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吉城園 ~奈良の真ん中で森のイオンを味わえる隠れ家

2017年12月11日 | 城・屋敷・歴史遺産

庭にとても合っている「離れ茶室」

 

 

吉城園(よしきえん)は、東大寺のそばの依水園の南に隣接する庭園で、敷地の起伏を活かして様々な角度から四季の木々を楽しめる。建物とマッチした苔庭も見事で、奈良中心部にある静寂な隠れ家スポットだ。

 

明治までは興福寺の子院があったところに、1919(大正8)年に実業家の邸宅として造成されたのが吉城園の始まりである。その際に建てられた大正期の美しい和風建築は「旧正法院家住宅」と呼ばれており、最初の主人の名を今に伝えている。主人はその後幾度となく変わり、戦後は依水園とともに米軍に接収されていた。米軍からの返還後は企業の迎賓施設として使われ、昭和末期に奈良県の所有となり今に至る。

 

【奈良県観光公式サイトの画像】 旧正法院家住宅

 

 

 

隣接するフラットな依水園とは対照的に、起伏に富んだ園内が特徴だ。園の中心となる邸宅の「旧正法院家住宅」は高台にあり、依水園との境界を流れる吉城川沿いの鬱蒼とした森の眺めが美しい。中でも新緑の季節は圧巻で、イオンを充分に感じることができる。まるで春日山の原始林が移動してきたように感じるほどだ

 

旧正法院家住宅のすぐ裏側には茅葺(かやぶき)屋根が美しい「離れ茶室」がある。この建築、上半分はのどかな田舎風の雰囲気を感じさせるが、下半分は数寄屋風で洗練された佇まいを見せている。このギャップが実に面白い。

 

離れ茶室では、カフェとしてのサービスを受けることはできないが、茶室としてレンタルできる。趣味の茶会や大切なお客様の接待に使うと、かけがえのない記憶として残ることは間違いなしだ。

 

 

 

苔の庭、園路のデザインがお見事

 

 

茶色の茅葺屋根がアイキャッチとなる「離れ茶室」は、前に広がる緑の絨毯がアイキャッチとなる「苔の庭」ととてもよく合っている。苔の空間に優美な曲線でひかれた園路のデザインも実に面白い。外部から隔絶された静寂さも、苔の魅力をさらに増している。この苔の庭は、特にゆっくり歩かれることをお勧めしたい。

 

奈良県は、吉城園を隣接する県有地と一体的に高級ホテルとして整備することを決め、森トラストを事業者に指名している。森トラストなのでホテルのブランドはマリオットになるのだろうか。ホテルができても、もちろん吉城園の美しさは残される。ホテルの上質なサービスと組み合わせた新たな愉しみ方ができそうで、今から期待している。完成は2020年頃の予定だ。

 

 

日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。

 

 

昭和の名庭師・重森三玲の孫が日本庭園鑑賞をわかりやすく解説 

吉城園

http://www.pref.nara.jp/39910.htm(奈良県)

原則休館日:年末年始、2月後半

 

 

 

 

 


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