カメラやスマホを置いてタイマー自撮りできる台がある!
奈良の平城宮の跡地の巨大な公園が2018年春から利用しやすくなっています。公園内には今まで常設の飲食や休憩施設がほぼ皆無でしたが、3月24日(土)にオープンした「朱雀門(すざくもん)ひろば」に設けられました。
小さい子供連れのファミリーから修学旅行生まで多様な来園者がくつろげる施設が用意されています。また平城京の政治や暮らしの様子を学べる展示施設もオープンし、一日ゆっくり過ごせるようになりました。
平城宮の跡地全体は国営の「平城宮跡(へいじょうきゅうせき)歴史公園」になっており、公園の南端に朱雀門ひろばがあります。最寄りの近鉄・大和西大寺駅からは徒歩20分ほど距離がありますが、奈良市中心部と大阪を結ぶ幹線道路の「大宮通り」に面しており、自動車や観光路線バスの便はとてもよくなっています。
朱雀門は平城宮の南に位置する正門で、都で最も重要な門です。平城宮跡歴史公園内では最初に1998年に実物大で復元されました。「平城宮(きゅう)」とは厳密には、城郭都市全体を示す「平城京(きょう)」の北端の中心に位置する天皇の住居や政庁が設けられたエリアだけを指します。
平安京の「宮」のエリアを、現代は「大内裏(だいだいり)」と呼ぶことが一般的です。「平安宮」とは呼びません。ややこしさは否めませんが、平城宮と平城京を間違えてもほとんど気にする必要はありません。
羅城門(らじょうもん)も都の正門としてよく知られていますが、こちらは城郭都市全体の外郭の南端に位置する正門です。羅城門をまっすぐ北上すると、「宮 or 大内裏」に入る朱雀門に至ります。
なお平安京の羅城門は跡地に石碑が建てられていますが、平城京の羅城門は後世に流れが変わってしまった川の真ん中にあるため、跡地として確かめることはできません。
朱雀大路の広い空、とても気持ちがよい
羅城門と朱雀門を結ぶ都のメインストリートが朱雀大路で、奈良時代には道幅が75mもありました。朱雀門ひろばにも奈良時代の道幅で朱雀大路が復元されていますが、現代のように中央分離帯があるわけでもなく、道路に見えないほどのスケールです。
北京の天安門広場のように限りなく巨大です。大きな青い空の下、周囲に建物が見えない中に、朱色の柱が美しい朱雀門が堂々と建っている姿は奈良時代とほぼ変わらないと考えられます。
朱雀門は周りに何もないためとても目立ちます。高層建造物などなかった奈良時代の人が見ると、現代人が想像できないような強い威厳を感じたように思えてなりません。1300年前の面影を確認できるとても稀有な空間です。
「天平みつき館」インフォメーションとキッズコーナー
南から朱雀門に向かって左側(西側)には、駐車場・バス停・タクシー乗り場がある交通ターミナルと4つの建物があります。
「天平うまし館」はカフェ・レストラン、「天平みつき館」は観光インフォメーションと特産品ショップ、「天平みはらし館」はレンタサイクル・展望デッキ・VRシアターが楽しめます。「天平つどい館」は団体の待ち合わせスペースです。
キッズからお年寄りまで自由に時間を過ごせるスペースも豊富に設けられています。西側は主に交通と飲食・休憩の拠点となります。
「天平うまし館」復元遣唐使船の帆
「天平うまし館」では復元された遣唐使船を見学できます。遣唐使の歴史解説や中国の前国家主席・胡錦涛から贈られた鑑真和上像なども見応えがあります。
遣唐使船は鑑真の渡海の苦労話からさぞかし遭難確率が高かったのだろうと漠然と考えていましたが、奈良時代には8割程度の船が無事帰ってきていたことには驚きました。
長崎県の五島列島から上海近郊の蘇州まで東シナ海を直行するルートをとっており、造船や航海技術がかなり進歩していたことがうかがえます。船の帆は布ではなく竹だったそうです。頑丈ですが、重くて巻き上げがとても大変そうです。
「平城京いざない館」平城宮の復元模型
南から朱雀門に向かって右側(東側)の施設は一つだけ、「平城京いざない館」です。現在の平城宮跡歴史公園の見どころと奈良時代の平城京の様子を模型・動画・出土品・奈良時代の衣装など様々なコンテンツを通じて学ぶことができます。
最初にここで学んでから、歴史公園を廻ることをおすすめします。
平城宮跡は今まで、大極殿と朱雀門が復元されているだけで“何もない”感が強かったですが、時間を過ごすにあたって困ることが少なくなりました。格段に行きやすくなった印象です。
しかしお役所仕事特有の利用者目線のなさも残っています。朱雀門ひろばのホームページがとてもわかりにくいのです。国と奈良県に分かれて整備したため、それぞれがサイトを立ち上げています。表示された検索結果からどちらを最初に見た方がよいのかわからず、サイト構成や表示にも一貫性がありません。平城宮跡全体をさす「平城宮跡歴史公園」のサイトも国と県の両方あってとてもわかりにくいです。
こうしたことに、どしどし声をあげましょう。でないと役所は何もしません。
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。
平城京に現代をトレース、これほどわかりやすい歴史地図はない
平城宮跡歴史公園 朱雀門ひろば(奈良県の管轄)
http://www.suzakumon-heijokyo.com/
原則休館日:天平みはらし館のみ月曜日、他は無休
平城宮跡歴史公園 平城宮いざない館(国土交通省の管轄)
https://www.heijo-park.go.jp/area/suzakumon/izanaikan/
原則休館日:2月・4月・7月・11月の第2月曜日、年末年始