愛宕念仏寺(おたぎねんぶつじ)は、近隣の化野念仏寺(あだしのねんぶつじ)と並んで京都有数の石仏群の美しさで知られる寺です。嵯峨野の一番奥、標高の高いところにあり、ここまでタクシーやバスで行って、下り道の嵯峨野や嵐山の散策を楽しむ人が少なくありません。
- 山の傾斜に見事に調和してたたずむ羅漢の石仏群は芸術的であり、表情の個性も豊か
- 東の比叡山と並ぶ聖なる愛宕山の麓、愛宕神社の参道の出発点にあり、パワースポット感は抜群
- 嵐山の喧騒とは真逆、風の音以外は聞こえないほどの嵯峨野の静寂の美しさを堪能できる
愛宕念仏寺が現在のような美しい姿になったのは、驚くことに昭和の終り頃です。昭和の名仏師・西村公朝(にしむらこうちょう)のリードにより、多くの人々の信念と情熱で復興されました。
色即是空
愛宕念仏寺は愛宕山(あたごやま)の麓にありますが、「おたぎ」と読みます。読み方の違いには寺の創建の歴史が関係しています。
愛宕念仏寺は、京都では嵯峨野とは正反対の東にある東山の五条付近に、愛宕寺(おたぎでら)として創建されました。京都では稀有に古い寺でもあります。奈良時代末期に西大寺を創建するなど仏教重視政策をとった称徳(しょうとく)天皇による創建です。
愛宕(おたぎ)とは現代の京都市内のほぼ東半分を占める古代の地名・愛宕郡にちなんでいます。西半分の古代の地名は葛野郡(かどのぐん)です。西にあるのに愛宕山と呼ばれる理由はよくわかっていません。
平安時代初期に賀茂川の洪水で荒廃した後の再興で愛宕念仏寺と名を改めますが、永らく寺勢はふるいませんでした。大正時代になって現在地に移転し、復興が試みられますがそれも頓挫、1955(昭和30)年になって西村公朝が住職となり、少しずつ復興が始まります。
石仏羅漢が緑の斜面にとても調和している
本格的な復興は1981(昭和56)年に始まります。復興資金の獲得を目的に石仏羅漢を彫って奉納してもらうようになり、10年後の1991年には1,200体に達しました。奈良の薬師寺が写経による勧進で伽藍の復興を遂げたのと同じような取り組みです。
石仏はプロではない一般市民が精魂を込めて彫ったものです。すべて異なるお顔立ちからは、”ゆるキャラ”のようなほのぼの感が伝わってきます。造られた時代が新しいこともあり、表現は自由で個性にあふれているのが、ここ愛宕念仏寺の石仏羅漢の魅力です。
山の斜面の境内をゆっくり登っていくと、いたるところに石仏が置かれています。冷たい印象を受ける像がほとんどないこともあり、観る者の心を和ませる仏様としての役割も見事に果たしています。年月を経て苔が仏様のお体に生えるようになっており、独特の趣も見せるようになっています。
本格的な復興からは時間が経っていませんが、境内にはひときわ時間の重みを感じさせる建造物があります。重要文化財の本堂で、京都では有数の古さを誇る鎌倉時代半ばの建築です。東山の旧地から大正時代に移築されています。本尊も鎌倉時代の作で、「厄除け千手観音」として、石仏羅漢と並んで多くの人に親しまれています。
地蔵堂には「火除地蔵」が安置されており、こちらも参拝者が絶えません。京都人に最も愛される神社のお札「火迺要慎(ひのようじん)」は愛宕神社のものです。愛宕神社の祭神の姿を表現した本地仏(ほんじぶつ)は地蔵菩薩であるため、愛宕念仏寺の火除地蔵も「火迺要慎」を篤く信仰されています。
愛宕神社の参道入口(千日詣り当日)
愛宕念仏寺から、江戸時代の愛宕神社の門前町の趣を見事に伝える重伝建・嵯峨鳥居本(さがとりいもと)の町並までは歩いて5分ほどです。山の緑と古い町並が調和した絶景が楽しめます。化野念仏寺は重伝建の町並に隣接しています。
嵐山の中心・渡月橋までも、愛宕念仏寺からゆっくり歩いても60分ほどです。京都でも最たる”端っこ”・嵯峨野の魅力を濃密にたっぷりと発見できます。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
価格から感じとる京都の文化の価値
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<京都市右京区>
愛宕念仏寺
【公式サイト】 https://www.otagiji.com/
【京都市観光協会サイト】 愛宕念仏寺
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:8:00~16:45
※この寺・堂宇は観光目的で常時公開されています。
◆おすすめ交通機関◆
JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅下車、北口から車で10分、徒歩40分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
京都駅→JR嵯峨野線→嵯峨嵐山駅→タクシー
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には無料の有料駐車場があります。
※道路の狭さ/渋滞/駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
※現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。
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