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東大寺・南大門「ライトアップ」 ~仁王様のお顔を鮮明に見れる絶好の機会

2018年01月29日 | 祭・行事・季節の花


ライトアップされた仁王様

奈良・東大寺で大仏と並んでとても有名な金剛力士像=仁王様は、今にも動き出しそうなほどリアルでなボディラインで高さ8.4mの巨体が表現されています。日本の代表的な仏像彫刻の傑作です。

拝観料不要でお会いすることができますが、門の中で三方を壁に囲まれて安置されているため、日中はお顔がよく見えません。

まもなく始まる恒例イベント「なら瑠璃絵」の期間中、仁王様が夜間ライトアップされ、お顔を鮮明に見ることができます。案外きちんとお顔を見たことがない方は多いでしょう。またとない機会がやってきます。

現存する東大寺・南大門は、1199(正治元)年に再建されたものです。1180(治承4)年の平重衡の南都焼討で焼失したのではなく、平安時代半ばに暴風雨で倒壊したものです。100年以上南大門はありませんでした。

高さ25mで大仏殿の半分ほどですが、天井がなく屋根裏まで見渡せます。大仏殿とは異なる巨大建築の美しさを感じることができます。高さ21mの太い柱18本が巨大な屋根を800年間支え続けている姿は、スケールの大きさを実感できます。とても荘厳です。

この荘厳さは、天井がない、貫(ぬき、柱を貫通する水平材)が多用され頑丈、といった「天竺様(てんじくよう)」と呼ばれた最先端技術によるものです。天竺様は、東大寺の鎌倉復興の立役者・重源が宋で学んで日本に持ち帰った建築技術で、現在は「大仏様(だいぶつよう)」と呼ばれています。

スケールの大きさを実感できる大仏様の中で、現存する最大のものが東大寺・南大門です。じっくり観察する価値が大いにあります。大仏殿も大仏様で建てられていますが、江戸時代の再建です。江戸時代にはすでに巨木の入手が困難だったことから、柱は複数の材木を束ねて作られています。

この頃フランスでもノートルダムやシャルトルといった、世界遺産になっているゴシック様式大聖堂の建造ラッシュが起こっています。建築技術の向上で、高い尖塔とステンドグラスによる大きな窓の装飾を競っていました。ユーラシア大陸の両端で、大きさと美しさをほぼ同時に競い合っていたとはとても興味深いものがあります。


日中は仁王様のお顔が見えにくい

南大門の仁王様は、鎌倉初期の仏師集団・慶派の共同作業で作られたことはよく知られています。1203(建仁3)年にわずか69日間で完成させたという記録が残っています。工房でパーツを作って現場で組み合わせるという、とても合理的な造像手法で作られました。

当時は平重衡の南都焼討で失われた東大寺や興福寺といった復興需要がとてもたくさんありました。そうした膨大な需要に応えるために、慶派は大勢の仏師に同時並行で作業を進めさせる合理的なシステムを構築していたのです。

南大門の仁王様は、早朝や夕方に低い角度で日光がさすこともありますが、下半身にしか光が当たりません。ハトの糞害対策でネットが張られていることもあり、お顔はよく見えません。南大門の仁王様には、800年の風雪に耐えてきたとは思えないほど、表面にはリアルさが残っています。僧たちが清掃を欠かさなかったのでしょう、大切に守られてきたと実感できます。


鹿は夜もたくさんいます

南大門のライトアップは、2月の「なら瑠璃絵」のほか、夏の「ライトアッププロムナード・なら」でも行われます。東大寺を案内するガイドさんは100%、「阿吽の呼吸」の語源が仁王様にあると説明します。日本の歴史や美術を代表する作品がここにあります。ぜひ夜に訪れてみてください。

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんあります。



運慶仏と所蔵する寺の徹底ガイド、運慶ファンならずともおすすめ


東大寺 http://www.todaiji.or.jp/index.html
原則休館日:なし
※南大門は、拝観料不要で24時間365日参拝できます。

なら瑠璃絵 東大寺ライトアップ
http://rurie.jp/area/area_02/
会期:2018年2月8日(木)~14日(水)~21:00

ライトアッププロムナード・なら
http://www.lightup-nara.jp/
会期:毎年7月中旬~9月下旬


 


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