ベルト…という名からも想像できる通りゴムで出来ており、10万キロ毎の定期交換部品なんです。

当然ゴムなので…
そんなの関係ねぇ…とメンテナンスを怠るといつかは切れます…
ちなみにタイベルが切れると高額修理となるので交換時期は守りましょうね…
外車なんかは10万キロ待たずに切れる事例を過去に何度も経験しております…

が、ひと昔前はベルト式の車も多かったんですが、最近の車は金属製のチェーン式が主流になってます。
ベルト式が主流になる前の世代のエンジンもチェーンを採用してたんですが、チェーンの騒音や材質や強度などで課題があり、多くのメーカーはコストが低く構造の簡単なベルト式を採用した…という事をメーカーの方から聞いた事があります。

最近では技術も格段に上がりチェーンでも静かなエンジンを作る事が可能になり今は殆どがチェーン式なので定期的な交換は必要ありません。

もちろんチェーン式でも定期交換は必要無いとはいえエンジンオイル関係のメンテナンスは必須です…



で、タイミングカバーを取り外すとタイミングベルトがお目見え。


このベルトにある山でカムとクランクの位置関係がズレないようになってます。

テンショナーを緩め、ベルトを取り外し。



で、業者によってはベルトだけ替えてオッケーにする所も少なくないんですが…
今回の車のようにタイミングベルトを外さないと交換出来ない部品(ウォーターポンプやシール関係)は漏れてなくても同時に交換するのが理想です。

何故かというと…ウォーターポンプやオイルシールは経年劣化で漏れを起こすんですが、仮にタイミングベルト交換時に漏れがなくても交換後、数ヶ月〜数年で漏れる…という事がよくあるんです。
仮にウォーターポンプやシールを交換するとタイミングベルト交換と同じ工賃がかかりますから…
なのでそういうトラブルの芽は事前に対処しておいた方がいいんです。




ウォーターポンプ取り外し。





カムとクランクのスプロケットも取り外すと…
クランクのシールが抜けかけてる…




シールを取り外して…


新品のシールを取り付け。


コレが本来の位置です。


カムシールも挿入。


ウォーターポンプやテンショナーを取り付けて新しいベルトを組み付けます。
当然ですが…カムとクランクの位置関係が1コマでもズレるとエンジンかからないか、かかっても絶不調になります…
最悪の場合ピストンとバルブが接触する事もあります。


このベルトもオイルや水分が付着しないよう細心の注意を…
付着するとベルトの耐久性に悪影響です。
タイミングカバーや外した補機類を取り付けてタイミングベルトは完了。



次はタペットカバーからオイルの漏れがあったのでパッキンを交換しようとカバーを外すと…











見なかったことにしようかな…



今回はオーナーさんが自らまだまだ乗りたいから…とタイミングベルトの交換を依頼してきたんですが…

正直…このエンジン内部の状態を先に知っていたらタイミングベルトの交換はオススメしなかったと思います。

この状態では20万キロまでエンジンが持つかどうか…

まだまだ乗りたい…と思うんだったらもうちょっと車の事も気遣ってあげないと…

ひとまずパッキンを交換して修理は一応完了。


とりあえずオーナーさんには軽く説教です。




そして使用中にエンジンが止まった…というdenyoの発電機…どうやら水漏れがあるようです…


現在はエンジンも普通にかかるので…まずは水漏れを修理してから吹き返しの点検です。




2気筒ディーゼルエンジンで発電モーターを回す仕組みです…

発電機は専門外ですが…車に載っているか発電機に載っているかの違いだけで造りは同じエンジンなので…

何とかなるでしょう…








コメント (3)