朱雀門の扉は見事な額縁になります
2018年3月の朱雀門ひろばのオープンで、平城宮跡(へいじょうきゅうせき)が格段に楽しみやすくなりました。巨大な宮跡も国営の「平城宮址歴史公園」として整備と情報発信が前進し、奈良時代の空間をバーチャル体験しやすくなってきました。
復元された大極殿の内部は、天平のデザインがとても美しく、中国文化を一生懸命吸収しようとした時代を彷彿とさせます。遠く東大寺大仏殿も望むことができ、朱雀門の前では近鉄電車がさっそうと駆け抜けていきます。
奈良の広い空間の魅力と、遠景の写真撮影を楽しむには絶好のスポットです。
平城宮跡を楽しむには、南側の朱雀門から北の大極殿に向かって順路をとることをおすすめします。大極殿がより美しく見えるからです。朱雀門の750m北に位置する大極殿は、朱雀門より5m高い地面に建てられています。そのため南から大極殿を見ると、建物がより高く見えます。
白い壁、朱色の柱、グレーの瓦がコントラストした建物は、天平の趣と風格を同時に漂わせた見事な建築です。平城宮の位置は奈良盆地の北端にあたるため、南に向かって標高が低くなる地形を生かしたのでしょう。
都は天皇がいる北が高くなるところに定めるのが原則です。京都も北が高くなっています。藤原京は南が高くなっていたことから、平城京への遷都を早めたと考えられています。
第二次大極殿の跡
平城宮の大極殿は、聖武天皇の時代に都を奈良から移し再び奈良に戻す前後で、位置が変わります。現在復元されているのは前半のもので、「第一次大極殿」と呼びます。後半の「第二次大極殿」は、発掘調査によって礎石や基壇だけが復元されています。
東大寺の大仏殿と二月堂、若草山が見える
第二次大極殿はとても眺めがよく、東大寺や若草山がはっきり見えます。若草山焼きやお水取りの際には、ここが絶好の写真撮影スポットになっている理由が納得できます。
第一次大極殿とは異なり周囲に建造物はなく、広大な芝生が広がっています。春にはこの芝生にタンポポがたくさん咲きます。とても春の明るさを感じる空間です。ここでお弁当を食べると、春の明るさを独り占めしているようで、とても幸せな気分になれます。
第一次大極殿の内部空間はとても大きい
見事な天井の花文様のデザイン
第一次大極殿は室内を見学することができます。大きな室内空間の中心に天皇が座る玉座があります。中国式に椅子に座るところが天平時代を彷彿とさせます。
組入天井に描かれた花文様も見事です。政治的動乱や天変地異への対応に振り回された平城宮で働く人々の心を、可憐な天平のデザインで和らげるかのようです。素晴らしいデザインです。
第一次大極殿は室内のパネルでも解説されていますが、復元にあたって当時の姿を確認できる資料はありませんでした。発掘調査でも一部分しか建物の跡は確認できていません。
そのため法隆寺金堂・薬師寺東塔といった時代が近い現存建造物や、正倉院宝物のデザイン、平安時代の大極殿を描いた絵巻など、参考にできるものを片っ端から集めて設計を進めていったようです。
本物との違いを確認することはできませんが、実によくできています。京都よりもさらに古い時代であることを一目で感じさせるからです。
大極殿から南の朱雀門を眺めると、近鉄電車が走り抜ける姿を目にします。平城宮址の真ん中を現代の人工物が横切っているのはそぐわないという意見があり、線路の移設や地下化の検討が始まっています。
賛否両論あると思いますが、私は大極殿や朱雀門を借景に近鉄電車が走り抜ける光景が好きです。そぐわないどころか、実によく調和していると感じます。
京都駅を東寺の五重塔を見ながら駆け抜ける新幹線と同じように思えます。車内から見てもいかにも「奈良に来た!」という気分になります。皆さんはどう思われますか?
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。
大陸文化を吸収した古代国家建設を紐解く学術書
平城宮址歴史公園(国土交通省サイト)
https://www.heijo-park.go.jp/
原則休館日:施設により異なります。【公式サイト】で個別にご確認ください。
※施設以外の公園部分は見学に条件はありません。いつでも無料で見学できます。
平城宮址クイックガイド(奈良県サイト)
http://heijo-kyo.com/
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