活気のある京の師走の風物詩
新幹線で京都駅に近づくと、東寺の五重塔が見えてくる。おそらく京都で最も有名なランドマークであろう。そんなランドマークのある広大な境内を、毎月21日に1,200店にのぼる縁日(フリーマーケット)の店が埋め尽くす。「弘法市」として京の都人(みやこびと)に知られるこの市は、800年以上毎月行われてきたというから驚愕だ。確認はできていないが、今に続く日本最古の市ではなかろうか。
東寺は、国家が創る寺院である「官寺」として平安京遷都の2年後に創建され、京の都の真言宗の総本山となった。真言宗の開祖・空海(弘法大師)は、都人から絶大な人気を集めていたことから、命日の3月21日には参拝する人々が多かった。古今東西、人が集まるほどビジネスは自然発生的に増殖していく。「弘法市」もまずは年1回行われるようになったようだが、絶大な人気の弘法大師は月命日にも多くの都人を集めたのだろう。鎌倉時代の1239年以降は、「弘法市」は毎月行われるようになったという。
京都は現代でも縁日(フリーマーケット)がとても盛んな地だ。そもそも「縁日」とは、神仏との“縁”を持つ日、というのが語源である。永年この日に参拝すると大きな御利益があると信仰されてきたことが、参拝とショッピングを同時に楽しめる場として、京の都人に好まれ続けているのだろう。
東寺の境内を店が埋め尽くす
東寺の「弘法市」、北野天満宮の毎月25日の「天神さん」、夏の下鴨神社と秋の百万遍知恩寺の古本市と、都人にすっかり定着している縁日(フリーマーケット)は非常に多い。そんな中でも東寺で年末の12月21日に行われる「終い弘法(しまいこうぼう)」は、最大規模のフリーマーケットで、素人よりも専門業者の出店が多いことが特徴だ。
年の最後に行われるので「終い」と冠づける。1月に行われるのは「初(はつ)弘法」だ。「終い」だけあって正月用品が目立つが、食べ歩きフードや骨とう品など、実に多種多様な店が出ている。人手も20万人にのぼっており、“押すな押すな”の熱気の中で、買い手と売り手の丁々発止のやり取りがとても楽しい。近年は外国人も多く、英語や中国語でのやり取りも聞こえてくる。
1200年経っても弘法大師人気は絶大
「弘法市」を楽しむ人のほとんどは、弘法大師への祈りも欠かさない。参拝とショッピングという2つの楽しみが現代でも見事に両立している。弘法大師というスーパースターが導いた1200年の都の歴史はとても奥が深い。ここでしか味わえないフリマだ。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。
東寺 弘法市(出店運営委員会)
東寺
開催:毎月21日