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奈良 薬師寺 東塔を上から見下ろす最後の機会_修理現場公開5/6まで

2019年04月30日 | お寺・神社・特別公開

10年に渡って行われてきた薬師寺・東塔(とうとう)の解体修理がいよいよ終盤を迎えています。歴史的建造物の修理では近年よく行われる修理作業現場公開も最後となり、多くの人が訪れています。

  • 新調された塔の先端の水煙(すいえん)や、ほとんど葺き替えられた美しい屋根瓦を間近で見られる
  • 約30mの高さから、隣立する西塔や奈良の街並みを見下ろせるのは今回の現場公開が最後


建造物の屋根を上から見られる修理作業現場公開はすっかり定着しており、通常より人手がはるかに多いと感じられます。工事現場を見学させることを最初に思い付いた人は、マーケティング的にはとても”えらい”と思います。


9年続いた東塔の囲いは間もなく撤去

薬師寺は飛鳥時代に藤原京で創建され、平城京遷都に伴い現在地に移転してきました。東塔は1,300年前の移転時から今に伝わる唯一の建造物で、法隆寺五重塔と法起寺三重塔に次いで日本で三番目に古い現存する塔でもあります。

東塔は本尊の薬師三尊と共に、永らく移築か新造かで論争されてきましたが、現在は東塔については現在地での新造説が有力になっています。薬師三尊については、論争は決着していません。造立様式的には白鳳時代のものであり、藤原京から移転してきたことになりますが、像高2-3mもある銅像の重い巨体を三体もどうやって運んだのか、疑問が残ります。

とは言え、東塔も薬師三尊も、日本だけにとどまらず世界的にも稀有な美しさと歴史を携えていることは言うまでもありません。日本最高峰の黒光りの美しさを醸し出す薬師三尊の前に、来年2020年、リフレッシュした東塔が姿を再び現します。


修理作業現場公開の入口

修理作業現場は、見学者の体重による足場への負荷を考慮して入場者数が制限されています。順番を指定された整理券を受け取り、順番が巡ってくれば、貸し出されるヘルメットを着用して、足場に設けられたスロープを上っていきます。現場内の写真撮影は私的利用に限って可能ですが、Web公開は私的利用でも禁止されています。

【NHKニュース映像】 薬師寺東塔 修理現場最終公開

スロープは東塔の北側に設けられており、上るにつれ薬師寺の伽藍と若草山の遠景が美しく目に入ってきます。屋根の各層で作業がしやすいよう平面の足場が組まれており、現場感をとてもリアルに感じることができます。

足場は頑丈な鉄骨で組まれており、構造にまったく不安を感じさせません。しかし最上層の屋根はビルの8Fくらいの高さに相当します。1,300年前の宮大工がどうやって建築を進めたのか、壮大なロマンを感じます。

【薬師寺公式サイトの画像】 東塔 新旧水煙

最上層では相輪と水煙を間近に見ることができます。まさにこの機会にしか見ることができない角度です。普段の地面から見ると細かなデザインまでは見えませんが、間近で見るとデザインに込めた思いまで伝わってくるように感じます。

9年に渡って東塔を囲んでいた足場の覆いは今年2019年の夏から撤去作業が始まります。寺として正式に修理完了を披露する落慶法要も来年2020年4月22日に決まっています。奈良の大空に「凍れる音楽」が再び姿を表すのは間もなくです。


西ノ京駅から玄奘三蔵院伽藍へ至る参道、いつも季節の花が綺麗

今回の解体修理は明治以来110年ぶりに行われたものです。歴史的木造建築の保存のためには、現在はおおむね100年毎の解体修理がのぞましいと考えられています。

地元の奈良人の間では、次の奈良の大物の解体修理は「興福寺五重塔」とささやかれています。興福寺の建造物でも大規模修理が最も長くなされていない建造物と見られているからです。薬師寺東塔のように巨大な足場で猿沢池の空間が長期間覆われることは間近かもしれません。



こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



法隆寺金堂の大修理と薬師寺金堂/西塔を復元した宮大工・西岡常一が語る薬師寺の奥義

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<奈良県奈良市>
薬師寺
国宝東塔修理作業所 最終公開
【寺による公開 公式サイト】

会期:2019年4月27日(土)~5月6日(月)
原則休館日:会期中なし
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00

※東塔修理作業所入場口で8:30から発行される整理券の番号順に、時間帯を区切って入場できます。
※工事現場であるため、入場に際しては現場で渡されるヘルメットを着用する必要があります。
※未就学児/ベビーカー/車いす/手押し車/ペットを伴う入場はできません。
※ハイヒールのような不安定な靴を着用すると、入場できません。
※天候の悪化で、入場を中止する場合があります。

※修理作業場内部は、私的使用目的でのみ撮影可能ですが、Web上への公開は禁止されています。
※この寺は観光目的で常時公開されています。



◆おすすめ交通機関◆

近鉄橿原線「西ノ京」駅下車、東口から徒歩1分

R大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間10分
JR大阪駅→JR環状線→鶴橋駅→近鉄奈良線→大和西大寺駅→近鉄橿原線→西ノ京駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※イベント開催時は、道路の狭さ/渋滞/駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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