のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

ジイジと北斗7(新スケール号の冒険)

2021-03-11 | 物語 のしてんてんのうた

(7)

「博士、ここが本当にのぞみ赤ちゃんの体の中なのでヤすか・・・」もこりんがスケール号の窓から外を見ています。

「美しいダすなあ、あれが銀河ダすかね。色鉛筆の中にいるみたいダすなぁ。」もこりんも枕を抱えたまま、眠るのも忘れています。

「ここがのぞみ赤ちゃんの中だなんて信じられませんね。」ぴょんたもうっとりしています。

「あの銀河は間違いなくのぞみ赤ちゃんの中にある宇宙の姿なのだよ。光っているのはみな原子と呼ばれるものなのだ。」

博士が白く光る河を指さしながら言いました。宇宙空間に色とりどりの光が無数に集まっていてそれが白い光の河に見えているのです。

「体がこんな宇宙でできているなんて不思議ダすな。。。」

「博士、原子というのは太陽なんでヤすか。」

「そうだね。でも大きさが違うのだ。みんなが知っている太陽の大きさは、あの原子の太陽に比べると何倍大きいかわかるかな?」

博士は皆を見まわして言いました。ぴょんたが真っ先に手を上げました。

「博士、きっと一万倍はあると思います。」

「ハハハ、それではのぞみ赤ちゃんの大きさにもならないぞ。」

「きっと十万倍だと思うダす。」

「そうだね、実は君たちの知っている言葉ではとても言い表せないんだよ。」

「博士、それはずるいでヤすよ。」

「ごめんごめん。でも覚えておいで。ぴょんたが言った一万というのは1の次に0を四つつけた数字なのは分かるね。ぐうすかの言った10万というのは0が五つだ。」

「博士、分かったでヤス。」

「何だねもこりん。」

「だからぁ、十倍ごとに0が一つ増えていくんでヤすね。」

「おお、大正解だ!!すごいぞもこりん。十だったら0が一つ。百だったら2つだね。」

もこりんは大喜びです。

「それで答えなのだがね、聞きたいかい?」

「聞きたいでヤす。」

「もちろん聞きたいダすよ。」

「教えてください、博士。」

「いいかい、君たちの知っている太陽の大きさはね、1の次に0が22個も付く大きさなのだよ。もこりん、あの原子の星を十倍10倍と22回繰り返したらやっと太陽の大きさになるということだ。わかるかな?」

「何が何だか、想像つかないでヤす。」

「親子ダすなぁ・・・むにゃむにゃ」

ぐうすかはもう眠ってしまっています。どうやらぐうすかの頭はむつかしい話を睡眠薬と勘違するのかもしれません。でもぐうすかは博士の話を夢の中で聞いています。現実と同じ夢を見ているのです。不思議ですね。

「スケール号がそんなところに飛んでいけるのはすごいって、今思いました。博士。」ぴょんたがまじめな顔をして言いました。

「そうだね。スケール号がなかったら、のぞみ赤ちゃんの身体の宇宙をこんなふうに眺めることなんてできないからね。」

「すごいでヤす!スケール号。」

「ゴロにゃーンにゃん」スケール号が嬉しそうに返事をしました。

****************

「食事の用意ができたでヤすよ。」白いコック帽をかぶったもこりんが大声を上げました。

もこりんはスケール号のコックさんです。食卓の上には白いお皿とコップが並んでいます。お皿の上にはパンが一つとチーズが乗っていました。コップにはミルクが入っています。そして特別メニューがほ乳瓶に入ったミルクでした。もちろん艦長用の食事です。

「あれ、今日はパンだけダすか。」食いしん坊のぐうすかがちょっと不満そうです。

「まあ、それは食べてからのお楽しみでヤす。」コックのもこりんがニヤニヤしています。

「何か仕掛けがあるのかな。」ぴょんたがパンをひっくり返してみましたが普通のパンです。

「みんな今日はありがとう。艦長の世話も増えたが、よくやってくれたね。これからが大変だが、今のうちにしっかり食事をしておこう。」

 

スケール号がのぞみ赤ちゃんの額から、皮膚を通り。細胞の隙間をすり抜けて、骨の迷路のような空間を駆け抜けました。突然開けた場所を見て皆はびっくり仰天です。突然スケール号が緑のアメーバーに襲われたのです。

博士の指示で艦長がスケール号を操り、ようやくアメーバーから逃げ出せたと思うと、チカチカ光る枝が無数に広がる森の中に迷い込みました。右へ左へ、スケール号は休む間もありません。

枝から枝へ行ったり来たりしながら、それでもどんどん奥に向かって進んで、やっとの思いで赤い丘の上にたどり着きました。

それで終わりかと思ったら博士が言いました。

「さあみんな、やっと入り口にやって来たぞ。」

ええっ!!みんなが叫んだのは言うまでもありません。博士はこの中にのぞみ赤ちゃんの歴史があるというのです。

赤い丘に立ったままスケール号が原子の大きさにまで小さくなると、赤い丘に凸凹が現れ視界一杯に広がって霧になり、やがて突然現れた原子宇宙の光景に心を奪われたのはつい先ほどのことでした。

そんな大変な仕事をこなした後の食事会ですから、きっとごちそうに違いないとぐうすかが期待したのも無理はありません。それがパンひとつだったものですからぐうすかのがっかりした様子は気の毒なほどでした。皆でいただきますと手を合わせて食べ始めるまでの、ほんの数分前までは。

 

「わーなんダすかこれ!すごいダす!おいしいダす!」まずぐうすかがびっくりして言いました。

「カレーパンだ!ありがとうもこりん。」ぴょんたは一口噛んだパンを見て言いました。

パンの中からとろりとした琥珀のルーがお肉の塊に絡みついて覗いています。

「私もこんなおいしいカレーパンは初めてだよ。」博士は一気に三口も食べました。

「どうでヤスかぐうすか。何か文句でも?」もこりんが胸を張って言いました。

「ないダす、ないダす。もこりんさま。」ぐうすかはパンを食べ終わるとミルクを飲み干しました。チーズは最後のお楽しみのようです。

「むギャーふぎゃー」

「艦長が目を覚ましたようだ。」博士が立ち上がりました。

「ミルクあげるでヤすよ。」もこりんは急いでパンを口に押し込み、ほ乳瓶を持って艦長のそばに行きました。

「頼むよもこりん。」そう言って博士は艦長をもこりんのひざの上に載せました。

皆が艦長の周りに集まってきました。元気に飲んでくれるかな? ぴょんたは心配そうです。

北斗艦長はまだ眠そうに目を半分閉じていましたが、もこりんがほ乳瓶を口元に持っていくと、ぐいぐい飲み始めました。

****************

 

「みんなこれを見てくれないか。」

そう言って博士が大きなスクリーンを指さしました。そこにはたくさんの星が映し出されている光景でした。

「何でやスか?」

「これはのぞみ赤ちゃんの身体を原子で表したものだ。のぞみ赤ちゃんの身体をスケール号が調べてくれたのだ。そのおかげですべての原子の位置が表せるようになったのだよ。」

「たくさんの星があるのダすな。吸い込まれそうダす。」

「しかしこれがすべてではないんだ。いいかい、驚かないでくれよ。」

スクリーンが縦横に広がり、天井がプラネタリウムになり、そのまま床も半円のスクリーンになったのです。全天球のプラネタリウムに原子の星が隙間なくまたたいています。

「怖いでヤす」もこりんが隣のぴょんたの袖をにぎりました。

「でもきれいです。宝石箱の中にいるようですね。」

全員が宇宙の真ん中に投げ出されて、浮かんでいるように見えるのです。頭の上も足の下も、どちらを向いても原子の星が思い思いの色をして光っています。

「この中に金色の星があるはずなのだ。」

「金色ダすか?」

「無理でヤすよ、どこを見ているかも分からないし、見ているだけで目がちかちかして、それに広すぎるでヤす。」

「金色の星って何なのですか。」

「みんなあの紋章を覚えているかな?」

博士が操縦席の壁にライトを当てて言いました。そこには太陽をかたどったオレンジ色のメダルがかかっていました。

「あれは太陽の紋章でヤす。」もこりんが得意そうに言いました。

「スケール号が太陽の王様からもらったものダす。」

「そうそう、スケール号はあの紋章を口に入れてもらったけれど、熱くって舌を大やけどしました。大変だったのを思い出しましたよ。」

「ゴロんにゃーん」スケール号も話に加わってきました。

「あの紋章は太陽族のしるしなのだよ。紋章が光り始めるとね、オレンジ色から黄金なって輝くんだ。王様のしるしなんだ。この原子宇宙にも紋章の輝いている王様がいるはずなのだよ。」

「王様ダすか、よーし探し出すダよ。」

「みんなで分担しよう。もこりんは下、ぐうすかは上、ぴょんたが右、私が左を探そう。」

****************

「もうだめダす。」

皆が目をこらして金色の星を探して、いましたが、真っ先にぐうすかが根を上げました。似た色の星はいくつも見つかりましたが、博士は首を横に振るばかりだったのです。

「無理でヤすよ。みんな金色に見えるでヤす。」もこりんも根を上げて、とうとう床に寝転がってしまいました。

「はぶはぶ・・はふぃー」そのとき艦長の声が聞こえました。

「おおそうか、ぐうすかの足元だね。」博士が艦長のほっぺを包むように手を当てて言いました。

「博士、なんて言ったのですか?」

「ぐうすかの足の下だそうだ。」

「ええっ、ここダすか?」

ぐうすかが足をどけると、その下に金色の星が見えました。光の中心から出ている幾筋もの光芒が金色に見えるのです。

「この星ダすか。」

「間違いない。これが原子の星の王様だ。艦長、よく見つけたね。」

博士は艦長の小さな手をしっかり握って言いました。

「この星をどうするのダすか?博士。」

「会いに行くのだよ。きっと何かを知っているだろう。宇宙語が聞こえない理由をね。」

「はふばぶ」

揺りかごの中で艦長が声を上げました。それを聞いた博士が大きくうなずきました。

「艦長も知りたいんだね。行こうか、王様のところへ。」

「はふはふばぶ―」

「スクリーンの金色の星を強く心に思い描くだけでいい。それでスケール号に伝わるんだ。艦長なら出来るよ。」

「バブばぶ、あふー」

艦長が握りこぶしを振り上げてスケール号に命令を出しました。

「ゴロニャーン」

その一瞬、スケール号の姿が闇に溶けるように消えたのです。

 


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