能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

経営の力と伴走支援 対話と傾聴が組織を変える・・・元中小企業庁長官が現場でのコンサルティングに有効なノウハウを公開

2024年05月26日 | マネジメント

380万社あると言われている日本の会社・・・そのうち97%が中小企業、零細企業と言われています。

労働者の7割が中小企業、零細企業で働いています。

日本経済の活力である中小企業・・・国も補助金や各種施策で支援、サポートしています。

が、単にカネを出すことだけだと経営革新、経営改善に繋がらないことが多々あります。

そこで、現在、経済産業省や中小企業庁で推奨、推進している「伴走型支援」。

元中小企業庁長官が自らの現場体験の中から導き出した経営コンサルティング手法に関する書籍を出しました。

役人、官僚とは思えない、現場指向、実務志向の著者に驚かされました。

経営の力と伴走支援 対話と傾聴が組織を変える

角野然生著  光文社新書  860円+税

 

著者の角野さんは元中小企業庁長官。

福島県の中小企業の再生、復興のため、官民合同チームを作ったりアフターケアしたりした方です。

福島県のプロジェクトも紹介されており、現場の泥臭いリアルなシーンには臨場感があります。

 

目次

第1章 復興の現場から

第2章 対話と傾聴

第3章 潜在力を引き出すメカニズム

第4章 伴走支援の全国展開

第5章 地域再生と伴走支援

第6章 企業と人の潜在力を引き出す社会へ

 

著者は「伴走支援」について、「企業経営者と外部の支援者が信頼関係の下で対話を行うことを通じ、経営者が本質的な経営課題に気づき、意欲を高めて会社の自己変革などに取り組むことにより、組織が本来持っている潜在的な力を発揮させていく一連の営みのプロセス」と定義しています。

中心となる手法は、対話と傾聴。

OD(組織開発)の手法も有効であると指摘します。

上から目線ではなく、対等な立場で「気づき」を引き出す努力を継続していくことが重要であるとします。

中小企業の社長は、創業者や現場叩き上げの方が多く、理論や横文字を嫌う方が多いです。

単なる経営診断や経営指導といった上から目線は、まっぴらと言う方も多々います。

そんな中で、対話と傾聴で伴走支援していくという手法は有効だと思います。

経営者は本当に孤独・・・本音で語ることが出来る相手もいないのが現状です。

時間と手間はかかりますが、この手法は、企業組織が変わっていく経緯を体感することが出来ます。

中小企業診断士として、これからも「伴走型支援」に特化した動きを強化していこうと思います。


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闘うCFO 金庫番から改革の最前線へ 日経ビジネス誌の特集・・・未来志向のCFOが求められている時代

2024年05月16日 | マネジメント

最近の大手企業人事でCFO(最高財務責任者)の社長、CEO(最高経営責任者)に就任する事例が増えています。

ソニー、オリンパス、NEC、第一三共、ミネベア、マネックス、ニコン・・・。

グローバル化、スピード化という経営環境の中、数字に強く経営感覚が鋭い経理財務のスペシャリストが求められているということだと思います。

 

かつて、財務担当役員や経理担当役員は、数字屋、金庫番として社長の影武者として、地道に地味に仕事をしていました。

それが、高度化するファイナンス、経営戦略の中でCFO(最高財務責任者)にスポットライトが当たってきたということだと思います。

日経ビジネス2024.5.13号の特集は「闘うCFO 金庫番から改革の最前線へ」。

なかなか面白い記事でした。

 

Contents

Part1 アクティビストを味方につけろ PBRからESGまで「市場との対話」手厚く

Part2 人材育成と戦略浸透の一石二鳥 CFO機能強化に3つの処方箋

Part3 もう「数字屋の上がりポジション」ではない CFOからトップ就任当たり前の時代に

 

CFO(最高財務責任者)になるためには、高度な専門知識と数々の修羅場経験が必要だと言われています。

CFO育成は、長い時間が必要です。

計画的なキャリア形成、自己啓発、社外での教育や経験などが求められます。

同特集では、CFO育成に向けて社内の仕組みを作っているNEC、グリーなどのケースを取り上げています。

中でも、FP&A(ファイナンシャルプランニング&アナリシス)という役職を設け、事業会社CEO、CFOに財務会計情報、経営分析情報などをリアルタイムで伝え報告するという業務をこなします。

このFP&Aから将来のCFOを出していこうという仕組みです。

これからのCFOは、財務会計の専門家、最高責任者というだけではなく、先を見た経営感覚、経営戦略策定、ストーリーを語れる、プレゼンがうまい、未来志向などが求められると同誌は指摘します。

同誌編集長は、CFOのFは「フューチャー(未来)」であると述べます。

そのとおりだと思います。

現在、経理財務や金融の仕事をしている若い人たちは、FP&AやCFOを目指すと明るい未来をゲットできる可能性が高いと思います。

帳簿や財務諸表に精通しているだけではなく、「闘うCFO」「未来志向のCFO」が求められている時代だと思います。


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MBAでおさらい、総復習・・・経営、マネジメントについて英語で学び直しています(笑)今まで学んできた経営学を再整理しようと思います

2024年05月05日 | マネジメント

中小企業診断士として経営の支援をさせていただいています。

中小企業、零細企業の社長さん、スタートアップ企業の若き創業者などと手をたずさえ伴走型のサポートをしています。

会社という装置は、残念なことに、何もしなければ、つぶれるように出来ています。

月初は固定費、変動費の大きなマイナスからスタートし、売上を上げながら損益分岐点をクリア、そこから利益が上がり始めます。

でも、そこには様々な障害やリスクがあり、順調に進むことの方が稀です。

資金繰りチェックや補助金獲得、販売促進やコストダウン、人手不足対応や労働時間規制対策などについて、知恵を出し合いながら、毎月毎月、山登りをしていかなければなりません。

 

このたび、会計士の友人から一冊の本を紹介されました。

なかなか面白い一冊です。

MBAイングリッシュ 経営学の基礎知識と英語を身につける(マネジメント・会計・マーケティング)

石井竜馬著  ベレ出版  2500円+税

帯には「北米トップスクールで学ぶ世界標準のMBAカリキュラムをベースに経営学の基礎知識と英単語を一緒に学べる一冊」とあります。

著者は、追手門大学教授で、ミシガン大学MBAホルダー。

MBA(Master of Business Administration)は、米国の経営大学院とのことで、経営幹部、管理者になるためのパスポートと言われています。

米国の若手社員は、一定の企業経験を積んだ後、MBAに入り、経営学修士号の学位を取得して、より良い待遇、処遇の会社に転職したり、起業したりします。

 

同書では、MBAの基礎知識であるマーケティング、アカウンティング、ファイナンス、組織管理論、生産管理、グローバルマネジメント、ビジネス倫理、経営学史などについて日本語と英語で解説していきます。

日本語の中に英単語が都度入ってくるという面白い解説です。

日本語を忘れつつある帰国子女のような表記、文体です(笑)。

でも、日本語で学ぶと難解なファイナンスやアカウンティングについては、英語付記の方が理解が早いことに気づきました。

さすがは、米国は経営の本家本元。

CAPMやベータ値、EPSやPER、ROEやROA・・・相互関係が分かりやすく解説されています。

MBAで使われる英語が日本語になっているんですね・・・当たり前ですが。

若い日に学んだNHKラジオ「英語ビジネスワールド」のMBAの教材を書棚の奥から引っ張り出してきました。

半年間にわたって、藤井正嗣講師とリチャード・シーハン講師がMBAの基礎を講義。

とても新鮮だったことを覚えています。

なんと音声テープ(カセットテープです)も残っていたため、時間があるときに聴いています。

昔のカセットデッキが、まだ動くのでラッキーでした。

調べてみると、NHKのこのMBAシリーズが装いを新たに出版されていました。

さっそくamazonで購入しました。

新版 英語で学ぶMBAベーシックス

藤井正嗣・リチャード・シーハン著  NHK出版  2200円+税

 

今回は、ビジネススクールで使用するような20のケースを取り上げて、ビジネス現場でどう解決すればいいのかを考える仕組みになっています。

取り上げるのは、マーケティング、会計と財務、人と組織、戦略、ビジョンの5つのチャプター。

音声はwebでダウンロードする仕組みになっています。

こちらもいっしょに活用して学んでいきたいと思います。

 

新しい年度、MBAの基礎を英語で学んでいこうと思います。

マネジメント、マーケティング、ファイナンスを発明したアメリカ合衆国の知恵、ナレッジで、今まで学んできたことを再整理しようと思います。

米国にMBA留学すれば数千万円かかりますが、これだと1万円以内でおさまります(笑)。

リスキリング、アップスキリング、リカレント教育にもコスパ、タイパが必要ですよね。

継続はチカラ!です。

楽しみながら、少しずつ進めて行こうと思います。


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メンタルクライシス 人と会社を守る4つの処方箋・・・人口減少、労働力不足の進行の中、大切な人財を維持、向上させていくことはマネジャーの使命

2024年04月21日 | マネジメント

会社という魔物・・・働く人の8割が「強い不安」を持っているとのこと。

そういえば、身近でメンタルに課題を持つ人が増えてきたような気がします。

日経ビジネス誌2024.4.15号の特集記事は「メンタルクライシス 人と会社を守る4つの処方箋」。

そういえば経営者の方から社員のメンタルヘルスについての悩みを聞くことが多くなったような気がします。

日本人が弱くなったと言うよりは、仕事の複雑化・難化、業務量の増大、人員の減少、ITやDX要因などがあるのだと思います。

Contents

Part1 社員を追い詰める職場のストレス5選

Part2 社員を守る企業の工夫 階層別にアプローチ・・・丸井、オムロン、大和証券、ユニチャーム

Part3 経営者たちのメンタメルヘルス 滝行にトライアスロン どん底で見つけた光

 

社員を追い詰める職場のストレス

1 リモートワークストレス・・・出社頻度のミスマッチ、生活時間の調整が重荷

2 カスハラストレス・・・迷惑行為や暴言に打ちのめされ出社拒否

3 仕事で低評価・・・人事制度の複雑化で不満爆発

4 逆パワハラストレス・・・部下に上手にもの言えず、無気力状態

会社の中は、ストレスや不安でいっぱいです。

 

会社は、ストレスチェック、コーチング、マインドフルネス、フロー状態などの対策を打っています。

ただ、メンタルは社員ひとり一人によって個体差があるため、万全な対策はない状態です。

上司、上長は、メンバー、部下の様子をよく観察して声掛けすることが有効です。

ネガティブな声掛けはNG!

「顔色悪いね」とか「鬱ぽいね」などは絶対にダメです。

親身になって優しい声掛けが良いとのことです。

「体調はどう?」

「最近、ちゃんと眠れてる?」

「身体、しんどくない?」

「顔色悪いけど何かあった?」

「具合悪そうだから病院行ってみたら?」

相手に優しい適切な質問は、まさにコーチングにおける発問の技法です。

トレーニングすれば確実に技術があがります。

また、積極的傾聴(アクティブリスニング)と呼ばれる相手の話をしっかり聴き受け止めるという技法も大切です。

さらには、何でも話せる、何でも相談できる「心理的安全性」のある職場づくりも重要です。

 

部下の状況に気を使いながら、パワハラにも気を付けながらマネジメントしなければならない管理監督者も大変な仕事です。

人口減少、労働力不足の進行の中、大切な人財を維持、向上させていくことはマネジャーの使命です。

でも、同時に自分自身のメンタルも守っていかなければなりません。

大変な時代になったものですね。


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「恩送り」で得点を重ねてチームを勝利に導く・・・居酒屋チェーン「世界の山ちゃん」の山本久美社長

2024年04月20日 | マネジメント

日経ビジネス誌2024.4.15号の巻頭記事「有訓無訓」にエスワイフード代表取締役の山本久美さんが登場。

エスワイフードは、全国展開している手羽先居酒屋チェーン「世界の山ちゃん」を経営しています。

2016年に社長が急死。

奥さんの久美さんが急遽、社長に就任。

経営のことや、居酒屋のこともほとんど知識、経験がなく、当時は子育て中・・・いわば新入社員として社員の力を借りながら会社経営の世界に入ったそうです。

山本久美社長は、11年間小学校の先生を務められ、同時に男子バスケットボールチームの監督をされていました。

全国大会で3度優勝しました。

この時に体得したのが、「恩送り」の精神。

恩送りとは、恩を得た人とは違う人に貢献するということ。

恩返しだと二者間の恩の往復で終わりますが、恩のバトンを次々に渡していくとチームワークが高まるといいます。

会社の社員にも「恩送り」を推奨されているとのこと。

「恩送り」の精神・・・良い話を読んで、ココロがホッコリしました。

がんばれ!久美社長


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クリステンセンの法則 現状維持は、ただの後退・・・今に満足していると後発組に負ける イノベーションのジレンマ

2024年04月13日 | マネジメント

米国、いや世界を制覇したコンピュータ業界の巨人IBM社。

今世紀に入り、GAFAM(グーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト)といったビッグテック企業に足をすくわれました。

システムのダウンサイジングやイッターネット化の中で急速に進むネット業界にIBM社はついて行けませんでした。

先発企業だからといって安心してはならない!

ハーバード・ビジネネススクールのクレイトン・クリステン教授は言います。

失うものが何もない後発企業が起こす破壊的イノベーションにより、保守的な大企業が敗れるという図式です。

先発企業は市場シェアを持ち、安定的に儲ける仕組みを持つがゆえに守りに入ってしまい、社内で新しいチャレンジが出来なくなる傾向があります。

新商品や新サービスを出すと、それが現製品を食う(カニバる)リスクが多々あるのです。

教授は、これを「イノベーションのジレンマ」と呼びました。

 

JAPANアズナンバー1と言われた経済バブルの頃、日本の白物家電や半導体は世界市場を席巻していました。

その成功の蜜の味を忘れられず、イノベーションを起こすことが出来ませんでした。

ゼロから始めた、過去を引きずらない中国や韓国、台湾などの新興勢力は、選択と集中により日本を追い抜いていきました。

個人でも同じことだと思います。

立ち止まることは、退歩を意味します。

毎日毎日、わずかでも前に進んでいくことは、とても大切なことです。

 

晩節、病に苦しまれたクリステンセン教授は、最後まで教育者としての仕事を続けていました。

最後の書籍となったのが「イノベーション オフ ライフ」。

ビジネススクールの卒業生たちへの応援歌のような本でした。

 

個人の戦略の成功の鍵を握るのは、時間や労力、能力、財力などの資源配分プロセスである。

目先の成果にとらわれず、家族や友人と過ごす時間など、自分が本当に大切にしたいものに投資をするべきである。

 

自分の子どもが将来直面しそうな困難から逆算して身につけておくべき能力を考え、その能力を養えるような経験ができているかを考えることが大切だ。

 

クリステンセン教授・・・単なる経営学者ではない、すごい先生でした。

合掌!


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IBMの仕事の5ステップ「読む」「聴く」「話す」「観察する」「考える」・・・自己啓発の基本ステップは仕事の成果に直結します

2024年04月10日 | マネジメント

THINK!

考えよ!

これは、IBMの初代社長のワトソンさんが管理職に示した言葉。

管理職に対して「諸君に会社が月給を支払っているのは考えることに対してである」と訓示しています。

 

現在はGAFAの影で静かなIBMですが、当時のIBMはコンピュータ業界の巨人でした。

ワトソン社長の言葉は、「THINK」の前に4つの言葉が遺されています。

全てのビジネスパースンに通用する「自己啓発の心得」といえるものです。

 

READ(本を読め)

LISTEN TO(人の話をしっかり聴け)

DISCUSS(話し合え)

OBSERVE(よく事物を観察しろ)

THINK(そして、考えよ)

「読む」「聴く」「話す」「観察する」「考える」。

仕事を効果的、効率的に進めて行くためのステップ。

最近では、PDCAサイクルやOODAループなどのマネジメントサイクルもありますが、それよりもシンプルで分かりやすいワトソン・サイクルです。

考えているようで、実は考えていないビジネスパースンは多いものです。

そういえば、IBMが開発したラップトップパソコンの名前も「Think Pad」でしたよね。

 

眠れる巨象を躍らせたルイス・ガードーナーCEO。

アメリカンエキスプレス社長、ナビスコ社長を経て、崩壊寸前のIBMのCEOに就任しました。

メインフレームと言われる巨大なコンピュータから、ダウンサイジングと言われるデストトップコンピュータに移行する時期、IBMは出遅れました。

「イノベーションのジレンマ」というやつですね。

ガードナーCEOは、大企業病、官僚組織だった「巨象」を顧客第一主義、現場主義にシフトさせ、IBMを復活させました。巨象が踊ったのです。

でも、最近のIBM社は、GAFAM(グーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト)の後塵を拝しています。

再び復活する日は来るのでしょうか?

日本の企業とIBM社、復活のポイントは同じだと思います。

 

自分のアタマで考え行動できるようになりたいものです。

THINK!


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ウォール街のランダム・ウォーカー~株式投資の不滅の心理~バブル気味の株価、ちょっと心配です

2024年04月05日 | マネジメント

今年になって日経平均株価が4万円を突破、バブル経済前の株価を上回りました。

日銀の施策や新型NISA、外国人投資家の買いが背景にあると言われています。

ただ、実体経済にあまり変化はなく、大手企業は賃上げラッシュでも中小企業には波及していません。

さらには人口減少による人手不足、運輸や建設分野での労働時間規制、地政学的なリスク、円安の進展など株価をめぐる環境は、まさにVUCA(ヴーカ/変動制・不確実・複雑・曖昧)な時代です。

 

さわかみファンドの澤上篤人さんは著書「インフレ不可避の世界」の中で、近い将来のマネーの暴走、カネ余りバブルの終焉を指摘、「売り逃げる」という助言をされています。

市場はお金がジャブジャブ、株価は米国も日本もバブルが膨らむ、円安や人手不足が止まらない・・・といった事があるからだと思います。

個人的にも最小限に絞り込んだ好きな会社の株式、NISAに組み込んだインデックスファンド以外は全て手放しました。

ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の心理

バートン・マルキール著  日本経済新聞社刊  2300円+税

 

株式投資の基本書として、株主必読の一冊です。

著者は、プリンストン大学教授。

ウォール街で実務を経験、エール大学MBA学部長、米国政府の委員、バンガード社の社外取締役などを務めています。

同書が2007年に一版が出されてから実に9回も改訂されています。

金融の世界もフィンテックやテクノロジー、新商品開発などで、どんどん進化、変化しているということなのでしょう。

新NISAが登場した今年、書店ではNISA本、投資本で溢れていますが、その多くはマルキール博士の長期にわたる研究を流用したものです。

インデックスファンドや「長期・分散・積立投資」の優位性について、著者は主張します。

同書では、縦じまのストライプの高級スーツを着たウォール街の金融スペシャリストたちをイジります。

彼彼女たちが運用するファンドの成績が、猿が投げるダーツで組んだファンドと変わらない、あるいはそれにも劣ると喝破します(笑)。

MBAホルダーの数字や高等数学を駆使した一見かっこいいテクニカル派やファンダメンタル派もインデックスには勝てないと指摘します。

巷では、オルカンやS&P500、バンガードファンドが人気です。

 

規則性なく動くランダムウォーク理論。

よく投資と投機は違うと言われますが、様々な要素、環境が交差する株式市場は、ギャンブル的な要素を排除することはできません。

 

かといって、銀行やゆうちょに貯金しているだけでは、インフレや値上げによって毎年数パーセントずつ現金の価値が低下していきます。

金利が20倍になったといっても、現状では利子も微々たるもの。

自己責任で、自分自身のポートフォリオを組んでいくしかありません。

 

若い人に質問されることがあるのですが、その時は人的資本に投資したらいいよと助言します。

人は、人的資本、金融資本、社会資本を有しています。

人的資本は職業専門性やキャリア、金融資本は貯金や投信株式、社会資本は人脈やネットワークです。

 

「ウォール街のランダム・ウォーカー」で著者はライフサイクル論も指摘しています。

同書では34歳と64歳では投資の仕方が異なると解説します。

34歳で投資に失敗しても人的資本(自分で稼ぐ給料や報酬)で取り戻せる可能性が高いが、64歳ではそうはいかないと指摘します。

34歳であればアクティブ型ファンドでも良いが、64歳ではインデックス型ファンドでということだと思います。

 

今まで株や投資信託を指南してくれたのは、この「ウォール街のランダム・ウォーカー」と次の2冊の本です。

2冊の本は、いずれも大好きなホイチョイ・プロダクションが制作した漫画本です。

ホイチョイは映画「わたしをスキーにつれてって」「彼女が水着に着がえたら」「バブルへGO!」やマンガ「気まぐれコンセプト」で一世を風靡したクリエイティブ集団。

この2冊の漫画でMBAのファイナンスレベルの学習が出来ます。

ただし、投資は自己責任、ご利用は計画的に!です。


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ムハマド・ユヌスさんが日経ビジネス誌のインタビューに登場・・・「仕事とは雇い主に身をゆだねる奴隷制度」「世界には、80億人の起業家がいる」

2024年03月25日 | マネジメント

グラミン銀行創設者でノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスさん。

日経ビジネス誌2024.3.25号のインタビューに取り上げられています。

尊敬する「ソーシャルビジネスの父」のユヌスさん。

御年84歳ですが、写真を見るととてもお元気そうです。

このインタビュー記事では、ユヌスさんの最新の考え、思想を知ることが出来ました。

 

ユヌスさんは、1940年英国統治下のバングラディシュ生まれ。

ダッカ大学卒業後にフルブライト奨学金で米国ヴァンダービルト大学に留学。

経済学博士号(Ph.D)を取得します。

欧米では、経済学は理科系の世界・・・数学理論、数値モデルを中心にして理科系の実験のように研究していくそうです。

1972年に国に帰りチッタコン大学の経済学部長を務めます。

1983年グラミン銀行を創設し、マイクロクレジット(無担保少額融資)で貧困層(特に女性)の自立をサポートしました。

2006年にはグラミン銀行とともにノーベル平和賞を受賞します(個人的にはノーベル経済学賞でも良いと思うのですが・・・)。

「グラミン」とは、ベンガル語で「村落」という意味だそうです。

グラミン銀行は、国内で1000万人以上の人たちに無担保融資をしてきました。

 

机上の空論に走りがちな経済学者とは違う、現場、実務、ミクロのスタンスを重視するユヌスさん。

本当にすごい方です。

 

今回のインタビューでは、ロシアとウクライナの戦争、ガザ危機の分析から始まります。

「経済の枠組みのデザインに欠陥がある。より多くのものを手に入れようとする時に他者との間に緊張が生まれ、それが対立や戦争に繋がっていく。」

ユヌスさんは、経済システムの再設計という視点から世界をとらえています。

格差社会、階層社会、貧富の差、環境破壊といった資本主義の限界が見え始めた今、次のフェーズをどうしていくか?という視点が大切になってきます。

同記事のユヌスさんの発言をまとめさせていただきました。

 

富とは力です。経済力を持てば、政治力がメディアの力が手に入り、政治社会システムを自在に操れるようになります。

富を蓄積する活動は国境を越えて拡大しています。

最終的には一握りの人が世界の富を独占することになるでしょう。

分断は経済システムに根差しています。

 

必要なのは、分かち合い経済への転換。

現在の経済システムは環境問題や失業問題を悪化させ、富の集中を加速させている。

これを反転させて、貧困ゼロ、失業ゼロ、二酸化炭素ゼロを達成する世界を目指さなければならない。

これからは、分かち合い、思いやり、助け合いが基本になる。

 

銀行は、まず、お金を持っていない人にお金を貸すことからはじめて、徐々にお金を持っている人へと融資先を広げていくべき。

現在のシステムは、大衆を無視している。

 

融資したバングラディシュの女性たちは学校に行ったことがない、教育を受ける機会に恵まれなかった人がほとんどでした。

しかし、それでも5ドル、10ドルといった資金を得ると皆ビジネスを立ち上げたのです。

ビジネスの始め方が分からないという文句を言うことはなく、融資さえすれば何とかしました。

彼女たちは決して「仕事をください」とは言いませんでした。

 

仕事とは、いわば雇い主に身をゆだねる奴隷制度です。

 

世界には、80億人の起業家がいるのです。

 

金儲けを目的としない新しい種類のビジネスを導入すれば、わたしたちの社会問題、環境問題、水問題が解決できるのです。

これがソーシャルビジネスです。

わたしなら金儲けよりソーシャルビジネスを選びます。

 

もはや、どこの国でも政府による生活保障や支援は機能していません。

その仕組みは受給対象者に「お金は提供するから、何もするな」と言っているようなものです。

誰もが創造性を持つ人間なのに。

 

資本主義がお金を稼ぐこと以外の選択肢をあたえないから、あなた方(日本)は行き詰まってしまったのです。

ソーシャルビジネスは一つの突破口になるでしょう。

 

日本は創造的な力に恵まれています。

一歩踏み出せば、日本の多くの課題を解決できると思います。

世界が日本を待っています。

 

現在、ユヌスさんは、スラム街にある小学校に栄養食を配るプロジェクトや職のない青年たちに自動車整備の技術を教え日本などに派遣する事業を進めているとのこと。

 

ユヌスさんの言葉に勇気と希望をいただいた次第です。

起業する人たちが増えるといいなあと思います。

 

喜劇王チャールズ・チャップリンの言葉を思い出しました。

「人生に必要なものは、夢と勇気と、わずかなお金」。

この国にも、まだまだ希望はあると思います。


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ワーケーション、テレワークからABW(Activity Based Working)へ・・・働きやすい環境を創るためのマネジメント

2024年03月20日 | マネジメント

働き方改革法の施行によって、ムラ社会である日本の会社にも変化が出てきました。

若手社員発で多様な働き方、仕事スタイルが生まれつつあります。

その中で「ABWActivity Based Working)」というコンセプトがあります。

仕事の内容や目的に合わせて、働く場所を従業員が自由に選択するワークスタイルのこと。

コロナで急速に普及したワーケーション(ワーク+バケーション)、テレワーク、在宅勤務・・・それ以前はファシリティマネジメントと呼ばれていました。

ネットやDXの進化により、仕事するのはオフィス内だけでなく、カフェや自宅も含め選択肢も幅広く、近年のオフィスづくりのキーワードにもなっています。

「風通しの良さ」を強みとする、垣根のないワンフロアオフィスを実現した新聞社、「行かなくてもいい」時代に「行きたくなる」オフィス』を作ったコンサルティング会社など新しいカタチのオフィスが生まれています。

仕事の生産性を高めるために働く環境は極めて重要です。

様々な会社、組織を訪問する機会があるのですが、いつも気にしているのはオフィス空間や社長室です

マネジメントと風水地理学を融合させる実証研究も続けています。

レイアウト、方角、色彩、経営理念、会社機能などを有機的に結びつけることにより、より良い経営が実現します。

アフターコロナのワークの一つにしたいと思います。


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