冷えた耕一の身体を、ほてった梅の若い身体が優しく包んだ。
柔らかく温かい梅の胸のふくらみが、耕一の背中に押し付けられた。
そして、彼女の柔らかい両の手が、優しく耕一の胸を撫でた。
身体を固くしていた耕一は、思わず、「あぁ・・・・・」と声を上げそうになった。
こんな気持ちの良い経験は初めてだ。
女の人に抱かれると、こんなにも気持ちが良いものかと、耕一は思った。
その気持ち良さは、遠い遠い昔の、記憶の底にかすかに残っている感覚をよび覚ました。
それは、まだ物心つかない幼い頃に、優しく抱かれた、その感覚のようだった。
それはきっと、母の腕(かいな)と懐の温かさだったのだろう。
母の懐の温かさは、何物にも変え難い安心感を、子供に与えてくれるものだ。
その気持ち良さに、耕一が恍惚となり始めた時、胸を撫でていた梅の手が次第に下の方へ下りてきた。
腹から、そして・・・・・・・。
その後の事は、読者の皆さんのご想像にお任せするしかないが、いずれにしても、その後は成る様に成ったのである。
男と女の命の底にある、野生の本能とも云うべき、凄まじいエネルギーが、理性の壁を突き破って、二人の中に噴き出してきたのだ。
それはもう、どうにもならないことなのだ。
そして、その夜、耕一は男になってしまった。
図らずも、思いがけなく、なんと12歳にして、耕一は男になってしまった。
いや、梅によって、男にさせられてしまったというのが正確であろう。
男には、色々な男の成り様(よう)があるが、耕一のようなケースで、男に成るのは極めて稀である。
それに加えて、母の面影を探し求めていた少年が、母の愛の温もりを感じながら、その恍惚感の中で男になったという事を考え合わせると、その出来事は誠に不思議な事であった。
それは、悪魔の仕業か・・・、それとも女神の悪戯だったのか・・・・・・・。
続く・・・・・。