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あの本能寺は今どうなっているか?_光秀と信長の夢の跡

2020年01月16日 | お寺・神社・特別公開
日本史上で最大のミステリーと言えば、ほとんどの人が「本能寺の変」をイメージするでしょう。
その舞台となった本能寺が、京都随一の繁華街の中で静かに現在もたたずんでいることは、あまり知られていません。
今年2020年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」でも、光秀と信長の人生最後の大一番の舞台として、今から注目を集めています。
そんな歴史的大事件の舞台の今を、お伝えしたくなりました。



寺町通側の総門


目次
  • 本能寺とは?
  • 本能寺の変は、現在地で起きたのではない
  • 信長と光秀の痕跡は今も残っているか?


 


本能寺とは?

みなさんは本能寺がどの仏教宗派に属する寺か、ご存じでしょうか?
本能寺は、京都で観光客が訪れる寺としてはあまり知られていない「日蓮宗」です。
日蓮宗の総本山は山梨県の久遠寺(くおんじ)にあり、京都の日蓮宗寺院で行われる有名な祭りや季節の花が少ないことが知名度が低い一因でしょう。
しかし日蓮宗は、京都の町衆から絶大な人気を誇る宗派なのです。
日蓮宗の個性や人気の秘密は以前にこのブログでも紹介しています、こちらもぜひ。

日蓮宗において京都で初めて天皇の勅願時となった妙本寺(現:妙顕寺)の日隆(にちりゅう)が、師との意見対立で独立し、室町時代半ばの1415年に創建したのが本能寺です。
その後の戦乱や宗教対立で幾度も破却を繰り返しますが、町衆の強い信仰に支えられ、常に迅速に再建されてきました。
信長の時代には皇族出身の住職・日承(にちじょう)の下で、京都の寺でも有数の繁栄を誇るようになります。



本能寺の信長の墓


本能寺の変は、現在地で起きたのではない

これも京都人以外にはあまり知られていませんが、本能寺の変の頃は現在の河原町御池から1.5kmほど南西方向の四条堀川付近にありました。
当時は140m四方の巨大な境内の周囲が濠と塀に囲まれており、あたかも城のような風格です。
戦国時代の日蓮宗は度々、延暦寺や本願寺との抗争を繰り返しており、城のように防御を固めるのは珍しくなかったと考えられます。

「信長は本能寺を京都滞在時の定宿にしていた」と一般的に言われていますが、実際にはわずか数回しか宿泊していません。
信長が約20回宿泊し、定宿と呼ばれるのにふさわしいのは妙覚寺です。
本能寺の変の当日は、嫡男・信忠が宿泊していました。
「本能寺の変」ではなく「妙覚寺の変」になっていた確率の方が、実は高かったのです。



油小路蛸薬師南入る、本能寺跡の石碑


本能寺の変の際の旧境内地の住所は「元本能寺町」で、今は廃校になりましたが「本能小学校」もありました。
京都では創建時から一度も境内地を変えていない寺はほとんどなく、昔あった寺や施設の名前が住所になっているところは多数あります。
1,200年の悠久の歴史の痕跡が、今にきちんと伝えられていることを物語るエピソードです。


信長と光秀の痕跡は今も残っているか?

本能寺が、変で全焼した境内地の再興をはかる際、秀吉の都市計画に従って移転したのが現在地です。
移転当初は北側の御池通りや京都市役所も含む広大な境内でしたが、明治政府が強制的に寺の土地を没収した上知令(あげちれい)により、ほぼ現在のようなコンパクトな境内になりました。



河原町通りに面した裏門


境内には本堂と塔頭の他、信長の墓と共に、江戸時代後期の文人画家・浦上玉堂の墓もあります。
信長の墓は京都各所にありますが、常時参拝可能で知名度も高いため、本能寺を訪れる人が最も多いようです。
境内にある「大賓殿宝物館」では、信長ゆかりの品も展示されており、信長が過ごしていた痕跡を確かめることができます。
本能寺の変の際には、信長がいつも持ち歩いていた四つ目の「曜変天目茶碗」が、信長と運命を共にしたとされています。
これも美術品の宿命ですが、「生きながらえていれば」と思うばかりです。

【寺公式サイト】 大賓殿宝物館の展示品

一方、光秀の痕跡は全くありません。
「大切な客・信長を葬り去り、境内を全焼させたので伝世しないのは当然」と言われれば反論できません。
日本史上最大のミステリーの舞台だけに、期待感は否応なく高まります。



御池通り沿いのホテル本能寺


本能寺の表門は、秀吉が寺を集めた「寺町通」に面しています。
繁華街の河原町通りから入れる裏門は、あたかも勝手口のように小さく目立ちません。
御池通に面した境内地は、寺が経営する「ホテル本能寺」のビルになっており、背後に寺があるとは誰も気付かないでしょう。

京都随一の繁華街の喧騒は、境内に足を踏み入れると不思議なことに全く耳に入りません。
パワースポットに入ってきたような感覚すら頭をよぎります。
信長が400年以上、境内にやって来る人を見つめているのでしょうか。

大河ドラマ「麒麟がくる」で、本能寺がどのように描かれるのか、今から楽しみです。


こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



戦国時代小説の第一人者・安部龍太郎が見た本能寺の変の背景


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利用について、基本情報

<京都市中京区>
法華宗本門流 大本山
本能寺
【公式サイト】http://kyoto-honnouji.jp/

原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:6:00~17:00

※公開期間が限られている仏像や建物・美術品があります。
※公開されていない仏像や建物・美術品があります。
※この寺の境内は観光目的で常時公開されています。



◆おすすめ交通機関◆

京都市営地下鉄・東西線「京都市役所前」駅下車、改札口直結の地下街「ゼスト御池」1~5番出口から徒歩2分
京阪電車「三条」駅下車、7番出口から徒歩5分
阪急電車・京都線「京都河原町」駅下車、3,6番出口から徒歩10分

JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:15分
京都駅→地下鉄烏丸線→烏丸御池駅→地下鉄東西線→京都市役所前駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※渋滞/駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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