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滋賀・石山寺 本堂と多宝塔 ~平安貴族も愛したパワースポット

2018年05月03日 | お寺・神社・特別公開

前回に引き続き、日本を代表する名刹で仏教美術の宝庫である滋賀・石山寺の魅力をお伝えしたいと思います。

常時公開されている本堂や多宝塔には、日本を代表する観音信仰の聖地とあがめられる理由がたくさん詰まっています。平安貴族による王朝文学の軌跡もたくさん残されています。京都近郊の古刹ならではのゆったりした魅力が楽しめます。


仁王門の額縁

最寄りの京阪・大津線の石山寺駅から徒歩10分ほどで、石山寺の玄関・仁王門に着きます。途上は琵琶湖の水を大阪湾に流す雄大な瀬田川沿いの道です。レガッタが川面を進むようなほっこりした風景を楽しめます。

仁王門は額縁のようです。まっすぐ伸びる参道をインスタ映えさせます。新緑や紅葉の季節は完璧な構図になります。窓口で拝観料を支払い、少し石の階段を上がると石山寺のパワースポットの心臓部です。

石山寺を開いた良弁が、如意輪観音を祀って東大寺の大仏造立のための黄金産出を祈願したその場所とされる珪灰石の岩盤です。岩盤の上には国宝・多宝塔が静かに佇んでいます。ちょっとした広場になっており、聖なるエリアに入ってきたことを充分に感じさせます。



広場の左手を見上げると本堂へ上る階段が目に入ります。写真のように建物の一部しか見えませんが、斜面に造られた懸造りの国宝建築です。平安時代後期の建築で、江戸時代初期に淀殿の寄進で正面の礼堂を増築し、現在の姿になっています。

京都・清水寺や奈良・長谷寺のように、観音信仰の寺院の懸造りの正面は絶景が広がることがよくありますが、石山寺は違います。鬱蒼とした森に覆われており、パワースポットとしての神秘的な空間を醸し出しています。



本堂の側面には、紫式部が源氏物語の構想を練った部屋と伝わる「源氏の間」があります。天皇や貴族の参篭に使用されていた部屋です。紫式部は1019(寛仁3)年まで存命したと考えられており、1078(承暦2)年に焼失、1096(永長元)年に再建された、源氏の間がある本堂の実存期間とは矛盾しません。1,000年前の貴族階級の優美な生活を感じることができる空間です。

本堂内陣の正面には厨子と御前立本尊が目に入ります。厨子内の本尊・如意輪観音は33年毎開帳の秘仏で、前回は2016年に開帳されたばかりです。しかし聖武天皇の勅命で設けられた本尊であり、天皇即位時にも開帳するという特例もあります。来年2019年の平成天皇ご退位後の開帳が期待されます。



本堂と珪灰石の広場の上には国宝の多宝塔が鎮座します。下層部に比べ上層部がキュッとしまっているのが特徴です。少し離れて見てください。女性のウエストのように、とても可憐なボディラインにうっとりします。

鎌倉時代初期の建立で、多宝塔としては日本最古です。小さな窓から、快慶作の本尊・大日如来を拝むことができます。快慶らしい細い目の洗練された表情が、宇宙に君臨する大日如来の新しい表現として鎌倉時代初期の人々をさぞかし驚かせたことでしょう

石山寺駅から京阪・大津線の路面電車で乗り換えなしで20分ほど、滋賀県・大津のもう一つの美の殿堂・三井寺があります。石山寺と共催の「あお若葉の競演」は、お寺の文化財公開イベントでは珍しい共催です。次回は三井寺の「あお若葉の競演」をお伝えしたいと思います。

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。



美しいボディラインを木で組み立てる


石山寺
https://www.ishiyamadera.or.jp/
原則休館日:なし
※公開期間が限られている仏像や建物があります。

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