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飛騨高山・吉島家住宅 ~こんな洒脱なお屋敷はそうそうない

2018年09月13日 | 城・屋敷・歴史遺産

先日ご紹介した飛騨高山の日下部民芸館の北隣にもう一軒、重要文化財のお屋敷があります。吉島(よしじま)家住宅です。「日下部家住宅よりも女性的」と紹介されていることが多いようですが、室内のデザインには確かに優美さと繊細さが各所に見られます。建物の施主はよほど数寄者だったのでしょう。

きちんと手入れされた木造建築は築100年も経つと、何とも言えない香りと趣を醸し出します。隣の日下部家住宅と並んで、日本を代表する明治の和風住宅建築です。


1F広間の襖の格子デザインが実にかっこいい

現在の吉島家住宅は、1905(明治38)年の火災消失後に再建されたものです。日下部家住宅より30年ほど時代が下ることは、室内の洗練されたしつらえからも感じ取ることができます。


建物正面

玄関の上に杉玉がぶら下げられていることから、ここが造り酒屋だったことがわかります。玄関を入ると土間と大きな広間があり、天井まで巨大な吹き抜け空間が広がっています。むき出しの柱や梁の組み方が面白く、同じパターンが続く単調さがまったくありません。ずらしたり、はみ出したりさせて巧みに変化を付けています。

この空間にも数寄者ごころを感じます。大勢の酒を求める来客を楽しませようとしたのでしょう。日下部家は代々陣屋の御用商人を務めており、質実な家風があったのかもしれません。こうした家業の違いが両住宅の個性の違いに現れていると思います。



2Fには不思議な空間が広がっています。階段を上がると段差のある部屋がつながっており、天井も部屋の床の段差に合わせて斜めになっています。天井は、まっすぐの細い木・竿縁(さおぶち)が天井板を支えています。明治の上流階級のお屋敷によく見られる数寄屋風の洗練された天井デザインです。

吉島家住宅は1Fのプライベートな部屋にも段差があり、天井は三角になった船底(ふなぞこ)天井です。船底天井は寺や庭の回廊と茶室で主に見られます。建築時の施主はよほど”斜め”がお好きだったようです。



中庭にはベンガラ色の壁を見せるようにしています。花街のお茶屋の中庭のように見えます。斜めの天井と並んで、住宅としてはとても珍しい、洒脱な空間になっています。


隣地と隔てる火垣

敷地の北側には建物の側面の壁(妻部)だけを残したように見える一見奇妙な壁があります。解説パネルによると北からの強風による延焼を防止するためのもので、火垣(ひがき)と呼ばれているようです。

隣家からの延焼防止は、建物境界に立派な瓦で装飾した小さな壁を設ける「うだつ」がよく知られています。火垣はうだつよりもはるかに大きく、これだけでとてもお金がかかっていることを思わせます。この火垣も他では見たことがありません。高山では「うだつ」くらいでは立派と認めてもらえなかったのかもしれません。

日下部家と二軒続きで重要文化財の見事な住宅建築を見られるところは、おそらくほとんどないでしょう。高山の古い町並の看板スター建築です。

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。



綺麗な木目はインテリアとしても似合う


吉島家住宅(重伝建 下二之町大新町地区)
【高山市観光公式サイト】

原則休館日:12月-2月の火曜日、12/29-1/1
入館(拝観)受付時間:9:00~17:00(12月-2月は~16:30)

◆マナー教室◆

◇写真撮影の前に確認! 撮影可能か、立入禁止でないか、三脚や一脚が使えるか?
◇カメラのシャッター音は出ないように、特にスマホは注意!
◇カメラのフラッシュがたかれないように設定、光や熱が美術品を傷つけます!
◇室内を見学する場合、持ち物が無意識に壁や置物に触れ傷つけてしまいます。
 手荷物は預ける、リュックは前に抱える、レンズの大きい一眼レフカメラは持ち込まない、など配慮しましょう。
◇靴を脱いで室内を見学する場合、床汚れ防止のため、裸足なら靴下を持参しましょう。



おすすめ交通機関:
JR高山駅下車、東口(乗鞍口)から徒歩15分
JR名古屋駅から在来線特急電車を利用した所要時間の目安:2時間20分

【高山市観光公式サイト】 高山市へのアクセス案内

※鉄道は本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には駐車場はありません。


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