一乗谷(いちじょうだに)は、福井市の中心部から南東に10kmほどのところにある小さな谷沿いの集落です。戦国時代に越前国を支配した朝倉氏の本拠地がここにあり、人口1万人を超える大都会として繁栄していました。
京都から戦乱を逃れる多くの文化人が集まったこともあって、ハイレベルな文化や生活の痕跡が多くのこされています。特に庭園は見事で、タイムスリップしたようにそっくりそのままのこっています。応仁の乱によって京都の文化が地方に拡散し、地方で花開いていたことを強く感じさせる稀有な遺跡です。
諏訪館跡庭園の見事な石組
朝倉氏は但馬からやってきた豪族でしたが、応仁の乱が終わった1480年頃にほぼ越前一国を平定し、守護大名として一乗谷に本拠地を築きます。朝倉氏は代々、文芸を好む家風があったようです。都から近かったこともあり、戦乱を避ける公家や文化人が多くやってきました。
1499(明応8)年には10代将軍・義稙、1567(永禄10)年には室町幕府最後の将軍となる義昭が朝倉氏を頼って一乗谷を訪れています。上杉や武田など有力な戦国大名とも多くの交流がありました。およそ100年、一乗谷は栄華を極めます。しかし台頭してきた織田信長によって朝倉氏と共にこの世から消滅する運命にありました。平安時代の平泉のようなはかない運命でした。
信長の家臣の柴田勝家が、現在の福井市中心部に北ノ庄城を築いて越前の本拠地を移したことから、400年間一乗谷はまったく忘れられていました。そのため当時の様子がそっくりそのまま土に埋もれてのこされたのです。奈良の平常宮跡がのこされたのと同じ歩みです。
一乗谷の入口にある石碑
遺跡は1970(昭和40)年代から発掘と復元整備が進み、今では特別史跡と特別名勝のダブル指定になっています。美術品に対する国宝に相当する“特別”のダブル指定は、他に毛越寺・浜離宮・小石川後楽園・銀閣寺・金閣寺・醍醐寺三宝院・平城京左京三条二坊宮跡・厳島の8か所しかありません。まさに日本を代表する、いにしえの美しい景観なのです。
朝倉義景館跡
中心部にある朝倉義景館跡(あさくらよしかげやかたあと)は、朝倉氏最後の義景までの代々の当主の館の跡です。東の山を背に三方を土塁と堀で囲まれていました。建物の跡が設計図のように地面に復元されており、17あった建物が整然と並んでいた姿がリアルに想像できます。
諏訪館跡
諏訪館跡(すわやかたあと)では、義景が夫人のために造ったと伝えられる館の庭園が見事な姿を見せています。地形を利用して上下二段に造られた回遊式の庭園で、落差を利用した石組や滝の表現は京都でもなかなか見られません。朝倉氏遺跡にある4つの庭園の中で最も大きく、石組みの壮麗さも秀逸です。16c前半は応仁の乱や宗教対立の戦乱の傷をぬぐい切れていない京都に代わって、一乗谷が文化の中心だったことをまさに実感させる見事な庭園です。
一乗谷全体の復元模型
一乗谷の入口にあるJR一乗谷駅のそばに、一乗谷朝倉氏遺跡資料館があります。多くが重文指定されている遺跡からの出土品を展示しており、陶磁器や金属工芸からも一乗谷の文化レベルの高さを充分に確認することができます。一乗谷全体の復元模型で、町全体の様子がとてもよくわかります。こちらもぜひ。
【公式サイト】 福井県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
山口・大内氏と並ぶ戦国屈指の数寄者大名・朝倉氏のすべて
一乗谷朝倉氏遺跡
【福井市文化遺産公式サイト】http://fukuisan.jp/ja/asakura/index.html
【朝倉氏遺跡保存協会公式サイト】http://www3.fctv.ne.jp/~asakura/index.html
原則休館日:12月28日〜1月4日
開館(拝観)受付時間:9:00~16:30
おすすめ交通機関:
JR福井駅から車で20分
JR福井駅からJR越美北線「一乗谷」駅下車、徒歩15分
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約を強くおすすめします。
※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
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