12/24 午後6時
クリスマスの夜は誰にでも特別なものだが
クリスチャンの僕にとっては、とても意味のある時間だ
2000年前、救い主が現れた
そして、イエス・キリストは今も生きている
その誕生を祝う日だ
僕はいつもの席に座った
前から二列目の左側
ここの教会は高齢者が多い
若い女性は、いない
キャンドルに灯がともされ、いよいよ礼拝が始まるとき
「ここ、いいかしら」
可愛い女の子が横に立っている
僕は急いで右に移動した
「どうぞ」
「ありがとう」
賛美歌が始まった
僕は彼女が気になって 歌に集中できなかった
礼拝が終わったとき、彼女は言った
「私、教会って初めてなの。いいものね、いろいろ教えてくれませんか?私真理子といいます」
「僕は彰。いいけど。どうして今日、教会に来たの?」
「街は賑わいすぎて、イルミネーションも楽しめなくって、
たまたまこの前を通りかかったの。
そしたら聖夜の集会って書いてあって、勇気を出して入ってみたの」
「なるほど。食事まだでしょ?何か食べに行かない?」
僕は勇気を出して誘ってみた
「ホント?嬉しい」
僕らはこぢんまりとしたレストランで食事をした
「私ってついてないわ。クリスマス前に彼と別れてしまうなんて」
「まさか。イヴに僕と出会ったじゃないか」
「あら、言うわね。じゃあ、来年のイヴも私とこの教会にいてくださる?」
「もちろんさ。神様が取り持ってくださった仲だからね」
僕は窓の外を見た。雪が降っていた
「出よう。ホワイトクリスマスだ」
外に出ると雪は音もなく降っていた
「きれい。本当に神様っているみたいな気がするわ」
「本当にいるんだよ。それを一年かけて二人で感じよう」
雪は本格的に降り出した
真理子の前髪に積もった雪が、なぜかとっても愛しかった
僕は心の中でつぶやいた
「神様、ありがとう」