先日、NHKでIPS細胞について山中教授が最新の状況を語っていました。
さまざまな臓器の再生医療の研究が日本人研究者により飛躍的に進み、脊髄損傷や肝臓移植の
臨床試験(人への治療を兼ねたテスト)はもう4年~6年で始められるかもしれない、との事でした。
中でも、目の網膜移植の臨床試験は来年にも行われそうとの事です。
眼鏡に携わる仕事をしていますので、今年もたくさんの人の視力を見させていただきましたが、
中にはどうしても眼鏡では十分な視力が得られない場合があります。
眼科で受診していただくと、白内障を筆頭にいろいろな目の病気が発見されたりします。
高齢化社会の影響か、最近は加齢黄斑変性症と診断される事も多いようです。
この加齢黄斑変性症という病気は、網膜下にある脈絡膜という場所から新生血管が作られ、
それが破れて早い進行で網膜を破壊、中心視力の障害を引き起こし、末期には失明するという
目の病気の中でもけっこう深刻で厄介な部類のひとつです。
網膜細胞は一度死滅すると元には戻りませんので、進行を止める、あるいは遅らせる、
といった治療になり、ある程度進行してしまうと完治するにも限界があるようです。
そこでIPS細胞による網膜移植という治療に期待が集まるわけなんですね。
網膜というのは他の臓器とは違って、移植後に外部から観察できるので、
異常があった時に発見が早く、しかもその処置もレーザー除去などで比較的容易な為、
安全が確認され次第、医療現場では早期の認可が求められています。
ただ、山中教授が言うには、まだ大きな問題点があるというのです。
網膜細胞を培養するには高度な熟練研究者が3か月間付きっきりで管理する必要があり、
ほんの僅かの外的要因や刺激で、細胞は全く違う形に変化してしまうそうです。
これらの為、患者本人には医療費負担として何と!2000万円以上掛かってしまうという事です。
これを解決する方法として、人による熟練の技術をロボットで出来ないか?
日本企業の高度ですばらしいロボット技術と手を結べば、一気にコストは下がるかもしれない。
その為には、出来るだけ早く臨床試験をスタートし、その有効性を示す事が出来れば、
民間の企業もどんどん参入してくれるんじゃないか、との事です。
臨床試験というのは「人体実験」という側面があり、そこには当然大きなリスクも付きまとい、
規制当局も簡単には認可が出せないのも仕方がないようです。
ただ他に治療方法がなく、そのままでは命に係わる、あるいは失明につながる、
そういったケースでは認めてもいいのではないか、また社会の容認も必要ではないか、
と、そのような問題提起で締めくくられていました。
自分の体の細胞を材料にして自身のパーツを作って移植する。
夢のような話だと思っていましたが、10年位の期間で実用化されているのかしれませんね。
その最初の一歩となるのが目の網膜再生技術というわけです。
日本人は糖尿病性網膜症など眼底異常での途中失明率はとても高いです。
それこそ「希望の光」が来年以降、近い未来に訪れるのを待ちたいと思いますね。